配列を変えると速くなる。
それはほぼ確実な答えだ。
その配列が合わなかった場合を除き、
自分に適したより速い配列を見つけられた人は沢山いる。
これが「すべての人」にまで敷衍できるかは、
まだ配列を変えた人が100万人もいないので、
確率的によい、とまではいえない。
ただその「速くなる」を混同して、
誤解すべきではないと考えている。
三種類の速さってどういうこと?
1. タイピングゲームで測定できる、
ランダムワードを反射神経(=意味を介さない)でコピーする、
数分程度の競技的な、短期速度。
厳密な測定が可能で、スポーツ化しやすい。
2. 創作打鍵における、
何文字/10分、あるいは、何文字/日などの、
長期速度。
実際に測定してる人は少ない。
また、内容によって上下しすぎるため、
条件の標準化が難しい。
3. 思いついたことをぱっと書ける速度
個人の中で、脳から出たアイデアを、
できるだけ蒸発する前に何かに書き留められる速度。
測定は脳波?
1や2は本来の目的ではなく、
僕はこれこそが目的である。
長いので、
1. 短期的速度
2. 長期的速度
3. 文字定着速度
とでも呼ぼうか。
たとえば漢直は、3に特化した配列だ。
1、とくに変換なしでのゲームでは役に立たない。
2でもそれほど速いわけではないことは、
KIHの岡さんのものを見ればわかる。
漢直だからといって2000出るわけではないのだ。
しかし3が気持ちいいことは、
想像すればすぐにわかる。
ちなみにKIH動画は、
2をなるべくフラットに撮影して、
日の下にさらしたろ、という目的でつくったものだ。
結果、
1がべらぼうに速くても、
2では少ししか速くない、
ということがわかった。
qwertyのたのんさんは、
1では僕の2倍以上速いが、
2では僕の1.1倍しか速くない。
2では差が詰まるのだ。
思考速度、つまり脳を使うほど、
1ほど差がつかないのでは?
という仮説を立てることができるね。
そして漢直を見る限り、
1も2も遅そうだけど、3は速そうだ。
漢字変換は日本語入力のボトルネックだ。
ほんとうはそここそを改良したいが、
僕はプログラマーでもないし、
IMEを組み立てる自信がないので、
できないから配列をいじってるのかもしれない。
薙刀式は、編集モードや機能キーを文字領域におくことで、
3をなるべく速くするために、
カナ以上のことをやろうとしている配列、
と言ってもいいかもしれない。
さて、
Twitterから引用してみよう。
> ゲームを除けばキーボード入力で疲労したことない
> なのでキーボードや配列関連で疲労がどうとかいう言説すべて胡乱だとおもってる
> 運動負荷を減らす配列を模索するのは結構なことだけど、引き換えに物理的速度が犠牲になってるとするならそれは事実として認めるべきだし、そこのトレードオフ性に目をつむった比較の言論は不誠実ですよね
ここでの「物理的速度」は、
1の速度だと思う。
薙刀式は2の速度は速いほうだからだ。
人生をかけて練習してきたタイパーの2に、
1の素人が数年で2で喰らいつくレベルなわけだからね。
なので、1の速度は知れてるが、
2では速いぞ、というのが薙刀式での議論だ。
> 約二年くらい前にやった掌編小説のリアルタイム執筆が1,800字/30minくらいなんだな〜
> 掌編小説(=長期的尺度での考慮が必要ない)+勢い重視の筆致でも1,8k/30minくらいが入力云々の前に内容を考える限度って感じはあった(今ならもうちょい速いかもだが)
> 総量900字くらいなら900/10minくらいは出てた。テキスト尺を半分にするだけで考慮の負荷が減って1.5倍にくらいになる……
めずらしく数値が出てきた。
これをちゃんと測定してる人はかなりレアだ。
僕の数値を示すと、小説ではなくブログ文で、
1500字 10分程度
2000字 15分程度
5000字 50分程度
と、文字数に対して、
極端に速度は落ちることがわかっている。
文字数が増えるほど、要素間の関係性が複雑になり、
o(n^2)程度に落ちるのでは、というのが予測だ。
よくタイピングゲームで、
kpmなどの分速を測定しているが、
この速度は一定ではなく、
文字量が多いほど下がる、
というのが僕の経験則。
なので1は指標にはなるものの、
絶対ではないと考えている。
で、3の話があまり出てこないのは、
この方(おそらくqwerty)が無意識に配列を自分のものにしてるから、
ではないかと思う。
自分の思考をタイピングに、
かなりストレートに出せるスキルがあるからでは?
