2024年03月24日

物語とは奇跡を描くことである

奇跡なんてめったに現実では起こらない。
だけど物語ではしょっちゅう起きている。
奇跡はビジネスになるからだ。

「〇〇と過ごした奇跡の七日間」とか、
「奇跡の一瞬を見逃すな!」とか、
奇跡ビジネスこそが、物語の核心かもしれない。


さて、
ではどういう奇跡があるんだろう。
事件の解決である。
つまり、
一見解決不可能な無理難題を、
奇跡的に解決した凄腕チーム(ないし個人)の話が、
物語なのである。

じゃあ、
単純にスペックが高い人たちが、
難題を解決したら奇跡かというとそうではない。
それじゃ奇跡ではなくて、日常になってしまうからだ。
スペックが高い人たちが一見難しいものを解決することは、
スペックの低い人から見れば奇跡だが、
高い人から見たら「ふつう」でしかない。
それは奇跡詐欺だ。

そうじゃなくて、
どんな人が見ても奇跡に見えなければ、奇跡はビジネスにならないわけだ。
(弱者をだまして奇跡ビジネスをやるものに、
新興宗教、投資ビジネス、情報商材ビジネスがある。
映画はそれと一線を画すべきだ。
ただし、イケメンで麻痺している女子をだまして儲ける、
少女漫画実写化ビジネスは同じ匂いがするね。
まあイケメンがイケメンであれば奇跡だと思う人たちが対象だからなあ)

さて。
じゃあスペックが高い人たちだけが集まっても、
それだけでは何もならない。
「そんな彼らでも難しいミッション」が必要なんだよね。
普段から色んな無理難題を解決している凄腕チームでも、
今回だけは無理だろ、と思われる、
とても難しいファイナルミッションが、
必要になってくるわけだ。

それは、とくに主人公が、
人生が台無しにする可能性のある危険な橋を渡らなくてはならない、
ということだ。
命がかかってもいいし、社会的生命がかかってもいいし、
自分のアイデンティティそのものがかかってもいい。
内面に隠していたものを晒して、
それを克服しなければならない、
という風になってもよい。

そういう、高スペックでも難しい、
そのスペック以外に必要なハードルがあるから、
無理難題は成立するんだね。
そしてそれを超えるから、
奇跡は起こる、というわけ。

もちろん、ハードルの設定の仕方としては、
凡人がぎりぎり奇跡を起こして超える、
という物語もあり得る。
凡人じゃ無理だろ、というものでも、
それが必死な努力や偶然や必然で、
奇跡を起こすことだってあり得る。
多くの不細工男子が美女のハートを射止める話は、
たいていそういう構造になっているわけだね。


さて。
じゃあ、どんな奇跡を描けばよいか?
どういう解決なら奇跡的な解決になるか?
それをつくるのが、物語創作なのだ、
と考えるべきだ、
という話が本題である。

つまり、
奇跡的な解決になるぞ、
というアイデアがない限り、
ストーリーなど書けないのだ、
という話をしようとしている。


ストーリーはどこからつくるのか?
という問いがある。
キャラクターか、世界観か、問題設定からか、
解決する瞬間か、テーマか、
色々あると思う。
しかし、
「奇跡的な解決」という、
流れをつくれない限り、
クライマックスはつまらないし、
物語の価値などないよ、
ということを言おうとしている。

問題がある。
それを解決しなければならない(センタークエスチョン)。
そしてそれはいくつかの複雑な解決過程と展開をする(サブプロットや障害)。
そしてそれは、奇跡的な解決へと至る。
偶然ではなく、人の力の必然によって。
だから感動するのだ。

この流れをつくらなければ、
感動するっぽい形だけ真似して感動とか、
ガワだけつくって魂のないものになるだろう。

誰かが死ぬ話とか、
娘が結婚する話とか、
動物が死ぬ話とか、
友情と恋とか、
文化祭を成功させるとか、
スポーツ大会で優勝するとか、
通りいっぺんの感動話の、
テンプレだけだけになってしまうだろうね。
そうじゃなくて、
そのストーリー固有の奇跡が芯に一本通っていないと、
オリジナルなストーリーとは言えないだろう。

じゃあ、その奇跡とはなんだ?
どうつくる?
それが作家性なのだ。

だから教えることは出来ない。
必要条件であることだけ言っておく。
物語とは、
奇跡的な解決をするべきで、
それが一見できないような無理難題がセンタークエスチョンで、
それを成し遂げた原因こそが、
テーマになるのだ。

とても簡単な構造なのだが、
いざつくるのはとても難しい。
だから、面白い物語はレアだし、価値がある。
つまらない物語はここが出来ていないことがとても多いね。
posted by おおおかとしひこ at 00:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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