2023年11月19日

欲しいのは結論なのだろうか

物語を見るときに、
「結論を欲して」見るわけではないだろう。

「おもしろそうだ」や、
「こういう世界観」や、
「感情移入しているキャラクター」や、
「このキャラ好き」で、
見ているのではないだろうか。
そしてそれは「結論を欲して」いるわけではない。


我々が脚本を設計するとき、
結論からの逆算でつくるものである。
結論がもっとも鮮烈になるように、
もっともすとんと腹に落ちるように、
前提や展開を考えて、
しかも容易に察せられないように、
ひねりを加えて、ツイストをかけるわけだ。

前提は結論のためにあり、
結論の前提として必要十分かつ、
興味を引くものとして、
ファーストシーンがある。

そして、
すべてのシーンは、
センタークエスチョンにイエスと答えるためにあり、
すべての人物の行動は、
目的達成のために最善手を打つ。
つまり、
すべてのストーリー進行は、
結論へ向かうための途中段階であり、
「この焦点をクリアできるのか?」
に集中させて、
ターニングポイントでそれを曲げながら、
最終的に結論へなだれこむように設計する。

無駄があってはならない。
結論への最善手に見えないからだ。
「それを言いたいならこれは要らなくない?」
ってなるのは、
どこか寄り道をしたり、
コーナーで膨らんでいるわけ。


しかし、この論理最短ジェットコースターを、
観客は第一に欲しているわけではないことに、
注意されたい。

もう一度冒頭のものを繰り返すと、

「おもしろそうだ」や、
「こういう世界観」や、
「感情移入しているキャラクター」や、
「このキャラ好き」で、
見ているのではないだろうか。

つまり、
ストーリーではなく、
シチュエーション、世界観、キャラクターの、
静的、点なるものを、
欲していることに注意されたい。

「それでしか得られない栄養分がある」
というのはミーム的な流行りだけど、
そこにしかない世界、キャラクターを摂取するために、
ストーリーを見ている人がいる。

だけど、
ストーリーを提供する側は、
静的な点としてそれをとらえていなくて、
動的に、刻々と変化する焦点の集合体としてとらえていて、
しかも結論へ至る道筋、最善ルートとして、
ストーリーをとらえている。

つまり。

表面的なもの、ガワ(世界観、キャラ、設定)が欲しい観客。
それだけではストーリーにならないため、
ストーリーを夢中になるようにつくり、
結論への着地の見事さ、用意周到さをつくる脚本家の間に、
まったく理解しあえない溝がある。


観客はつまり、
ストーリーがどうあれ、
どのようなものであるか認識していない。
認識しているのはキャラクターだ。

もちろん、
「この結論を得るためにこのストーリーをみよう」
などとも思っていないわけだ。

逆算からつくっている脚本家、
点の集合体としてしか見ていない観客。
この差を認識しておくことだ。

じゃあガワだけやってて、
ストーリーなどどうでもいいかというと、
つまらないストーリーはつまらないんだよね。
どんなにガワが魅力的でもね。

だから、
魅力的なガワと、
魅力的なストーリーの、
両方が必要なのだ。

だが、観客はよいストーリーを、
注文できるほどの言葉、専門知識をもっていないので、
キャラでしか判断できないということだ。

キャラがよいと思ったが、
いまいち夢中になれないのは、
キャラがよくなくなったか、
ストーリーがつまらないかのどちらかであるが、
観客からはどちらかは分別できないということである。

かように、
ストーリーというのは目に見えてない、
存在しないものである。

だから、とらえることがとても難しく、
書くことがとても難しいのだ。


ストーリーを捉えるのは簡単だ。
「その時点で早急にしなければならないこと(焦点)」を、
各時点で書き出して、リスト化することだ。
それによって、
おおまかな構造を知ることができる。



観客は結論を欲していない。
しかし結論の出ないストーリーはつまらないという。
なんという見えていなさだろうか。


我々のやるべきことは、
完璧なキャラクターや世界観やシチュエーションをつくり、
しかも完璧なストーリーをつくることだ。
しかし前者しか評価されないという、
とても矛盾した世界に生きているわけだね。


結論はあくまで出口だ。
出口を見てから入口に入る人はいない。
どんなに素晴らしい結論だとしても、
(それが見えていない)入口から入ってこないならば、
たどり着けないということさ。


つまり、
入口も魅力的にして、
点も完璧にして、
線も完璧にして、
結論も見事にしないといけない。
そして、結論を知らないかのように、
頭からぐんぐん引き込まないといけない。

難易度? めちゃくちゃ高いよ。
posted by おおおかとしひこ at 11:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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