2024年01月05日

挿入って作者都合になりがち

挿入という行為が編集中にあるだろう。
注意しないとそれが流れを台無しにすることがある。


Aという流れがあるとしよう。
そこにBという部分を挿入して、
A1 B A2
というものになるとしようか。

このとき、A2が機能しなくなることがとても多いから、
注意した方がいいぞ、
というのが本題。


なぜBを挿入したいのか?
Aという流れはよいが、
Bという要素が足りていない、ないし、
あとあと使うからここに入れておきたい、
等の、
内容ではなく、いろいろな都合で、
Bが挿入されることがとても多い。
つまり、
「流れがよりよくなるから」という理由で、
Bが挿入されることは滅多にない。

より面白くなり、
より流れが最高になる、
という理由よりも、
ここしか挿入ポイントがないから、とか、
ここなら多少挿入しても大きな傷がないから、
などの、
全体的な理由で挿入が行われることのほうが多い。

つまり、部分のノリが崩されて、
全体を優先したシーンになるということ。

つまり、Aから見たら、
せっかくいい流れだったのに、
政治的な理由でAの流れが崩される、
ということを言おうとしている。

思い当たる節はあると思う。

色々な都合でBを挿入して、
全体としてはよくなったはずなのだが、
実際に挿入されたシーンA1 B A2を見ると、
よくなくなったなあ、
という感覚。

問題はBの挿入にあるのではなく、
A2にあると思われる。

Bの挿入がここであることが全体的によい、
という結論であったとしても、
A1 B A2が部分的に最高のシーンになっている保証にはならない。

つまり、単純に挿入するオペレーションが間違い、
ということを言おうしている。

ストーリー、というか時間軸のあるものは、
「前のを踏まえた今」である。

もとのA2はA1を踏まえた今しか描いていない。
もちろんBを踏まえた今はない。
しかしいまや、
A2の前提はA1とBなのだから、
それら両方を踏まえたCに変更しないと、
「前のを踏まえた今」にならないぞ、
ということだ。
つまり、
単なる挿入に終始して、
A2を変更しないのは、リライトとして間違いだ、
ということを言おうとしている。


あるものが前にきたら、
そのあとに来るものはすべて影響を受ける。
川の流れと同じだ。
なんならまったく違うものにそのあとがなってしまうかもしれない。
カオス理論である。
影響が微々たるものだと思っていても、
初期値敏感性があるものが、
複雑なものの特徴である。

ということで、
まずはA1とBを前提としたそのあとのCに、
A2を書き換えたほうがよい。
一文字も変わらないということはないと思う。


挿入の注意点は、
「ちょっとくらい挿入しても全体は変わらないしいいよね」という甘えだと思う。

先っぽだけ入れるだけなので、
大丈夫、みたいな意識とあまり変わらない。
挿入したいがために、
ダメージを低く見積もる、ということをしている、
という意味で、挿入と挿入はとても似ている。

挿入したことで、
そのあとに影響が広がらない、
というのは、
時間軸に対して無知だと思う。

それは、あるものを配置しているのを、
そっちに配置しても同じだよね、
という、
平面(2次元)の発想だ。

そうではない。
我々のやっているものは、1次元という、
あるものの次にあるものが来ることを、
ずっとつなげていくものである。

2次元的に移動しても同値である、
と思えるものは、
1次元では同値ではない。
なぜなら、1次元では、
前にあるものは後にあるものにすべて影響を与えるからだ。
影響を与えないのが2次元、
与えるのが1次元、とでも認識しておくといいかもしれない。

2次元では、せいぜい隣接しているものへの影響だが、
1次元では、「そのあとに来るもの全部」であることに、
注意されたい。


ということで、A2をCに直したとしても、
それでBの影響をなくしたとは言えないかもしれない。
そのあと全部直さないと、
Bの挿入の影響を除去できないかもしれない。
そこまでやって、
Bを挿入して良かったのか?と考えて、
良くなくなったのなら、
Bの挿入箇所は、そこであるべきではなかった、
ということが評価できるというものだ。

ということは、また別のところにBを挿入するべきで、
以下同じことをやることになるだろう。

「ほんのちょっと入れればいいだけ」という発想の甘さが、
挿入という悲劇を招いている可能性がある。

気づきにくい、というのが最大の問題点だね。
「挿入するだけで編集できそう」という楽さがあったとしたら、
それは罠かもしれない、
と慎重になるべきだね。


1次元のことを知らない人ほど、
簡単に挿入すれば?なんて言うと思うよ。
それによってあとのものが全部影響出ますがいいですか、
と言うと「挿入するだけでしょ?」という顔をすることはたしかだ。
挿入は配列交換ではない。
そのあとの影響を全部変える、
実はたいへんな出来事であることが多いのだ。

川にうんこを流すのを挿入だと考えればいいのかな。
その後全部に影響が出るぞ。
posted by おおおかとしひこ at 00:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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