2023年12月20日

最後まで書くための超初心者講座: 事件と解決を決める

最後まで書けない、という初心者は多いと思う。

なので、今更だけど、
最後までシナリオを書くための基本を解説してみたい。


一番大切なことはなんだろう?

「事件と解決を決めること」だと思う。

一番間違ったやり方を逆に考えよう。
それは、
「面白そうな冒頭を思いついてしまい、
『一体どうなるんだ?ワクワク』と、
自分でも分からないまま書き出してしまうこと」
だ。

たとえば、
めちゃくちゃ可愛い造形のヒロインに成功して、
「この子が転校してくる」
ところまで思いついたとしよう。
なんなら男子がパン咥えて走ってて、
ドーンとぶつかったっていいさ。

そういうオープニングを思いついちゃって、
「思いついた!」と思って書き始めてしまうのが、
実は一番間違いだ。


「いったいこの先どうなるんだ?」は、
観客の気持ちであって、作者の気持ちではない。

作者の気持ちは、
別のことを考えながら、
観客をこの気持ちに誘導することが仕事なのだ。

作者は観客になってはいけない。
作者は観客でありながら、かつ作者でなければならない。

どういうことかというと、
「結末を知っている」ということ。


仮に超可愛い子と主人公が出会う「事件」だとしよう。
じゃあ「解決」は?
結婚?
付き合う?
初セックス?
それとも喧嘩別れ?
また転校して何もなかった?
死ぬ?
なんでもいい。
一つ決めよう。

仮に「付き合う」としよう。

じゃあ思うわけ。「どうやって?」と。
告白してOKをもらうとしよう。
何もない状態でいきなり告白して、
OKが出るものではないよね。

彼女のピンチに駆けつけてヒーローのように解決して、
かっこいいと思われた時に告白するのかな。
それとも一回告白して振られて、
何度も告白してるうちに、友達みたいになってきて、
向こうも好きになってくるのかな。
なんでもいい。決めなさい。

そしたら、
頭と尻が大体決まるよね。

もちろん、もっといい導入を思いついたり、
もっといいラストや解決を思いつくならば、
変更してもいいよ。


さて、
じゃあ途中を考えるのだ。

出会いましたから告白OKまでの間に、
何があるかだ。
色々なことがあり、少しずつ二人の距離は近づくのだろう。
近づきすぎて、ごめんなさいと離れてしまう時もあるだろう。
そんなことをうまいことやって、
ついに付き合うまでの話を考えよう。

どうやって?

そこに才能が必要なのだ。

もし、冒頭とゴールは出来ても、
間が思いつかないならば、
「その題材を扱うだけの才能が足りてない」
と思うべきなんだ。

多分今の例は、ラブコメないし純愛ラブストーリーになるだろう。
それが得意な人なら、冒頭とラストの間を埋められる。

それが出来ないなら、
あなたはラブコメを題材に選ぶべきじゃない。

入り口が間違っているのだ。

とはいえ、気に入ったヒロインとのラブをやりたいのであれば、
別のジャンルに放り込むんだよ。

出会いはそのままにして、
主人公は実は悪の組織と戦うヒーローだとして、
悪の組織と戦う話をメインにしてみよう。

その時に彼女と出会い、なんだかいい感じになるわけ。
でもそれを目をつけられ、さらわれることになるんだね。

彼女を助けるには、正体をバラす必要がある。
あるいは、正体を明かさないまま助けて、
ヒロインが仮面のヒーローに恋してしまうパターンもある
(スパイダーマンだ)。

こんな風に、
怪人と戦いつつ彼女のラブストーリーをつくれて、
最後に悪の組織を倒すと共に彼女とキスできたら、
「解決」になるだろう。

もしその間を埋められて、
冒頭から結末までを書けるなら、
あなたには「ヒーローものかつラブコメ」を書く才能がある。

ヒーローものでなくてミステリーでもいい。
彼女もしくは主人公は探偵で、
出会ったあとに殺人現場に出くわすのだ。
彼女が殺されてもいいけど、ゴールが変わっちゃうので、
バディ役にしようか。

そして、その完璧なトリックを暴くゴールで、
二人は結ばれるのである。

僕にはミステリーの才能がないので、
どうやればいいか、間を考えることができないが、
得意な人ならできるかもね。


あるいは、「会社もの」でもいいよね。
彼女は新人さん、ないし別の部署の人で、
今回とんでもないプロジェクトのチームに、
一緒に入ったていでいいだろう。
ライバル会社とのコンペがあり、
そこに勝利するまでの展開をつくり、
その中で徹夜してなんか話すとか、
飲みに行って酔っ払っておぶって帰るとかあるだろう。
そしてコンペに勝利して、
最終的に告白にOKをもらうまでを書けばよい。

ジャンルといわれるやつならなんでもいいよ。
歴史もの、刑事もの、医療もの、学園もの、
ダンスもの、ミュージカル、SF、
ありとあらゆるジャンルから、
書けそうなものを選べばいいだけさ。


もしそれでも、
頭から尻までの話を思いつかないなら、
扱うべき「事件」を間違えている可能性が高い。
「そのヒロインと付き合う」話を書く実力は、
あなたにはないのだ。
だから、別の、「あなたが事件から解決まで書けるもの」
を探す旅に出よう。

なんなら2時間で解決するものでなくても良い。

「今月ピンチだがなんとかして家賃を払う」
という5分で終わる話でもいいんだよ?
「皿洗いの汚れが取れないのを、新しい洗剤を買うことで解決する」
30秒の話でもいいんだよ?

