この記事は、タイパーアドカレ2023の記事です。
(普段は配列勢ですが、乗り込んでみたいと思います!
昨日はorihさんのタイピングクイズ。僕は7/10、6/10…)
今年テルさん主催のKeyboard Input Hackathon(KIH)2023にお邪魔して、
色んな配列の打鍵動画を撮った、
カナ配列薙刀式の開発者大岡といいます。
今日は、打鍵動画を撮ろうぜ、
しかもタイプウェルなどの競技動画ではなく、
普通に普通の文章を書いている、
日常文動画を、という話をしよう。
(最後に撮り方講座あります)
タイパーの方は、
自分の打鍵動画を撮り、
反省会に使ったり、
証拠動画としてドヤに使ったりしていると思う。
また、他人の動画を見て、
運指や最適化や、力の入れ方、抜き方の研究をしたりしてるはず。
それは競技者としての動画の使い方だろう。
だけど待って、
キーボードはもともとは競技のためにあるんじゃないよ。
文章を書くためにあるんだよ。
そもそもタイピング競技だって、
「文章を書くための一部を取り出して競う」
から始まったはずで、
最初の目的は文章を書くための競技だったはずだ。
その競技がいつのまにか競技のための競技になり、
文章を書く速度よりも、思考速度よりも、
べらぼうに速いところで切磋琢磨がされていて、
もともとの文章を書くことと随分離れたものになっていると思う。
目的と手段の乖離というか、分離というか。
だから逆に、
「タイパーがふつうに文章書いたら、
どれくらい速くなるものなの?」
あるいは、
「タイパーが文章を書くとき、
どんな経験が生きてるの?」
なんかを動画で示せると、
つまり元に戻ってくると、
あらためて面白いなと思ったわけ。
多くのふつうの人が普段見てるのは、
自分の文章入力画面で、
タイピングソフトの画面ではないので、
普段見てる自分の画面との比較が、
多くの人の心に刺さると思うんだよね。
そしたらタイピングすげえ、おもしれえ、
ってなる人も現れると思う。
で、
テルさん(JISカナ、qwerty)、
たのんさん、白狐さん(qwerty)に協力を仰ぎ、
どんなもんじゃい、と動画を撮らせてもらいました。
ほかの配列勢も同じ条件で撮ったれ、
とまとめて、
キーボード強者の日常文打鍵動画
https://youtu.be/2kMpgCmSatQ
に収録されているのでお暇な時にどうぞ。
僕の薙刀式みたいに、ひたすら思うことを書くパターンもあれば、
パッと思うことが出ない人用に、
僕がインタビュアーをやって、
世間話を筆談でやるみたいな形式で収録したものもある。
配列勢の普段の主張は、
本来の目的である日常文でどれだけ効果を発揮するのか、
配列勢のほうが実戦文ならタイパーより速いのか、
タイパーの競技経験は日常文でどれくらい生きるのか、
みたいなことが具体的に見れる、
資料価値の高い動画群。
(全配列を見ると2時間かかるよ!)
気になるスピードランキング。
変換後の文字数/10分で比較。
Qwerty たのんさん……1678
Qwerty テルさん………1602
Qwerty 白狐さん………1570
薙刀式 大岡俊彦…………1454
tomoemon-AZIK tomoemonさん……1452
JISカナ テルさん………1349
さすが鍛え上げたタイパーたちは、
日常文でもちょっぱやだ。
tomoemonさんのAZIK(qwerty拡張)は、
独自定義をたくさんしてある(2000くらいあるらしい)、
オリジナルのtomoemon-AZIK。
この中で唯一僕のカナ配列薙刀式が、
非タイパー勢としてまあまあの所に食い込んでいる。
(その他の配列勢でも大体800〜1000の速度でした。
ビジネスタイピング(コピー打鍵)の一級が700であることを考えると、
配列勢は一般よりは全然速い)
ちなみに僕自身の薙刀式のタイプウェル速度は、
常用語SSに過ぎない。
(ちなみにqwertyローマ字だと常用語B)
なのにZタイパーたちと、
そこそこ勝負になってるところが面白いと思ったんだよね。
動画でのトップスピード比較(手動計測)では、
たのんさん14kps、僕5.4kpsで、
2.59倍の圧倒的な手の能力差に開く。
タイパーはデフォルト配列で手を鍛えた人たちで、
僕ら配列勢は手を鍛える代わりに動線を変えた人。
競技では大きく差が開いているものの、
