2024年02月09日

【薙刀式】タイピング、ダンス、物語

「銃、病原菌、鉄」みたいな。笑

普通の人には一見関係ないと思われるこれらが、
実は一続きのワンピースである。

もりやんさんが長文でまとめてくれたので。


タイピングと物語の二極分析(1):オンバランス/オフバランス
https://note.com/catfist/n/n38fdf133f2cf
タイピングと物語の二極分析(2):リアクション/アクション
https://note.com/catfist/n/n3b51331cb6f7
タイピングと物語の二極分析(3):認知の物語/行為の物語
https://note.com/catfist/n/n75c56273d6d6

なるほど全貌が描かれた力作だ。
おつかれさまでした。

これらを繋げて考えてる人、
日本に何人いるんだろう?


僕はもともと手書きで実写の脚本を書いてきて、
qwerty+ヘボキーボードじゃ無理ってなって、
まだ自作キーボードがない頃から、
自作論理配列に変え始めて現在に至る。
物理も変えられると知り自作キーボードに入門して、
界隈では異色の物理キーボードと、
打鍵姿勢の追求をやってると自覚している。

それは全部、手書きの感触と、
既成のキーボードがあまりに体の使い方が違うから、
というのがこれまでの議論で明らかになったように思う。

僕の手書き=オフバランスでキャラの主観に入り込む、
撫で打ちのやり方は、
既成の打鍵法=オンバランスで上から打鍵する方法論と、
真逆ですらあったわけだ。

逆にいえば、世界初のオフバランス用キーボード、
打鍵環境(空中庭園バビロン)、論理配列(薙刀式)が、
出来た、といっても過言ではない。
(完成とはいってない)

もし僕の流派に近い人がいれば、
僕のキーボードを真似すればいいぞ。
そして薙刀式はいいぞ。


で、もりやんさんの文章に戻ると、
なんだずいぶん武術に造詣が深いではないか。
僕は1インチチャンネルはかなり見ているほうで、
武術チャンネルの草分け、黒帯チャンネルもずっと見てたし。

オンバランス/オフバランスというのはバレエの用語であったか。
武術的にいえば、
オンバランス…立身中正、八極拳、太極拳、空手、一刀流、ジャズダンス
オフバランス…蛇身鷹手、劈掛拳、酔拳、合気道、柳生新陰流、ブレイクダンス
くらいをイメージすればいいか。
(ブレイクダンスの大元は地尚拳で、それと同系統が酔拳だ)


ジークンドーのストレートリードは確かにオフバランスの極地で、
フェンシングの技法とほぼ同じだ。
(フェンシングに石井東吾が挑戦する回が、
その本質を理解できる)
ところがブルースリーのルーツである所の詠春拳は空手系で、
オンバランス技法がメインなんよね。
その寸勁(ワンインチパンチ)は、
突き詰めればほとんど八極拳と同じの前足発勁。
(対照的にストレートリードは後足発勁)

だからブルースリーの武術、ジークンドーは、
ルーツのオンバランスに、
モダンのオフバランスを取り入れた、
元の武術を作り替える体系で、
だから破門されたんよな。もはやウチではないと。

加えてブルースリーはダンス(チャチャ)で優勝したこともある、
ステップワークの達人でもあった。

だからブルースリーのバランスとしては、
オフバランスメインで、時々オンバランス、
という体感覚なのであったろう。
ジークンドーの人が、
ワンインチパンチを「あくまで大道芸」と割り切ってるのは、
オンバランスメインの武術ではないので、
という意味だと思われる。

ヒロ渡邊も石井東吾もスパーリングでは、
ステップワークメイン、オフバランスメインに見える。
ボクシングやフェンシングに近い。
ストレートリードだけでなく、
フックもボクシングのようにオンバランスで打つのではなく、
体を流しながらオフバランス+弾勁
(貫く系ではなく、鉄球をぶつける感じ)で打つやり方だ。

(ただこれも見せ技の可能性もあるからね)



