2024年02月24日

4フェーズメソッド

というべきものを考えたので。
三幕構成に至る前の妄想段階として、使うイメージ。


全体を4つに割る。
それは一幕、二幕前半、二幕後半、三幕だ。
何も新しくはない。
三幕構成理論の、30分ずつを区切ったものにすぎない。
それでも3というより4に区切っているところが、
まあ新味があるかもしれない。

これはつまり、ストーリーを構想するにあたって、
部分と全体を行き来して、
全体をつくる為の方法論である。


まず最初に、一幕を考える。
どういう始まりか、どういう事件なのか、
そしてどういう関わり方で、
主人公はこれの解決に乗り出すのか。
ここでセンタークエスチョンが決まるとさらによい。

キャラクターの素性、目的、背景、
キャラ設定をすることもあるだろう。

次にするべきことは、
クライマックスの三幕を考えることだ。
つまり、ゴールを先につくるわけ。
どういうビッグビジュアルになるのか、
どういうバトルがあるのか、
何を競って戦うのか、
勝利条件は何か、その最大の障害(相手)は何か、
などを妄想する。
やったー、勝ったー、というのがゴールイメージになるだろうが、
それはどういう場面で、
どういうことをして勝つのか、
ということを考える。

もちろんこれはのちのち変わることもあるだろうが、
少なくとも最初にこれを考えておくことは有効だ。
なぜなら、
それがセンタークエスチョンになるからだ。
一幕は、これをゴールとして始まるわけだ。

このとき、テーマがおぼろげに出てくるかもしれないが、
まだぼんやりとした妄想だから、
そこまで明確になっていないかもしれない。
まあなんにせよ、スタートとゴールは決めておくわけ。

次に、間の2と3、二幕をふたつに分けて考える。

非日常世界とは何か、
主人公の冒険の舞台を妄想するわけだね。
そこでやってくる具体的な敵や障害を考えてもよいだろう。
(シド・フィールドは障害は4つ、
と規定したけれど、別に何個あってもよいよ。
足りなくてもよい。どうせあとで整理できる)

たぶん、いろいろ考えても2フェーズを埋めるだけのネタをつくることは難しい。
なので、
二幕前半を快進撃、
二幕後半をつまづきからの再逆転、
のように大文脈を想定して考える。

快進撃に必要なものは何か、
どういう障害をほいほい超えていくのか、
という大きな文脈を考えて、それを第2フェーズとして、
ミッドポイントでかりそめの敗北をして、
そこからどん底におちて、復活するためのフェーズ3を考えるとよい。
どん底とはどういう時間帯か、
どこでどういう敗北をするのか、
そこからどういう大逆転をしてクライマックスへ行くのか、
なんてことを考えると、大体埋まるのではないだろうか。

これは、
埋めるためにある。
フェーズ1234が、
全部そろっているか?
ということを確認するためにある。
たぶん、全部出来ていないだろう。
でもなんとなく、全体がひとつのストーリーの形になりつつあることを、
確認するための妄想のメソッドだ。



大体できたら、
1フェーズごとにA4白紙一枚をかけて、
そこで妄想を爆発させてメモをとろう。

登場人物はしゃべるかもしれないし、ビジュアルのメモが出来るかもしれないし、
ストーリー展開のアイデアや、
対決のアイデアが出来ることもあるだろう。
なんでもいい。
流れをつくることになるかも知れないし、
散発的にサブプロットを思いつくこともあるだろう。
それでよい。
まだプロットにまとめる段階じゃない、
これは妄想をつくる段階である。

これを4枚分やろう。

どの4枚も、
同じ展開にはならない。
大きな文脈がちがうからだ。

1は事件が起こり、日常の主人公が巻き込まれて、
ついに解決に乗り出す流れだし、
2は非日常の文脈になって、快進撃をする文脈だし、
話の広がるサブプロットが生まれるし、
3は失敗や敗北があって、どん底までいき、
どうにかして復活する文脈で、
サブプロットもどんどん絡んできて、
4は何かをかけた最高のクライマックスの文脈で、
最初に決めたゴールイメージにむけて、
ずんずんと進んで紆余曲折する文脈である。

それらを妄想しているうちに、
主人公だけでなく、
別の登場人物のサブプロットが形をなしてくるだろう。
ただの一本線じゃなくて、複数のラインが走り出すと思う。
敵の話でもいいし、味方の話でもどちらでもよい。
それらがメインストーリーに対して、
和音のように響くようになるに違いない。

これはまだ書きなぐりでよい。
どうせ思いついてまた変わることになる。
どんどん書き直すために、
メモとして残しておく段階だ。

設定は時々刻々と変わると思う。
これが必要になるから、こういう設定にしておくか、とか、
ご都合を処理するための前振りを思いつくこともあるだろう。

キャラクターが生き生きしてきたら、
適当にセリフをいわせてもよい。
4つの文脈では、言うことも変わって来るだろう。
あるひとつのフェーズでしか生き生きしないのならば、
別のフェーズでこいつは何をしているのか、
妄想することだ。