ふつうに文章を書く上では差を縮めている。
この縮めた分が、
配列の威力であると考えられるわけだ。
ちなみにタイプウェル常用語のタイムで比較すると、
たのんさん 25.6秒(ZI) (ネットで調べたレベルなので前の情報かも)
大岡 55.7秒(SS)
なので、2.18倍の開きがある。
じゃあ僕の1500に対して、
たのんさんが2.18倍の3270で書けるかというとそうではなく、
1.15倍の1678まで縮まる、
というのが面白いと思う。
思考速度、変換効率(動線)、修正や言い直し、
文章全体がどこへ向かおうとしてるかの制御、
なども関係することは明白で、
ただ文字部分の打鍵じゃ終わらないたくさんの要素が増えると思われる。
ちなみにカナ配列薙刀式は、文字配列だけでなく、
BSがU位置とか候補選択(縦書き)のカーソルがTYにあるとか、
IMEオンオフやエンターがホームポジション近くの2キー同時押しとか、
3キー同時押しの編集モードで、
選択や再変換やコピペや記号がバインドされてるなど、
入力全般の動線を考えて配置してあるため、
そこの差も出たかもしれない。
配列といっても、文字だけでなく、
入力から確定から訂正や編集までシームレスになるべき、
と薙刀式では考えている。
これと、
ひたすら手を鍛えたタイパーたちと、
どれくらい勝負になるものかなあ、
どこがどう違うのかなあ、
というのが僕の興味だ。
つまり、もうちょっと異種格闘技戦が見たいので、
日常文の動画撮ってよ!
という単純な好奇心駆動で、
この記事を書いています。
たのんさんよりも速い日常文が見れるなら見たいよ!
テルさんより速いJISカナの日常文はありえるの?
などに興味がある。
あるいは新配列の使い手、
親指シフターなどがこれに匹敵する動画もあげてもらえると、
面白くなると思うんだよなあ。
大体10分くらい思うことを書くと、
一体どれくらいになるんだろう?
たとえば毎パソ優勝者の松嶋さんは、
2000を超えるコピー打鍵(変換あり)だ。
だけどこれが他人の文章のコピーでなく、
自分の文章をアドリブで書くと2000だろうか?
ということを知りたいわけ。
僕は1500〜1900くらいは普段は出しているけど、
2000以上は未経験だ。
僕がやるよりタイパーがやる方が速そうなので、
好奇心として「見たいよ!」があるわけだ。
日本語の文章というのはとても複雑で、
英語に比べて簡単にはいかない。
単語を書けばいいだけではなく、
変換したりしていかないといけない。
だから本来の「文章を書く」を競うことがタイピング競技であるならば、
創作エッセイ部門(当日お題発表)があってもいいと思うんだよね。
内容と速度の両方の評価が必要かもだけど。
その鍛錬は、その工夫は、
文章を書くのにどれだけ役に立つのか、
見極めてみようじゃないか。
ということで、
日常文打鍵動画のススメでした。
ちなみに配列勢の日常文はたくさん披露されていて、
http://oookaworks.seesaa.net/article/475004852.html
にリンク集をつくったので参考にされたい。
もし作文のネタで何を書いていいか分からないなら、
子供の頃の思い出とか、
趣味の話とか、
タイピングにかける情熱とか、
一番練習してた頃の狂ってた話とか、
初恋の人の思い出とか、
コロナのときの苦労話とか、
転職した話とか、
推しの話とか、
最近見てるYouTuberが面白いんだよとか、
業務メールを固有名詞を隠した状態で書く、
などなどがあると思います。
以下、
動画を撮る時のコツなどを書いておきます。
1. 手元撮影はiPhoneでやってます。
軽いので落としても事故りにくく、マイクの性能がいいから。
本格カメラ+マイクのセッティングだと結構なスタンバイがいるけど、
iPhoneなら机の上に小さい三脚+突き出し棒に養生テープで固定、
で済むからです。
しかし打鍵が激しく、その振動でiPhoneが落下することもあるので、
固定は慎重にね。
僕が机で撮る時は、
キーボードの両脇に本を重ねて高さをつくり、
そこに細くて長い板(ハンズで数百円で買える、
ヒノキの細い板)を渡して、
そこに養生テープでiPhoneを貼ってます。
2. 文字部分録画はGame Barが気楽。
Win+Gで立ち上がります。
無料のロイロレコーダーなどでも良いです。