さてこの時、
重心はどこに置くか?という話がある。

オンバランスの武術は足心、
つまり湧泉のあたりに取るだろう。
足刀や踵派もあると思う。
一方オフバランスは、親指の付け根に取る。
バスケシューズが一番すり減るところだ。

ようやくタイピングに戻ってくる。

「手首はどこに置く?」が、
僕がこのことを考え始めたときから、
ずっと疑問だったことなのだ。


僕は手首の小指側の骨、
いわゆる小天星(掌打で打つところ)をつけて、
キーを撫でるように打っていた。
パンタグラフであるMacのMagic Keyboardを使ってたからだ。

ところが本格的にタイパーの打鍵法を見たり、
親指シフトを見たりしていると、
「手首は浮かす」らしい。

タイパーに関しては実際にRTCを生観戦しに行ったけど、
手首つけ派はほぼいなかった。
なるほど、手首をつけてたら遅くなるし、
スピード重視はそうなのだなと理解する。
いわばオフバランスなんだなと。
じゃあ肘はどこに?となると、
椅子のアームレスト、ないし、机のヘリに前腕をつけている人が多かった。

親指シフトも教科書では手首を浮かして、
手首を机に置くときは「休むとき」らしい。
パームレストは使うが、レスト用であると。

なるほど、スピード重視派はオフバランス=手首を浮かすのかと。


だけど研究すればするほど、
疲れね?が出てくる。
手首つけないと、一時間とか無理でしょと。

で、結局気づくのだ。
僕の打鍵法は、手書きの再現だと。
つまり、手首の小天星を机(紙)につけて、
そこから先を水平回転運動させて字を書く筋肉で、
タイピングしてるのだなと。

どうもこういうタイプは少ないようだ。
キーボードの教科書的な、
手首を浮かせて、ホームポジションに指の重さを預けて、
指を突き下ろすような、
ピアノ的打鍵法が主流らしい。

そういえばyfukuさんはこの典型で、
指をホームポジションに置いとかないと気が済まないらしい。
だからキー荷重は重めの60gで、
最初に使ってたのはGateron Ink Blackだったよな。
そしてたどり着いたのは、お椀型のGravity Keycapだった。

おそらくピアノ打鍵法の最適解はこのへんだ。
だけど僕は3Dキーキャップを研究して、
最後にはそれを捨てて、
撫で打ち用のドームキーキャップ+30gに辿り着いた。

それは結局、手首を置き、
それを中心に平面に回転させる動きという、
手書き的な手や指の動きに、
合わせたかっただけなのだ。
(余談だが、オールコンベックスのDSAタイプだと、
その高さでは親指が窮屈なんよね。
だから親指より他の指を上にあげたくてドームにした)


整理する。

僕の打鍵法は、
手首をつけて、
ホームポジションに構えるが、キーには触れない。
(だから親指12gでもうっかり押すことはない)
手を置いて考えるときは、手首に重心がある。
あとは言葉が出てくれば、
それらを一筆書きにする。

つまりこれはオフバランスの打鍵法であるが、
タイパーのような豪快なものではなく、
手首より先をオフバランスにコンパクト化したものだ。

いや、でもみんな手書きでこうだよね?
ペン先を紙につけて考えないよね?
ペンや鉛筆ではそうするのに、
なんでキーの上に手を乗せるのか、僕にはちょっと分からないのよね。

だから僕は、
腕は姿勢維持にしか使っていないと思う。
腕の力は紙に書く時に使わないのと同様だ。
(たぶん手書きの文字が下手な人は、
腕の力を使ってしまってるからでは?)

