ノーラン節といえば、
「3つ以上で同時進行するものを順次カットバック」
だと僕は勝手に思っているが、
それを時系列をずらしてきたのが、
ノーラン節的には新しかったのかねえ。
でも実はこの文法自体は「パルプフィクション」以来、
散々擦られてきたものであり、
全然新しいとも思えない。
技法的には技巧的かもしれないが、
そこまでやったとしても、
なお結論がその程度かよって呆れてものも言えない。
以下ネタバレで。
結論がさ、
「世界を破壊する大変な兵器をつくって、
すいませんでした」じゃさ、
なにそれって感じだよな。
そんなの被爆国である我が国は知ってるし、
80年かかってようやくアメリカそこかよって感じだ。
じゃあ日帝も反省しろよな。
そのためだけに、
池の会話を伏せてたのに呆れてしまった。
チンケな悪役を馬鹿にしてたんじゃない、
もっと大事なことを話してたんじゃないか?
ってどんでんは実に爽快で、
思わず拍手しようと思ったら、
その会話の内容がそれかよ、
とずっこけて終わった。
同じこと、
たとえば大東亜は間違ってたよ、
などと東宝映画のオチで言えば、
韓国人は拍手喝采?
そうは思えないよね。
「今更形だけの謝罪?反省?
当事者ももういないくせに」ってなるだけじゃん。
原爆の父を題材にする以上、
この結論はむしろ予測の範囲内の大正解のひとつだから、
「なぜ彼はそう考えるに至ったか」
の方が重要ではないか?
なぜ核力がすごいのかの話も劇中ではなかったし、
なぜ核力が革命になるか、
たとえば核分裂の応用は原爆だけではなく、
原子力発電にこそ使われているわけで、
なぜそのようなことを取り上げてないのかがわからない。
単純に、科学に対する批評としてぬるいんだよな。
大統領が、
爆弾の発明者でなく、
落とした人間(=大統領)を恨む、
というくだりはとても良かったけど、
その後水爆や冷戦の危機と、
原発による電化社会(ネットやDXも含めてだ)の、
飴と鞭についての考察がなさすぎて、
原子力=原爆という単純化の頭の悪さに辟易した。
アホなアメリカ人むけ?
いや、そのわりには言葉が難しすぎて、
アホな人よくわからんやろ、
と思いながら見ていた。
つまり誰向けの映画?って思ったら、
ユダヤ人の英雄化プロジェクトの一本?
などと思ってしまうよね。
シンドラーのリストみたいなさ。
複雑なパズルを組んでまで、
やるべき答えがその程度かよ、
という失望だけが残った。
脚本技術的には、
みるべき所は嫁の造形だね。
あれはすばらしかった。
エロい女、
ダメな母親として描き、
最後はアル中?でありながらも、
夫の味方をしたのがとてもいい。
ただちょっと願望にすぎるかもね。
ノンフィクションで息が詰まってたときの、
作者の癒しパートに見えてしまう。
前から思ってるんだけど、
ノーランってゲイなのかな?
女の描き方が下手だと思うんだよな。
肉感的な女(花束を捨てる女)も、
オッパイそれでいいのか?もっといるやろ、
と思いながら見ていたなあ。
男と男の関係を描くのは上手いから、
ゲイ疑惑はずっと前から感じている。
キャリーアンモスに性欲感じないんよなー。
(マトリックス、メメント)
あとは俺ずっと気づいてなかったのが、
あの悪役がロバートダウニーJr.だってこと。
ずっとただのクソジジイだと思ってて、
でもなんだかずっと重要なポジションにいてさ、
ラストの公聴会終わって、
控え室でメガネを取った時、
「俺この役者知ってる。この目は見たことある。
誰だっけこのジジイ、かつて若い頃イケメンだった、
イケオジだな、たとえばショーンコネリーみたいな」
なんて思ってたんだが、
まさかのアイアンマンかよ!
いやー、すっかり騙されたわ。
すげえなロバートさんは。
今回の助演男優賞だな。
ジジイといえば、最後の表彰式の、
老けメイクすごかったなあ。
体が縮んだ感じがうまくできてて、
どうやったのかまるでわからなかった。
なんでもCGやAIでできちゃうから、
もはやそこで驚くことじゃないけどさ。
ここから批判しようか。
私たちはこの主人公がずっと好きになれない。
天才なのにその天才振りがわからない。
バカが脚本書いてるからだ。
最初30分くらい、ずっと予告編の切り貼りを見てるのかってくらい、
話が切り貼りすぎて、
焦点が発生しなさすぎて疲れた。
本編も実はほとんど焦点らしい焦点がなくて、
ロスアラモスつくるぞ、原爆実験成功させるぞ、
反省するぞ、真の悪はこいつだったのだ、
悪人は実は小物だったのだ、
くらいしかなかったんじゃないか。
カットバックと、
ずっと緊張感がつづく伴奏で、
誤魔化されてただけだよな。
途中からこれ音楽でひきつけてるだけやな、
と気づいてしまったので、
だいぶ飽きてた。
たぶん、
ノーランは、
時系列順で、
カットバックせずにワンキャメで、
焦点を追い続け、
きちんとテーマに腹落ちする、
ふつうの構成をやらせたら、
全然詰まらない人なんじゃない?
だから、手法に逃げてるんだろ?
ぼくはそういう王道でおもしろいものを見たいのさ。
新手法で新しくやったって、
目先を変えただけで、
まずい料理はまずいのよ。
2024年04月06日
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