ただメモ帳とGame Barの組み合わせだと、
処理落ちで数文字単位でしか撮れないケースがあったので、
マシンスペックや相性があるみたい。
事前テストをしてから収録に挑んでください。
エディタの文字は、フォント大きめが良いです。
10.5ptとかがデフォのことが多いけど、
動画になったら小さすぎるので読めないよ。
動画のピクセル数は、HDで1960×1080ドットということを、
計算に入れてください。
一行20〜30字くらいが読みやすく、
手との連動が動画でわかりやすいので、
フォント大きめにしたり、
行当たりの文字数をエディタで調整してね。
(「折り返し」をオンにしないと、延々一行が繋がるので注意)
3. 二画面の同期。
映画の撮影で頭にカチンコを打つのは、
画面と音を別々の機材で取ってて、あとでシンクロを合わせるため。
打鍵動画ではエディタと手元の二つの動画の同期を取るために、
なにかしら最初に音を出してそれあわせにすると良いです。
ピークの鋭い波形の音だと1F単位で合わせやすいので、
先の動画では僕は柏手を打って、
1と2の動画のタイミングを編集ソフト上で合わせています。
最悪柏手を忘れても、
第一打の音と絵を合わせれば合うはず。
なおFPS(収録コマ数)は、
29.97(テレビの標準)に両方とも合わせないと、
どんどんずれていくよ。
圧縮率も0にしないと時間方向に圧縮をかけるコーデックもあるので、
同期できないこともある。
慣れていないと何回か失敗するので、
1分とかをテスト撮影→編集してもろもろのセッティングを確認してから、
本番の10分をやるのがいいかな。
4. 編集ソフトは何使う?
無料のも色々あるので好きなものを。
僕は映像のプロなので、
いつも使ってるAdobe Premiereです。
機能が多すぎるので初心者には勧めないです。
昔のiMovieぐらいが一番使いやすかったけど今はないので、
適宜調べてください。
ここの情報共有はないです…
二画面の同期とか編集とかFPSとかめんどくさいよ!
という人は、
「タブレットを机に水平に置いて、
キーボードと手元ごと一発撮影する」
という手もあります。
こんな感じ。
https://youtu.be/RPvdiXy3c6Q
これならiPhone一発撮りが可能ですね。
手元がなく画面だけだと、
「倍速チートしてんじゃねえの?」疑惑が出るので、
エディタ画面だけの動画でも、
マイクで打鍵音は拾ってチートじゃないですよを証明した方が良いかも。
5. 緊張を取る。
実は一番難しいのはこれ。
動画慣れしてる人はそうでもないかもだけど、
「動画で撮られること」
「自分の一挙一動を観察されること」
「これがのちのち批評の材料になること」
自体に慣れていない人は、
めちゃくちゃ緊張して、
普段のパフォーマンスの7割も出せなくなります。
特に「考えてることをアドリブで書く」
って、なかなか難しいし、
一人で録画操作もやんなきゃいけないし、
じゃあ二人でやったら、
アドリブ見られてるのも嫌だしで、
なかなか慣れないのでご注意。
普段通りが出ればいいや、ミスもするやろ、
くらいをOKの基準にして、
書き始めでダメならESCするくらいの勢いで、
リラックスしてやるのが良いかと。
あ、iPhoneのメモリは空けといてね。
結構(10分とか30分)回すことになるので、
その時だけ写真フォルダをPCに移して、
終わったら戻すなどが必要。
ちなみにiPhoneの動画形式は.movで、
Macでは見れるけどWinでは見れない形式なので注意。
編集ソフトに取り込めば見れることが多い。
iPhone上でもカットはできるので、
iPhone一発撮り→余計な頭と尻をカット→YouTubeにアップ、
なんて乱暴なやり方も可能です。
ということで本記事を終わります。
タイパーと配列勢が交わったKIH2023、面白かったなあ。
カナ配列薙刀式はいいぞ、
という話は自作キーボードアドカレでも話します。
12/14をごらんください。
https://adventar.org/calendars/8789
この記事はカナ配列薙刀式+自作キーボード(MiniAxe)で書きました。
2023年12月11日
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