2023年11月22日

これが小道具の力だ

これはいいホラーの導入部。
https://x.com/maple_ob/status/1726830360213017063?s=20


100円ショップで作れる小道具と、
地面のアップのみだ。

にもかかわらず、
「実験動物を乗せた車が事故にあい、
動物が逃げたのではないか」
という大変な事件の、不安的な導入部に見える。

勿論爪で切り裂かれてたり、
血がついててもいいんだけど、
わりとポロッと落ちただけの感じが、
管理の杜撰さも含めて、
怖いんだよね。

同時にこれは説明にもなっている。
道を歩く男が「ん?」とこれを拾い、
次に草むらに「グルル…」と動物がいたら、
確実にソイツだよな。


これはいわば看板である。
看板を小道具に使う例はよくある。

街の入り口の看板で、
「ここから○○市」というやつが、
人々のいない村を暗示する。
(たとえば「ようこそ福島市へ!」なんて、
色褪せた看板)

あるいはその看板がグラフィティでぐちゃぐちゃになってるなら、
ストリートギャング達がやりたい放題の街だな、
とわかるわけ。

鉄でできた看板が溶けて、
どうやら「広島市」の看板だとわかれば、
原爆の威力を示せるね。

これは演出だろうか?
それとも脚本の範疇か?
どちらもある。
しかし使えないやつは映画をわかってないってことだ。


このたった1カットをまともにやろうとすると、

厳重に封をされた車が走ってて、
厳重に警備員がいて、
時折中から唸り声や叩く音が聞こえ、
ある事故でその車が横転して、
怪物が逃げ出すところまでを、
撮影しなければならない。

それに予算と手間がかかることくらい、
素人でもわかるだろう。

だけどそれをざっくりカットして、
道に落ちてる札に変えることは、
すぐれた監督か脚本家にしか出来ないことだ。

そこで浮いた手間や予算を、
あとの怪物との対決に割くことができるんだよ。
いいことづくめだね。


僕は最小手で表現せよ、
なんてことをよくいうが、
これは最小手の例だろう。
posted by おおおかとしひこ at 15:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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