2024年04月18日

え、 は? はあ?

驚き方には色々ある。
その強弱について。


なんとなく、
弱い順から強い順に並べてみようか。


え、
えっ
えっ?
えっ!
えっ!?
えええ?!
はあ?
はあっ?!
はああああ?!
うそおおおお?!

最後の方はコントかもしれない。
コントとは感情を増幅して大袈裟にやることだ。

もちろん、
「え」「はあ?」以外にも表現の仕方はあろう。
上の表はあくまで例だ。


で、本題だ。
あなたのストーリーで驚くところは、
このどれくらいにあたるか、
という話をしようとしている。

最初のやつを驚きレベル1としようか。

驚きの量は前後の文脈から決まる。
レベル1で書いたということは、
その程度の驚きだとリアリティで判断した、
ということだね。


ところで、
起伏はなるべくつけるのが良いのであった。
ゆるゆるした坂よりも、
急激な坂のほうがアップダウンして、
気持ちのコントラストがつきやすい、
メリハリの効いたものになる。

ということは、
レベル1の驚きを、レベル2や3にできないか?
を試すとメリハリがつき、
強いストーリーになる可能性がある。


「妊娠してるの」
「えっ」

よりも、

「妊娠してるの」
「はあ?!」

のほうが、メリハリのついたストーリーになる。

もちろん、前後の文脈はあろう。
そんなことでそんなに驚かんやろ、
というリアリティを失ってもいけない。

だから、
メリハリのつくように、
前後の文脈を変えてしまうのだ。

設定の変更もよかろう。
「一生妊娠しない傷を負った、
ずっと子供が欲しかったのに」
という設定をうまく足せれば、
「えっ」じゃなくて「えええっ?!」
になるよね。

そういえば昔オーディションで、
レギュラー役に決定した女性が妊娠してることがわかり、
遠くまでロケに行かなければいけなかったので、
彼女が降板し、
再オーディションしたことがある。

「彼女妊娠してるらしく」
「お、おう、おめでとう」
としかリアクションしなかったけど、
たとえばロケ前日発覚なら、
「はああ?!ロケどうすんの!?」
ってだいぶ驚くだろうね。

前後の文脈で、
驚きのレベルはだいぶ変わるわけだ。
そして、
前の文脈では、
オーディションやり直しという比較的傷の浅い対処で済むけど、
後の文脈では、
飛行機ホテル全キャンセル(前日キャンセルだから全額払いだなー)、
スタッフ全キャンセルなど、
連絡関係が地獄になりそうだ。

そんなこんなで、
驚きとは、事態が動くぞといううねりの大きさに比例するわけ。

だから、
別に驚きのリアクション部分だけを書き換えても、
驚きの量が変わるわけではない。
前後の文脈、設定、事態のうねりの大きさが、
驚きの量を決めているわけだ。

これはクレショフのモンタージュ実験から明らかだ。

リアクションが問題なのではない。
それまでの文脈で驚きの量が決まり、
どんなリアクションをしたとしても、
いい感じにリアクションしている、
つまり文脈の量だけ驚いているように見える。

だから、
脚本で書き換えるべきは、
「えっ」を「ええええ?!」にする所ではない。
もっと前の設定やら文脈やらを、
書き換えるべきなのだ。

リアクションひとつとっても、
基盤ごと変えなければ、
リアクションなど変わらないってことだね。

リライトが難しいのは、
どこからどこまでをどう変えれば、
目的のこと、この場合驚きのレベルを1から3にあげる、
を実現できるか、
やる前から読めないところだよね。
だから、
やってみるしかないし、
経験がものをいうわけだ。

沢山書いてないと、
自分の作業量は読めないだろう。
出来れば最小の労力で書き換えたい、
と人は思うものだけど、
ツギハギになってしまって醜くなるなら、
根本からやり直したほうが背骨がスッキリすることは、
まれによくある。



さて。

驚きは、ストーリーを展開する上で、
とても良いスパイスになる。
適量を見極めて、起伏をつけていけばよい。

今回は驚きについて書いたけれど、
別の感情ポイント、
たとえば喜び、悲しみ、失望、怒り、いらつき、
正義感、好きと言う気持ち、嫌悪感、
などについても同様だろう。
驚きっぱなしの映画はない。
飽きてくるからね。
別の感情をなるべく入れて、
七色の起伏のジェットコースターにすることだ。

もし感情の萌芽があれば、
そこを伸ばしてもっと豊かにできないか、
と考えることは、
脚本をより良く改良することになるだろう。
posted by おおおかとしひこ at 00:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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