2023年12月25日

【自キ】理系の文化は意外と知られていない

理系(エンジニア系?)には共通の文化がある。
それって一般社会に案外知られていない。

僕はそれはとてもいい文化だと思うんだけど、
一般社会には浸透してないがゆえに、
齟齬が起きることがわりとある。


【まず調べる。分からない場合、
「○○と○○を調べた」という情報付きで質問する】

○○という調べ方が間違っている場合があり、
「○○ではなく△△を見て、それで分かるのか分からないのか」
を場合わけしたいため、
「どこを調べた?」
「それなら△△を見て、それでも分からないときまた来て」
と返すことがある。

これ、一般社会だと、
「は?初心者は調べるところも知らねえの?」
「知らねえ初心者が質問する資格ねえよ」
「また来ては二度とくるなの意味だぞ?」
なんだよね。

だからこの言葉に初心者はビビって、
二度と質問しなくなってしまう。


質問された側は、問題の切り分けをしてる。
何が分からないかを特定したくてこの質問をしていて、
それに答えれば対応を変えようと思っているだけだ。
医者の問診と同じだ。

だけどこれが初心者には威圧的に思えてしまい、
二度とここに来なくなってしまう問題がある。

僕は理系の社会にしばらくいたので、
「最短の会話をしたい」という理系なりのエルゴノミクスがあり、
なおかつ一般社会で働いてるので、
その文化がないことを知っている。

一般社会では、
この最短距離のやり取りをする習慣がないため、
付け届けや世間話やご機嫌伺いから入ったり、
一回の質問で済ませずに、
何度も何度も細切れに質問する。

理系はこれが無駄だと思う。
さっさと本題に入って解決したい。
そしてできれば犯人をスムーズに探して、
最短手順で解決したい。

これを知らないと、
一般社会の人は「冷たい人、私の感情に寄り添ってくれない人」と理系を思い、
理系は「まだるっこしい人、感情はいいから事実を話せ」
と思ってしまうのだ。

技術に感情は付与しない。
技術に感情は混ざらない。
技術に気分は関係ない。
技術は分解できて再組立できる。
だから技術は素晴らしく、理系はその世界に生きてるのだが、
そのことを一般社会は知らない。

だから、
人に頼み事をするときは、
ご機嫌伺いから入る。
ご機嫌がいい時しか頼み事ができないんだよね。
むしろ、理系から一般社会にきたときは、
「依頼に機嫌が関係あるんだ」とびっくりした。
まず本題から入れやといつも思っている。

技術を提供するかどうか、機嫌を見るんだよね。
そうじゃない、技術屋は、
技術の話を聞かれたら、すべてを可能か不可能かで見るだけで。

だから「技術的に可能」と言われれば、
誤った営業は「機嫌良く受けてくれた(実は無茶振りなのだが)」と、
勘違いする悲劇があるのだ。
「技術的には可能だが、私は機嫌が悪いのでやるやらないは選ぶ」
が抜けてるんだよな。


さて、
こうした齟齬が、以下で起こっているようだ。
https://x.com/oha_oha_Ohashi/status/1738903832787369995?s=20

このDiscordでのやり取りを見ていたが、
別にみんな親切に問題の切り分けを、
分かるところからアシストしていたように記憶してるんだが、
「問題の切り分けをする」ことが、
「そんなことも知らねえのかよ」に、
一般社会の人には感じられ、
袋叩きにあったように思えたのかも知れない。

ほとんどは、「そこじゃねえか、じゃああそこでは?」
と、問診を繰り返して原因を追い詰めてるだけなんだがね。

エンジニアリングとはつまりエンジンをイメージすればわかりやすく、
故障や問題は、どこかのパーツとパーツの噛み合いの不具合を、
突き止めて、正しいものにすれば解決する。
それを、一つ一つ部品点検するために、
分野に分けて突き止めていくことが、
問題の切り分けである。

そういえば、
一般社会では問題の切り分けをほとんどしない。
「問題があったら部署ごと切り捨てる」だね。
日大アメフト部で、
クスリをやってた人と、やってない人を切り分けることをせず、
まるごと廃部にする、という、
臭いものには蓋をする。

たぶん、一般社会人は、問題の切り分けをほとんどしたことがない。
だから、
自作キーボードが動かないなら、
まるごと捨てるしか選べないのだろう。

「それはここを修理すれば直るのに」
ができるには、「全体のパーツがどう噛み合って働いてるかを理解する」
が必要で、
それを知らない初心者は、
オールオアナッシングなんだろう。


