2024年02月18日

【薙刀式】永字六法

書道の基本だね。
「永」という字には、書道の基本が詰まってる。
点、ハネ、左払い、右払い、縦画、横画、と習った。
調べると永字八法もあるらしい。
中国の方法で、なんでも八にしたがる中国っぽいな。

で、タイピング六法みたいなのがありそうだな、
という話。


自分の打鍵を観察していると、
撫で打ちメインとは言いながら、
それだけではないものもあるような気がしている。

そもそも「撫でる」動作は、
指が目的の場所にいない時に、
指を曲げ伸ばししながら、
あるいは手首の小指側の骨を支点に手首を回転させながら、
あるキーへ指を伸ばしているとき、
Z方向(高さ)の変移よりもXY平面(水平面)の変移が大きいから、
打つというより撫でるっぽいな、
という事から生まれた言葉だ。

ホームポジションに構えているとき、
Jを撫で打ちするかな?
単に一文字だけ打つなら、
撫でずにそのまま押し下げた方がエネルギーは少なさそう。
だけど、たとえばJIを打つことが事前に分かってれば、
中指を伸ばす力を使って、
Jは斜め右上に撫でながら打ち、
その勢いでIも右上に撫でながら打つだろう。

JIは最強のアルペジオのひとつで、
薙刀式では「ある」が当てられている。
こうした、撫で打ちでの連接で、
日本語のよく使うフレーズが当てられているのが、
薙刀式の特徴だ。


たとえばこのあと、
手が上段に開放されたから、
再びJを打つよりも、人差し指はUを打つ方が速い。
この時、奥に撫でるようにUを打つだろうね。
人差し指の中で、JUの動きが繋がってるからだ。
それが事前にわかっていれば、
Jは右上に撫でずに、次のUを目指して撫でるだろう。

こんな風にして、
撫で打ちとは、
「他の指や手との軌跡」「前と後のその指の繋ぎ方」
に影響を受ける曲線である。

タイパーたちは「打鍵組み立て」なんていうけれど、
一連の手の動きを想像してから動くらしい。

僕はそこまで考えてなくて、
よく打つ言葉なら無意識にシークエンス化してるだけだろうね。


同じキーを打つにしても、
前後関係によって撫でる方向が違う。
オールコンベックスキーキャップは、
まさにそれを意識して、
どの方向にでも撫でられるように考えたものだ。


だけど、撫で打ちと言いながら、
撫で的でない打鍵もある。

たとえば、
そこに指が置いてあった時の単独打鍵(上の例)、
次に人差し指伸ばしキー(右手だとHN。Yは不使用)へ行くときの他の指の打鍵、
人差し指伸ばしキーから通常ホームポジションに戻る時の打鍵
下段→上段に行くときの下段、
なんかは、
わりと強めに下に押す感じになる。

ステップワークでいうところの、
急激なターンのきっかけみたいな。

こういう時は、
割と強めに打ち、
その力を使って撫での軌道を変えて、
次の撫で軌道へ行く感覚がある。

いろは坂配列では「折り返し打鍵」と呼んでいた。
打鍵列がなるべく内→外へ、外→内へ、
と流れるように設計するパターンと、
内→外→内など、ジグザグに打つ打鍵を、
組み合わせていたはず。
そのターンをなるべく外のキーに置いて、
そのジグザグがいろは坂に似ていたのが名称の由来。

薙刀式では、
なるべくこのターン、折り返しが、
語頭や文節の切れ目に来るようになっている。
だから、基本撫で撫でしていて、
たまに強くターンのキックが入る感覚だな。


あともう一つ強めの打鍵があって、
それが「現在の指の位置から始まる言葉の語頭」。
これはいきなり撫でられないから、
きっかけのキックを作るんだろう。

たいていホームポジションのカナから始まる言葉で、
ホームポジションのカナは頻度が高めのを集めてるから、
自然と多いことになる。


習字にたとえれば、
始画、曲げはやや強めに、
その他は撫でて、
終画は大抵払いっぽく柔らかい。

そんな感じが薙刀式の、タイピング六法だろう。
(6ないけど)

