2024年02月01日

伏線は必ず回収される

見事な伏線回収!とかよくあるけど、
そもそも回収されない伏線などはない。
というか、あってはならない。
ものありげなことがあれば、
それは必ず回収されないと、
出来たシナリオとは言えず欠陥シナリオだ。


伏線は、必ずしも、
「このあと使いそうだなあ」と思わせぶりなものだけを指すわけではない。
あるいは、
前半にさりげなく入っていたものが、
ラスト近くになって、
「それ伏線だったのかよ!」と驚くべきものであるものだけを指すわけでもない。

単純に、
「それがいきなり来ると唐突なので、
その前に前振りしておく」
というだけのものを言う。

急に雨が降ってきたら唐突だから、
天気予報で雨が降るよと言わせるとか、
曇り空を気にしている様子をつくるとか、
玄関を出るときに傘を持ってるとか、
そのようなことでも伏線になるわけだ。

つまり、
唐突でない、
流れるようなストーリー運びがあるならば、
伏線がうまく機能している可能性が高い。
自然すぎて気づいていないだけのことだろう。

急に告白するのは変だから、
ちょっと前に視線を合わせるようにするとか、
それだけでもよい。
逆に、その後のことを考えて、
そうしたちょっとした芝居で伏線を巧みに表現する役者もいる。
(シナリオに書いていなくても)

空気がなんとなくそっちへ行きやすいようにするわけだね。
これも伏線のひとつである。


だからそもそも伏線とは、
時間軸を流れさせるようにする道具だてだと思うとよい。
なので、回収されない伏線というのは存在しないのだ。
いわば係り結びのようなものだからだ。

序盤でそれが伏線とは思わずに、
ラスト近くで回収される、
というのは、
そうした「ふつうの」伏線と違うために、
目立つ、驚くだけのことである。
目立ったものしか人は記憶できないからね。
しかし、
丹念にシナリオを伏線だけに注目して分析していくと、
いろんな地味なものを見つけることが出来るはずだ。

前振りとその結実と考えれば、
伏線と回収などのような、
大それたものではないことが分かるだろう。


ところで、
冒頭に出てきたものをラストに持ってくると、
お話が閉じて、終わりやすい、
というテクニックがある。
これも伏線と回収の関係だ。

最初これから始まって、
最後にこれに戻ってきて、おしまい、
という形はわかりやすいからだ。

ブックエンドテクニックのひとつに、
冒頭と同じ場面だがひとつだけ違うことを描き、
その変化こそが主人公の成長であり、
テーマである、
のように描くことが出来る。
冒頭とエンドで同じシーンでブックエンドのようにはさむことからこの名前がついている。

最初のシーンというのはたいてい印象的だから、
そこに戻ってきたということは、
何か大事なことを言おうとしている、
と構えやすいからね。



見事な伏線回収!とかよくあるけど、
そもそも回収されない伏線などはない。
というか、あってはならない。
はい、これで冒頭に戻ってきたので、
話はおしまいだ。
冒頭の文章は伏線で、今回収したわけだ。

回収されない伏線は、
投げっぱなしになる。
投げっぱなしでも気づかれないこともある。
だからきっちり刈り取ると、
ちゃんと話をしてもらった、
という感覚になるものだ。
そしてそのラストになることをあらかじめ逆算して、
冒頭に仕込むのである。


ラスト付近に、冒頭を繰り返してみるとよい。
そもそも狙っていたラストにたどり着いているかを、
確認できる。
posted by おおおかとしひこ at 09:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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