「あなたが解決できる」でなくてよい。
「その架空の主人公が解決できる、
問題と解決」を選ぶと良い。

あなたは核戦争を起こせないが、
アメリカ大統領を主人公にすれば、
「ロシアウクライナ戦を核で終わらせる」
話すら書くことができるよね。

フィクションは何をやってもよい。
あなたの小さな現実世界を飛び出して、
あなたではない主人公が、
あなたの住んでない所でものごとを解決してもよい。

二時間で終わらない話かもしれない。
「暗殺拳の伝承者が、戦争後の力しか頼れないスラムで、
とてつもない腕力の世紀末覇者を倒す」
は二時間では難しいからもっと長くなるだろう。
ちなみにこれは「北斗の拳」だ。


あなたは、まず何分くらいの話を書きたいのか?
それをまず決めなさい。

そして、
その分数くらいで書けそうな、
「問題とその解決、そしてその間」を考えることだ。

まだ一本も完結した話を書いたことがないならば、
この、「自分が書ける長さと、問題と解決のペア」
を見出すことすら困難だ。

だから、まずそこを試行錯誤しよう。

壮大な、いつか書きたい話から、
書けそうな話から、
まあ余裕で書けるっしょ、というレベルの低い話まで、
色々はきだそう。


で、簡単な順番に並べてみな?

で、簡単な順番で、完結するまでプロットを書いてみるのだ。
上で書いたようなざっくり形式でいいよ。

それで、頭から尻まで書けたら、
最後まで書けるよ。

そのプロットを肉付けして、
別の人物を出してややこしくしたり、
設定をもっと細かくしたり、
セリフを書き始めればいい。
そのうちプロットは練られて、
どんどん面白くなっていくだろう。

で、「これは面白くはじまり、面白く展開し、
面白く終わることのできる話である」
と確信したら、
書き始めるといいだろう。

最初から二時間、三時間のシナリオは書かないこと。
「自分が書ける最小の話」を書いてみなさい。

30秒のCMなら行けるでしょ。
そこからでいい。
それを、1分、3分、5分、15分、
あたりに伸ばしていけばいいのさ。

10〜15分くらいは、
さっき並べた、「書けそうな話」のリストに入ってるかもね。
それらを練ってみればいい。

それでも難しければ、
15秒の話を考えるといいよ。



これは、完結させる練習である。
完結させるには、完結した経験が必要だ。(小泉文法)

ボールを投げる練習は、
最初はキャッチボールで、
そのうち徐々に離していくよね?

完結できない初心者は、
いきなりセンターからキャッチャーに投げようとしている。

まず自分がどこまで投げられるのかを、
把握することだ。

「自分が完結させられない話」を、完結させられるわけないじゃん。
だから、
「これぐらいの長さの、これぐらいの規模の話なら、
確実にオチまで行けるし、なんなら新しいオチを思いついた」
なんてぐらいの、
自分の飛距離、得意距離を確認するんだ。

完結慣れしたら、
それを伸ばして二時間のプロになってもよいし、
実は短編の才能があるとわかって、
ショートフィルムやCMの王様になってもいい。
その先は誰にもわからない。
まだ完結すらしていないからね。



おはなしとは、
なにか事件が起こって、解決して終わる。

(解決しないとか、最悪の結果で終わる、
バッドエンドもあるが、初心者の頃は、
まずはハッピーエンドを練習しよう。
バッドエンドは簡単すぎて、ハッピーエンドの練習にならないので。
両方できるようになってから、専門を選べば良い)

それで、「ああおもしろかった」となればよい。



あなたの才能はどこにあるか、
ジャンルなのか、長さなのか、
大人向けか子供向けか、
やってみないとわからない。
「できたもの」が、あなたの才能だ。
そこを軸足にして、伸ばしていこう。

軸足を若いうちに一つに絞る必要もないよ。

刑事物短編と、コメディ2時間と、ラブストーリー5時間の、
複数の才能があるかもしれないよ。
それは、あなたが完結させてみてはじめてわかることだ。

だから、
最初は15秒でもいいのさ。
完結させてみな。

「完結させられるようになったけど、
面白い話が書けないんです」とか、
「事件から解決までは書けるんですが、
長いやつが苦手です」とかは、
完結させられるようになってからの悩みさ。

まずはオチまで書きなさい。
3本、5本、10本書いてるうちに、
なんとなく分かってくるよ。



僕は段ボール何箱ぶんも、
かつて書いたものを残している。
そのくらいやって、やっと慣れてきたなーと思う世界だ。

まずは15秒を完結させな。
posted by おおおかとしひこ at 01:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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