2023年12月09日

強弱の妙

僕はどぶろっくのネタがとても好きなのだが、
このコラボ企画にはマジでびびった。
ミュージカル俳優の表現力のすごさたるや、
ここまで行けるのか、
と比較できるので貼っておく。
https://m.youtube.com/watch?v=5N5y3nex2q4&pp=ygUq44Gp44G244KN44Gj44GPIOi-suWkq-OBqOelnuanmCAg44Kz44Op44Oc
の3:19〜。
この「農夫と神様」のネタを知らない人は0:00からどうぞ。


もともとこのメロディがすばらしく、
一流のミュージカルを見てる気分になる。
その上でこの下らない下ネタを朗々と歌い上げる、
このギャップこそが真髄である。

もともと芸人の江口の歌唱力も、
芸人の中ではずば抜けているが、
それを軽く超えてくるミュージカル俳優。

それは、
強弱の付け方だ。

消え入りそうな繊細な声の芝居から、
体いっぱいで表現する大きな張りまで、
ダイナミックレンジをフルに使っている。

これに比べると、
所詮は江口の歌唱力は、
全てをフォルテで歌ってるだけなんだなあ、
と比較で見るとよくわかる。


この強弱は何を基準としている?
入りが弱くラストが強い、
という大きな盛り上がりだけではないよね。

思わず聞いてほしいところで、
わざと小さくしてこっちにきてほしい、
と思わせたり、
ラストの高らかに行くところは、
全身で表現している。

つまり、
ストーリーの解釈力だ。

どこを弱くしてどこを強くすると、
よりこのストーリーが映えるのか、
よりこのストーリーを楽しめるのか、
考えに考えた上での、
強弱の選択だ。


もちろん、脚本においては、
弱を小さいフォントで書いて、
強を大きな太字フォントで書くわけにはいかない。
だけど、
芝居ではそれが出来るということ。

そして、
本当によくできた脚本では、
同じ級数の同じフォントで書いてるにも関わらず、
強弱がわかるような文脈で書かれている。

感度のいいどの役者が演じたとしても、
思わず強弱をつけたくなるような、
そんな文脈を用意したいところだ。


実のところ、
舞台設定の部分、
大きなイチモツ以前の部分はかなり冗長で、
このタメこそが、
クライマックスのイチモツを引き立たせる、
弱の役割を果たしている。

しかしここにさらに強弱をつけてくる、
それぞれのミュージカル俳優の表現力を、
楽しむことができるわけ。

ついでにバックバンドの強弱にも注目だ。
もちろん、この強弱を計算した演出家がいる。
おそらくはミュージカルの演出家だろう。
(照明効果も含みだと思う)


強弱のギャップ。
それだけで人を引き込める。
それだけの表現力が俳優にはあり、
それを活かせるだけの文脈が、
脚本というわけだけね。

理想的な、脚本と芝居とバックバンドの強弱の、
素晴らしいアンサンブル。
posted by おおおかとしひこ at 16:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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