どこのフェーズでも生き生きし始めたら、
だいぶストーリー全体が見えてきた証拠だ。



妄想というのは、たいていごく短い間しかでてこない。
下手したら一場面が限界のときがある。
だから、
ストーリーとしてつながるように、
4つに割っておいて、それぞれの文脈で出てきやすいようにする、
というのがこの4フェーズメソッドのやり方であるといってもよい。

で、足りないところはどこかな?
と、4つを比較できるのが利点だ。


4枚の紙に、同等にアイデアが出てきたら、
次の段階、頭から最後までプロットを一気書きする、
に進むといいだろうね。

あるいは、ブレイクシュナイダーのカード法、
10枚のカードに何かを書いて、
40枚で一本になるように、
足し引きしてもいいだろう。

あるいは、
Aという流れだけ、Bという流れだけがあり、
間のCが抜けていることがよくある。
だからそこを考えて、
Aの終わりからBの始まりに繋ぐにはどうすればいいか、
という妄想をすることもやると良い。
そのうち全体がつながりをもち、
うねり始めるはずだ。

逆にその段階がないと、
関連のある流れとしてのストーリーは難しいし、
どこかでブツ切れになってしまうだろうね。



センタークエスチョンの解決まで、
辿り着けるかな?
主人公にそこまでの動機がまだないこともある。
じゃあ、
なんでそこまでゴールしたいんだい?
と問うて、それにふさわしいエピソードや設定を思いつくことだね。
他の登場人物についても、同様だと思う。


こんな風にして、
まだ断片的なアイデアたちを、
一本のストーリーに仕立て上げるための妄想をたくましくする段階が、
この4フェーズメソッドだ。


断片的なアイデアというのは、
各フェーズで偏っていることがある。

たとえばフェーズ1と2は一杯妄想がはかどるが、
3が出来ない、なんてこともある。
1と4はいろいろ出てくるが、23がでてこない、
なんてこともよくある。

ストーリーの質や作者の資質にもよるので、
何がどうとは何もいえないが、
出来たストーリーというのは、
どのフェーズも出来がいいものだ。

だから、はじまり、途中、途中、おわり、
という4つのフェーズにおいて、
どういう妄想やアイデアがあると面白いだろう?
と4枚の紙で別々に考えると、
妄想が発達しやすいね。

別のフェーズで思いついたものを、
別のところにもってきてもいいよ。
そこが足りなくなったり、
有り余ったものが削られてちょうどよくなるかもしれない。
全体を見たときに、どこか手薄なところがないように、
アイデアの群れを調整することもしてもよい。

とにかく、
どの段階でも常にアイデアがあるようになっているなあ、
全体はこういう流れだなあ、
というのが出来るだろう。
そうしてはじめて、
テーマやこのストーリーになんの意味があるのか、
考えてもよい。
もちろん、途中で決まることもあるかもしれない。
だけど、
大体全部が出そろって、このストーリーになんの意味があるのだろう、
と強く思うものだからね。
そして、それがなんとなく出来たら、
それに合うように、
また全体を整えなおしても良い。
設定を変えてしまったり、
順番や立場を変えてしまってもよい。
まだプロット前の、
妄想段階、ということを忘れてはならない。


もちろん、
こうしたことは頭の中でやるのが、
一番可塑性が高く、いろいろ変更しやすい。
しかし、
実の所、4つのフェーズを等価に妄想できてないことが多い。

なんだ、序盤しか考えてなかったわ、とか、
クライマックスは豊かに考えていたが、途中が全然だった、とかね。
妄想はどの段階でもするべきであり、
そのアイデアが足りていないところは、
いずれ執筆で詰まるに違いないからね。

そもそもそのゴールでいいのか、とか、
全体が見え始めてきたら、
またゴールを再設定することだって全然ある。
クライマックスを全然描き直しても良い。

そういう可塑性の高い段階での、
やり方がこれだ。
だから、メモは何枚書いてもいいし、
書き潰しても構わない。
また新たな白紙を出して、
整理しなおしてもよい。

なんとなく、全体が見えてくるまで、
これを繰り返していこう。
4枚のメモをつくるために、
100枚使うかもしれないし、10枚くらいで済むかもしれない。
それはストーリーによる、としかいいようがない。


なんか妄想はある、しかしまだもわもわして、
形になっていない、という状態のときに、
こうした4フェーズメソッドは有効だ。

なんだ、ただの設定だけしか考えていなくて、
それに反応したドラマが足りていない、とか、
テーマがあやふやだから、
展開がそれに応じていないなあ、とか、
どんどんぼんやりしたものに突っ込みが入れられるはずだ。
そうしてよりイメージの詳細を詰めていくのに、
この方法論は使える。


そして、
全体が見えたときに、
「これって面白いのかなあ」という客観性はとても重要。
面白くないなら、面白くしてみせようホトトギスなわけだ。

そのためのアイデアが出てきたら、また妄想4枚を書き直してもいいくらい。
書き足してもいい。やり方は自由。

そんな風に自由にストーリーを泳がせるための、
これは方法論だ。

いきなりプロットを書くと、
どうしても不備が出てきて、
そこで文章テクニックでごまかしてしまうことがよくある。
だから、その漏れをチェックするためにも、
こうした段階を踏んでいくことは、
とても重要な気がするんだよなあ。
posted by おおおかとしひこ at 07:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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