2023年12月23日

90点の内容が、70点の表現じゃもったいない

とても面白い内容が出来たとしよう。
表現された原稿が、それを表現するのが下手で、
それを表現でききれないとしよう。
それはもったない。

なぜなら、その低レベルでしか伝わらないからだ。
表現力を磨くのは、
その内容を劣化させず伝えるためにある。


もっとも、表現力が高すぎて、
実質内容よりよく見えてしまう場合などがある。
たとえば出オチは、
出た瞬間がピークで、その期待力はマックスなのだが、
それは実質の内容(その後の活躍)に比べて、
実態より大きく見せてしまった、
単なる張り子のトラなわけだ。

その逆の話を今はしようとしている。
つまり、
あなたの文章力が下手なゆえに、
せっかくの内容を、その内容以下に表現してしまっていない?
ってことを言おうとしている。

あなたの中にめくるめく面白い内容が沸いているのに、
あなたの書いた文章は、それを表現してなくて、
しょぼい内容しか言っていないかもしれないぞ、
ということである。

それは、主観的に自分の書いた文章を見ていてはだめで、
客観的に自分の文章を見れないといけない。
それには、
書き終えてから最低3週間ほどは寝かして、別の人の文章を見たりして、
目をフラットに戻しておく必要があったりする。
この「目をフラットに戻す」ことは、かなり重要で、
自分の文章を見慣れてはいけない、ということだ。
他人の文章の中に混じった自分の文章、
というような客観性を持ってないといけないわけ。


また、
自分のイメージを正確に書くことが正解とは限らない。
イメージなどはそれぞれの中に沸くものだから、
「イメージがわきやすい文章」を書くことも大事だ。
あなたの思い描いたビジュアルを、
正確に文章に起こすことは不可能だと考えたほうが良い。
だから、正確に書き取りをするのではなく、
「何がどう起こったか」を中心にレポートする、
と考えたほうがよりイメージが湧きやすいのだ。

たとえば料理の場面。
飴色の玉ねぎと肉が焼いてあり、湯気が立っている、
と書くよりも、
玉ねぎと肉を炒めたものに黒コショウがいい香りを放っている、
のように、
「そうしたらこうなるだろうな」というイメージを湧かせるようにしたほうが、
想像できるものになる。

別に撮影現場で、黒コショウが使われるかどうかまではどうでもいい。
「うまそう」と思わせれば、なんでもよいのである。
もちろん、あなたに文章力があり、
ビジュアルを描くだけでうまそうと思わせれば、それもよしだ。
僕は文章力がそんなにある方じゃないから、
どんなに正確に頭の中のイメージを描写しても、
100%書けないことに悩んでいた。
しかしある時から、
100%伝わったとしても、それがどうなんだ、
と思うようになった。
そうじゃなくて、
想像が膨らむように書けば、
正確なイメージよりもよくなるのなら、
それを採用するべきだと思うようになったわけ。

せっかく90点の内容をつくったのに、
文章力がないだけで、70点に見られるのは、
幸福じゃないよね。
90点の文章力で、90点の内容を書くべきなんだよ。

90点の文章力を持っていない人は、
想像力が膨らむような文章をもって、
70点から20点分、読み手に想像してもらい、
補ってもらうようにすればいいんだ。

90点の文章力をもちろん鍛えてつけても良い。
なんなら文章がうまくて、
90点の内容が97点くらいに見えるかもしれないね。
(出オチと同様な原理で)

とくに小説はこれが可能なジャンルだと思う。
純文学などはそういうジャンルだろう。
内容は平凡だけど、
文章力がうますぎて、こんなに豊かに日本語の文章があるのか、
という日本語芸の世界があるように思う。
三島由紀夫を読んだときにそれを強く感じた。
読んだことはないが、村上春樹もそうだと思われる。
映画版の「ノルウェイの森」を見る限り、
プロット自体は平凡だなあと感じたので。
文章そのものが良いだけで、プロットや行動や結末は、
そうたいしたことないんじゃないか、と想像している。
文章力だけがある人は、
たとえば歌手に例えられるのかもね。
音階やテクニックが上手な人、みたいな。
それでうんこみたいな曲も名曲のように歌えるのかもしれない。
もちろん、名曲を平凡な歌手よりも、何倍もうまく歌えるのだろう。

あなたは優れた書き手になるべきだが、
文章力そのものを鍛えまくらなくてもよい。
読み手が想像力を使って、
面白い話であるように受け取れれば、
それだけでよい。
50点の内容を90点にすることを考え、
70点の表現を90点まで上げられるように、
考えればいいだけのことだ。

もちろん、
文章力を鍛えること自体に反対はしない。
僕がこうやってブログを書いているのも、
わりと文章力を鍛える一環だったりするからね。
posted by おおおかとしひこ at 04:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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