マクロパッドは製作の簡単さから、
初心者にオススメのように言われているが、
僕は違うと思っている。
レツプリあたりの全部入りで、
一通りパーツがどう動いてるかわかれば、
マクロパッドなんて屁のようになるのにな。


また、
理系には、
「間違えた原因、正しくはこうでした、
私は○○をこのように誤解してたので出来なかったが、
○○が○○であると理解できたので、
うまくいきました」
とレポートする文化がある。

これは、似たような問題が出た時に、
「分かりにくいから改善しよう」
の着目点になるわけだ。

これはクレームでもなんでもなく、
分からないということを分かったレポにすぎないのだが、
これは一般社会では、
「クレームによって明日には改善しなければならない」
になってしまうんよね。

また、だから、
「クレームを入れたのに、改善しないから変」
という誤解にもなってしまう。


そんなのはしらん。
技術は技術で動いているのだから、
それにキャッチアップしてくれ、と理系は思う。
分からないところを教えてくれれば、
もちろん技術者として教えるよと。

技術者は、「そのレベルでの理解しかしていない」
がわかれば、
そのレベルに噛み砕いて解説できる。
質問攻めにするのは、そのレベルを知りたいからだね。
「お前はそんなことも知らんのか」という説教ではない。


そのような、
理系特有の文化は、
一般社会では知られてなくて、
だから一般社会から、理系はキモイと思われる。

オタクが早口で説明するのも、
最短手順で話したいからだね。

絵を描く人の世界は、
一般社会よりもっと奇妙で、
技術を一切知らずに来た、感性だけのもろい一般人だね。
だから、
絵描きとエンジニアは真逆なんよな。
(最終的にはダビンチ的に融合するだろうけど)

なので、齟齬はさらに大きくなったんだろう。
絵描き用のマクロパッドは、
絵描きが作りやすいようにしたいものだけど、
技術者が作ったようなものは齟齬がありすぎるだろうな。

(ゆかりさんのクリエイターパッドが、
一番使いやすいのでは。今からは買えないだろうが)


僕は理系にいたので、
cに必要なファイル構成とかがわかるから、
rev2がないっていうならそのディレクトリのどっかにあるやろ、
トップ下にないからそこに移動するか、
待てよ、今の構成のやつ、
念の為にコピーしとくかな、
くらいの知恵は働くが、
かの人はそんなことも知らないと思う。

そして、かの人は一般人なので、
「どこが分からなかったかのレポート」もしてくれず、
我々技術者はモヤモヤしたままで、
互いに不幸なのだ。



(追記)
ぺらねこさんご本人のツイートも見かけたので温度差を見ておこう。
> 自作キーボードは私のなかでコミュニティに参加し、コミュニティに育ててもらい、コミュニティをそだてるがわになること、とか、githubを使えるようになり、プルリクやissueをたててコミュニティに貢献できるところが(プログラマ的な)成長を促すと思っていて、それを醍醐味としている。

プログラマとしては間違っていない。
だけど、
githubを使うことやプログラマであることが必須であることが、
自作キーボード入門の必要条件とも思えない。
絵描きとは、githubもプログラマも知らない。
だとしたら、それなしでも成立するコミュニケーションか、
githubを使えるプログラマになってからまた来てくださいというべきかの、
どちらかであるべきだったろう。

前者のフルサービスをするべきかは、
商売人としてのコスパがあるだろうね。


(追記2)
ご本人のツイートから。
> 普段の仕事の『客からお金をもらっている責任がある上、信頼にもかかわるので商品に絶対に不備があってはいけない。万が一不備の指摘があった場合は深く謝罪し即修正すること』の認識ミスの続きだけど、個人販売ならともかく遊舎工房なら「商品」として流通させているものだからと認識が甘い所があった
この人の仕事がどのようなものか知らないが、
このクオリティが必要なのは、
食品や乗り物や医療など、命に関わるものに限ると思うんだよね。
もちろん自作キーボードも感電する事故くらいはあるだろうが、
そこまでする理由がない。
もしこの人が命に関わらないがこのサービスを要求する会社にいるのなら、
ずいぶんブラックな企業だなと思った。

あるいは、モノを自分で作ってない会社か。
モノを自分で作らないようになると、
「不備は自力回復できる」を知らなくなるので、
「不備があった!どうしよう!」とオロオロして、
土下座しかすることがなくなるんよね。
だから、何も出来ないくせに下に偉そうになって、
何もできないから上にへーこらする。

あまりいい会社にお勤めのようでないなら、
モノづくりをする会社を視野に入れてはどうだろう。

そこはもっと創造的で、DIY的だ。
「ねばならない」を脅迫せずに、
「だといいのにな」で動いてる世界だ。
posted by おおおかとしひこ at 10:41| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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