2023年12月24日

【薙刀式】親指シフトはかつて普及率No.1だった

Twitterから。
> 富士通の「親指シフト」は、結局普及しませんでしたからね。

親指シフトの名誉のために記しておくと、
親指シフトはワープロ時代、かつて普及率No.1だった。
PCのタイミングで乗り遅れたのだ。


「結局普及しなかった」のではない。
かつて普及していたのに、
黒船のようにやってきたWindowsに対応できず、
PCのキーボードを親指シフト化する開発が遅れ、
Windowsの普及に「出遅れて追いつけなかった」のだ。

Windows発売の瞬間に、
親指シフト対応ソフトを出していれば、
シェアNo.1とまでは行かなくとも、
それなりのシェア(30%とか?)を、
確保できていたと思われる。


それが出来なかった理由はいくつかあり、

・Japanist+親指シフトキーボードという、
 割と高めの価格(約4万円)のものしかなかった
・親指シフトは親指シフトキーボードでしか出来ないものではなく、
 ソフト的に再現できるのだが、
 そのエミュレータをつくらなかった
・無変換キー、変換キーを親指左キー、右キーにするのか、
 スペース、変換キーをそれにするのか決めきれなかった
・そもそも無償配布せずに、
 商売をしてしまった(しかも導入に4万円)

などがあげられよう。


たしかにPC初期は高い物を買い集めるものではあったが、
普及するにつれて無償サービスがたくさん出てきたため、
インフラであるはずのキーボード入力を無償化するほどの先見の明は、
富士通にはなかった。

(日本人にとってインターネットの入り口がYahoo!になったのは、
ブラウザが無償でついてきて、
そのデフォルトホームページがYahoo!だったから。
タダでまず使えるデフォルトが、
覇権を握ることに当時の富士通は気づいてなかっただろうし、
なんなら今も気づいてないかも)

ほんとうに素晴らしいのなら、
無償化して普及に努めればよかったのに、
富を独占しようとした。
だから失敗した。


うちはボランティアではなく営利企業である、
という言い分も富士通にはあるだろうが、
インフラの重要な部分は、
社会的使命すらある。

富士通は、社会的使命があったにも関わらず、
私利私欲に走った、
自分だけしか見えていなかった小物である、
と批判してもよいだろう。

これがため、
効率の悪く指の配分も歪なqwertyローマ字が、
その初歩的マスターの簡単さのために普及し、
本質的な歪さのために、
効率よく書くことは恐ろしく上級者向けになってしまい、
結果として安物買いの銭失いになり、
日本のIT文化の低下が進んだことは、
売国奴なみの罪があると僕は考える。

もっとも、
ワープロ時代でもPC初期でも、
ブラインドタッチするのは、
一部のオペレーターだけであり、
その他はぽちぽち入力しかなかったから、
qwertyしか打つ「勇気」がなかったのだろう。

新JISを普及させられなかったのも、
ブラインドタッチを前提とせずに、
サイトメソッドを前提にしたからだ。
見た目でキーを探すなら、
文字種が少ない方を取るに決まっている。

サイトメソッドはqwerty、
ブラインドタッチは新JIS、
と住み分ければ、
初心者ポチポチ用、
中級者以降そのうち全員がやる用、
などと住み分けられたのかもしれないが、
おそらくこれらが決められた当時、
「全員が書類をキーボード入力で強制的に作らされる世界」
は誰も想像していなかったと思われる。

当時の常識は、
「キーボードを触れるのは専門の女の子オペレーター」
という認識だったろう。
今でもジジイ世代はそうで、
キーボードをうまく打てない人はとても多いし。


そんな時代に、
親指シフトは早すぎたのかも知れないし、
その早熟な思想を、
Windows黒船襲来の荒波にさらわれてしまったのだろう。

拙劣だから廃れたのではなく、
優秀な思想の普及で失敗して廃れた例では、
ビデオ規格のベータを思い出させる。

ベータVHS戦争の勝者であるVHSの、
普及の最大の原因は低価格であった。

親指シフトを本気で普及させたいなら、
タダで提供した上で、
トレーニングもタダで出来るようにするべきだった。

Windows普及に役に立ったのは、
タダでついてくるソリティアで、
マウス操作(クリック、ダブルクリック、ドラッグアンドドロップ)
をしたからこそ、
皆はマウスの操作に慣れることができた。

このような入り口を、
親指シフトに用意しなかった段階で、
親指シフトの衰退は見えていた。

だって人は楽でタダのものに流れるからだ。

見た目で簡単そう、タダで使えるし、
と皆が飛びついたのはqwertyローマ字で、
それをポチポチ打ちができ始めると、
標準運指ブラインドタッチを誰かが教え始め、
それがいかに不合理だったとしても、
「これが出来たら仕事がもらえる」
ことでの技術独占がはじまり、
「誰もが容易にブラインドタッチできる、
日本語をネイティブでPCで書く社会」
の到来が消えたのだ。


人は、やすきに流れる。安き、易きの両方だ。
そのことに気づかなかった富士通は、
国賊として万死に値する。
まあ今死んだ企業だけど。



もちろん、
有志の努力により、
現在のWindowsと現行キーボードで、
親指シフトは使える。
しかし個人レベルのボランティア布教で、
爆発的に広まることはない。

デジタル庁は本気でこのことを考えるべきで、
qwertyローマ字なんて学校で教えてる場合じゃねえだろ、
と僕は批判的に見ている。
もっとも、
日本人は周りと違う人を排除する民族なので、
とりあえずqwertyローマ字は動かせるようにしておき、
やる気のあるやつは、
もっといい配列という、
第二外国語(いずれ母国語になる)を覚えるべきだ。


それは、親指シフトでも新JISでもいいが、
それよりも新世代の、
薙刀式、新下駄配列、飛鳥配列、月配列などを、
使えるようにしたほうがいいと思うけど。
だってその方が効率が良く、楽で、速いからだ。
ちなみに難易度と最高速に差があることは注意されたい。
それに関しては過去記事で色々分析した。



ワープロがPCに取って代わられたこと、
TRONを潰されたこと、
Windowsが98より普及したこと、
などが、
歴史の分岐点だったであろうか。

僕はリアルタイムでこれらを見ていた世代より、
少し下の世代なのだが、
「なんでqwertyローマ字なんてクソみたいな配列を使わなあかんのや」
と疑問に思い、ここくらいまでは調べた。

全体を見て、
本気でインフラを考えてた人は、
(表立っては)いなかったというのが僕の見立てだ。



だから僕は薙刀式をつくった。
僕的には抜群にいい配列だと考えているし、
使用者も少しずつ増えている。

本気で日本語入力を考えたいのならば、
親指シフトなんて効率の悪い旧配列すら、
もう捨てていい。
新世代のカナ配列はかつてよりも、
きちんと運指効率やとっつきやすさを練り上げている。

これらの精華を知らないのは、
僕の普及活動の貧弱さのせいで申し訳ない。

だからこの記事を書いている。
広められたい。
posted by おおおかとしひこ at 09:32| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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