で、それをやりやすくするための、
オールコンベックスキーキャップ→ドームキーキャップと、
指の当たる面が進化してきたんだね。


そうそう、以前自キアドカレでも書いたけど、
指の腹は、指を伸ばして揃えたとき、
掌を真下に向けると各指は違う角度を向いてるんだよ。

中指が真下、薬指、小指は徐々に内側回転、
人差し指は逆方向に内側回転していて、
ここから指を曲げると、
どの指も内側に徐々に回転しながら曲がる。

これは、球のようなものを掴めるような、
関節の形になってるということ。

その、指の角度に合わせて触れるように、
ドームキーキャップは球型になっているのだ。



もりやんさんのTwitterから。
> 語頭が強打って、大岡さんそれ撫でてんじゃなくて登ってんじゃないの? 純粋な撫で打ちなら、手首つけるのもプレトラベル縮めないのも不思議な話なんだよね

語頭が必ずしも強打になることはないけど、
なるとしたら語頭、という感覚は、
撫でるはずみ車の、最初の勢いをつけるためのものっぽいな。

手首をつけるのは、あくまで軸足(支点)を固定するため。
そして全指は常に浮いていて、
ホームポジションにすら触っていない。
打つ時だけ接触するので、
手首をつけて支点にしてるっぽい。
もちろん無意識にはホームポジションに指を触れてて、
そのキーが語頭に来る時、
一回指を浮かせて叩くっぽい。

(この「浮いてる指」は、
同時打鍵配列の癖かもしれない。
押したらなるべく離すのを意識すると、
離しのほうが重要になるので)


トラベルを縮めるのは昔散々やって、
プラ板を仕込んで、
アクチュエーション0.8mm、
フルトラベル1.5mmくらいまで詰めたけど、
(それ以上詰めるとチャタリングが増えた)、
3Dキーキャップとの相性が悪かった記憶がある。

3Dキーキャップが結局鉛直に落ちるわけじゃなくて、
斜めにこすれながら落ちるから、
キースイッチの擦れ感がないスイッチを求めて、
フルウムピエのPealio→HPEのBlue Sky→HPEのTecsee RAW
にたどり着いた。

Pearlioの底打ちの、わざと反発させてる感じが気持ちよくて、
底に真鍮を仕込み、
さらに底打ちを気持ちよくさせたので、
トラベルが多いのはあまり気にならないかなー。
そもそも30g+摩擦少ないので、
触ったら即底まで行くんよね。

よほど撫でが上手く行ってる時は、
底打ちをしなくなるので、
今逆に戻りの振動を気持ちよくする方向で、
工夫してる感じ。

底打ちの真鍮は質量が多いほど気持ち良いので、
ボトムハウジングを金属で作れない限りは、
ハウジングに真鍮を仕込んだとしても小さくて意味なさそう。

という感じで、
底打ちは、打鍵が調子良くなればなくなるし、
そもそもHPEの滑りの良さで、
プレトラベルが0.5mmでも2mmでも、
あんまり変わらない気がする。

あ、そもそもトップハウジングの戻り部分に、
現在は真鍮+養生テープMODなので、
プレトラベル1.5mmくらいにはなってるかな。


たぶんこれは3Dキーキャップを使ってるからで、
仮にMagic Keyboardが、
分割格子配列かつ球形になってたら、
0.5mmプレトラベルでいいのかもしれない。

で、
昔chocで3Dキーボードを設計しかけたんだけど、
chocの打鍵感よりも、Pearlioのほうがいいよな、
と思ってやめた。
HPE素材でのロープロか、
Magic Keyboardの打鍵感の軽めスイッチが出たら、
プレトラベル0.5mmの球形を作るかもしれない。

X-switchが出た時に少量買ったんだけど、
重たかったんよね。
バネ切れば軽くなる構造でもなかったので、
仕方なくchocで作り始めたらPearlioが出たんよなー。


ということで、
MX系のスイッチの進化のほうが速かったので、
ロープロ系には今は興味がない。
Lofree Ghostもいいけど、
POM系の擦れが気持ちいいのは、
現在のHPEの擦れすら感じないのに負けてると思う。
Tecsee RAWから見たらGhostすら擦れてるからね。
あとはストロークや低さと、どっちを取るかなんよな。


というわけで、
現在は、
タイピング六法+全方向撫で打ち対応のためのドームキーキャップ
+30gバネ+HPE素材のスイッチ
で対応してるって感じかなー。

軽くて滑るロープロスイッチが出たら、
乗り換えるつもりなのだが、
Ghostの次はあり得るのか?
(そもそも15g前後のバネを量産しろ)


このへんは、論理配列×タイピング法×そのための物理、
が絡んだ話になるよなー。

永字六法に戻ると、
漢字は筆という物理に最適化した文字だと思う。
文字が先か筆が先かみたいな感じで進化した。
タイピングもそういうループが今まさに起こってる、
ルネッサンス期じゃなかろうか?
posted by おおおかとしひこ at 09:05| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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