魅力的な人間ってどういうこと?
まずそれが分かっていないと、架空の人間も魅力的にならないよね。
イケメン、美女だからいいの?
スタイルがよくて、上級国民で、
金持ちで品があって、考え方もよくて、
コミュ能力お化けだったらいいのかな?
それは「人間としてのスペックが高い」だけで、
「魅力的」かどうかとはまた違うベクトルだと思うんだよね。
スペックが高いのはある程度魅力的だ。
フェラーリが最高時速300キロ出る、
というだけで魅力的になる。
しかしフェラーリの魅力は最高時速だけじゃないよね。
そこで惚れるわけでもあるまい。
じゃあ、人間の魅力とはなんだろう?
僕は、
「不完全であること」だと考えている。
もちろん、全てが低スペックだったら、
あまり魅力を感じないかもしれない。
ある能力が飛び出ていて、
それだけじゃなくて、逆に、
あることが劣っているようなことが、
大事なんじゃないかと思う。
そのバランスが魅力になると。
たとえば、
ドラえもんは完璧な未来型ロボットで、
万能の四次元ポケットを持っている(高スペック)。
しかしネズミが嫌いで、押し入れで寝るのが好き。
弱点があり、親しみやすさのポイントがあり、
つまり、
完璧超人ではないということだ。
逆にのび太は、
ぐうたらで馬鹿だけど、
人にやさしく、そして銃がうまい。
(映画版に限るかな)
ほとんどが欠点だらけの子供が、
一芸に秀でているパターンだね。
つまり、凸凹している。
とんでもない不良で手が付けられないやつが、
空地で子猫を拾っているのを見て、
恋してしまうべたなパターンは、
その凸凹ぶりにきゅんと来るわけだよね。
「ギャップ」というのもそういうことだ。
ある方向に尖っていると思ったら、
別の所がへこんでいることに気づくと、
なんだか人間らしさを感じるわけだ。
へこんでいるところに、
観客がマウントを取って、勝った気になるのかな?
ひょっとするとそうかもしれない。
ただマウントを取られるだけの完璧超人には、
魅力を感じないのかもしれない。
いつもカッコいいのに、
寝ぐせだけがついているとか、
美人なのに方向音痴とか、
そういうものがあるだけで、
親しみやすくなるよね。
魅力というのは、
つまり二軸必要ということだ。
優れているところと劣っているところ。
その二つで、人間の魅力が決まる。
二つ優れている完璧超人は魅力がない。
両方劣っているダメ人間も魅力がない。
優劣が同居している感じが、
人間の魅力なわけ。
最高時速300キロだして、真っ赤でかっこいいフェラーリも、
メンテが大変ですぐに壊れるドジっ子の面がある。
だから人間の職人がつくった感じの魅力になるわけだね。
機械でつくられた判で押したような車じゃなくて、
一台一台個性を持っている車だから、
価値があるように思えるわけ。
また、これらの長所や弱点は、
説明セリフではなく、
具体的なエピソードとして描かないと、
魅力には到達しない。
たとえば、
のび太はぐうたらで宿題もせずに先生に怒られている、
という場面を最初に描いておき、
宇宙侵略者の軍隊が襲ってきたときに、
割りばし銃で対抗して、
ドラえもんの道具でそれを強化して、
あっという間に軍隊を倒してしまう、
みたいな「ふたつのシーン」として描くと、
「普段はぐうたらだが、いざというとき銃の腕が立つ」というキャラクターになるわけ。
そのあとに、
「自分が損してでも困っている人を助ける」
なんてエピソードをつけると、
「普段はぐうたらだが、人にやさしく銃はうまい」
という映画版ののび太のキャラクターが出来上がる。
これは設定として語っても意味がなくて、
物語内の事件へ関わっている途中の、
具体的なエピソードとして、
創作する必要がある。
そういう場面で、その人の性格や特徴が出るからだ。
逆にいうと、
「人の魅力を描くには時間がかかる」
ということ。
ぱっと見の第一印象、
実はそこから想像もできない行動の面がある、
しかも複合的に、
となっていく。
さらに逆に言えば、
第一印象はのちのち覆されるための伏線である。
キャラクターの魅力を描くのは、
だから、
「そのキャラクターの魅力を表現できて、
かつ話が進むような(あるいは後退するような)
ターニングポイントとなるエピソード」
をつくればよいわけだ。
本編と絡んでようやく性格や特徴の魅力は、
記憶に残る鮮烈なものになるからね。
ただ設定で「〇〇が好き」とか「〇〇という傾向がある」
だけじゃ魅力にならない。
スペックじゃ惚れない、というのと同じだね。
つまり、
「関わりあう中で」
うまく魅力を出すエピソードを創作できる人が、
魅力的な人物をつくることがうまい人、
ということになる。
設定をつくるのがうまいわけじゃなくて、
エピソードの創作力が高い人が、
魅力的なキャラクターをつくれる、
ということ。
明日のジョーのマンモス西の、
「減量に耐えきれず夜中逃げ出して、
屋台のうどんを食ってしまい、
ジョーに馬鹿野郎と殴られて、
ごめんといいながら鼻からうどんを出す」
という「鼻からうどん」は有名なエピソードだが、
西は「体がデカく刑務所のボス猿におさまっているが、
人間としての弱さがある」
と設定したとしても、
この鼻からうどんを「発明」できるとは限らない。
設定を思いつくのではない。
エピソードを思いつくべきというのは、
こういうことだ。
2023年12月24日
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