この姿勢をつくるために、
「机面より低く手首を固定すること」が、
バビロンの答えだったんだな。


昔コロコロコミックで「轟け!一番」という、
受験漫画があって、
主人公一番は両手利きで、
右手と左手で別々に答案を書く、
「答案二枚返し」が必殺技だった。
僕はそんな感じで左右分割キーボードを使ってるのだろう。

だから、最小の動きにしたい。
流れの動線を最小にするために、
薙刀式の動線を煮詰めているわけだ。


狭ピッチにすればいいのでは?
と思ったこともあるが、馴染まなかった。
撫でる動きにはある程度バッファというか遊びがないと、
ブレーキエリアがないのだと思われる。
短ストロークの方がいいのでは?
と思ったこともあったが、馴染まなかった。
遊びがないとしんどいのかもしれない。

撫でる動きは人体の関節の構造上、
かならず曲線を描く。
直線では動かないので、
遊びがないと吸収できないのかもしれない。

そうそう、僕は書道は師匠について学んだわけじゃないけど、
線の太さ細さは力の入れ具合じゃなくて、
3次元軌道の低い高いにすぎないと考えている。
つまり軌跡は常に三次元的曲線で、
それを二次元平面で切り取ったのが書道にすぎないと。

そして薙刀式は、
膠着語の一単位
(話題の語+繋ぎの語。一文節〜一文程度)を、
一筆書きのように出来る配列である。
書道的感覚で書けるのがいいよね。


そして、
それは結局、
「手書きで脚本を書いてきた」ことと、
とても関係していたのだ。

昨今の邦画の脚本がつまらないのは、
手書きを離れて、間違った道具を誤って使い、
行為的物語であるべきところを、
認知的物語にしてしまったことにあるのかもしれない。



もりやんさんの記事中の疑問点を晴らしておく。

> ステップからのストレートリード。カタカタカタカタダン!というか。

逆なんですよ。
語頭が強く、その勢いを活かして語末までいく。
ダン、カタカタカタカタ…スッ(指を上げる)
みたいな。
筆書きも第一画が強めなのと同じ。
「最初に強めで当たって、あとは勢いでお願いします」ってやつ。


> 余談だが、手書きの姿勢を実演してもらった時、大岡さんの左手は遊んでいるように見えた。本来、少林寺拳法における左手はリアクション(防御)を担当するモジュールなのではないだろうか?)

たぶん左手はスタビライザー代わりかな。
フェンシングの突きでも、左手は引いて右を出すために作用する。
武術では陰陽手とか夫婦手とかいって、
左手で掴んで引いて右手で殴るとか、
単に右手で殴る時も左手は引き手を取る。
それは、左手の引きで右手を加速するためだ。
肩回転を使う場合もあるし、
内部的な筋肉だけでやる場合もある。

なので手書きで右手一本で書いてるように思えて、
左手はバランサーで引き手を取ってるのだろう。
あくまで右手一本で世界に切り込むための、
加速装置なんだろう。
そうそう、このために、僕右足前左足後ろで、
半身で椅子に座ってることが多いです。
半ケツ痛くなるのでたまに逆にして、
左手を伸ばして右手を手前にして書くこともある。

そういえば、そのために部屋では靴下履かないのよね。
足の感覚がないと書けないっぽい。
だから畳必須。板間は寒い。
一青窈がライブでも裸足って聞いて、わかるって感じ。
外で書くときも、
緩めの靴下+素足に近いカンフーシューズ常用してます。



身体感覚を言語化することは大変難しい。
だけど別の身体感覚があれば、
それを手掛かりに自分はこうだと対比的に理解できる。
だから武術の交流は重要なんじゃないかなー。

とりあえずもりやんさんと僕はこのように対比的であったが、
別の人とはまた別の対比があるかも知れない。

物語を書く人と、プログラマーと、新聞記者では、
絶対違う気がする。


そして、これらの身体感覚の違いを論ぜずに、
何も考えずメンブレン109キーボードをつくっていた、
無知の家電メーカーは、
言語活動を著しく低下させた罪がある。

無知を謗っても何も生まれないので、
我々は次の道具を自力で生み出すしかなさそうだ。

暗いと不平をいうよりも、
進んで灯りをつけましょう。
発明とはそのようなものである。
posted by おおおかとしひこ at 05:54| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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