と思う。
つまり、3で困ってないんだろう。
僕は、qwertyで3が辛かったのよ。
2も遅かった。530字(変換後)/10分と記録してある。
で調べたら、
1を上げるために配列勢たちがいて、
それで2も上がり…となってたから、
よし、3と2を上げよう、
と思ってここまできた。
そして、自分の脳内で何が起こってるかを観察して、
脳内発声がないタイプだとわかり、
脳内の概念をくっつけることで思考してるとわかり、
それを指のアルペジオでくっつけやすい、
薙刀式をつくった。
このときはまだ漢直をよく知らなかったため、
カナ漢字変換をすることを前提としてたから、
現行IMEをいかに効率よく使うかの動線を、
編集モード他に入れ込んでいる。
結果、IMEのカナ漢字変換を使う限りは、
3をマックスよくしていて、
2を相当よくしていると評価している。
もっとも、
もっといい3があり得るかもだ。
たとえば漢直はこれを凌駕するかもしれない。
さて。
速さとはなんだろう?
1を競う動機は僕にはないし、
そもそもあんなに練習してる人たちに、
僕は逆立ちしても勝てない。
チャット速度は1かな?
それくらいなら実用上困ってない。
タイパーたちは、
実用レベルを遥かに超えた速度で戦っている。
だから、実用と実態がかけ離れていると思う。
2は実用上の意味がある。
10万字の小説を一本書くときに、
その数倍は文字を書くので、
何十万字を速く疲労せずに書けることは死活問題だ。
そしておそらく、
多くの人にとっては、
1よりも2の速度を上げたいことが重要だろう。
1と2を同一視している議論がたくさんある。
同時打鍵は超高速領域(7.5打/秒以上としよう)では不利とか。
そもそも薙刀式はタイパーに勝てないとか。
僕は、3の話をしようぜ、
と思っている。
2の結果は、3から来るものだろと。
日本語を書くのに、
qwertyの指の動線のバラバラさでは、
3を邪魔してるだろ、
というのが僕の批判である。
そこをもっと思考と繋げられるような、
指の動きにするべきである、
その答えのひとつが薙刀式だ、
という議論をしたい。
もちろん、
他の別解についても語りたいわけだ。
引用したTwitterの方は、
3を苦痛に思ってないから、
「速いのか?」
という疑問を持つのではなかろうか。
そして1〜3を混同してるから、
1や2の議論で終わるのでは。
親指シフターのいう速さ/楽さも、
実は3に起因してるのではないかと僕は考える。
親指シフトは脳内発声のある人に向くと思う。
僕はないので、脳内発声してしまう親指シフトは、
僕には邪魔だったけど。
だから、
qwertyですでに1や2に疑問を持たない人は、
そのまま生きればいいと思う。
ただし、qwertyが効率が悪い配列なのは、
客観的に議論できる。
その効率の悪さに腹が立ち、
その強制に疑問を持つ人だけが、
新配列をやればいい。
そもそも全日本人は、qwertyだろうがなんだろうが、
大して関係ない領域にいる。
困る人は、よほどたくさん/速く書きたい人だ。
その人たちが、
無知がゆえに、
3を遅くして、2を遅くして、
質の悪いものを作ってしまう愚を、
避けたいのだ。
だから「qwertyで困ってない」人は、
現状を固定して肯定しまう、わるいひとなのだ。
その閉じ込めを覆さないかぎり新配列運動に自由はない。
もっとも、彼らと不毛に対決するのではなく、
彼らと関係ないところで、
勝手に勝利することが早道であると考える。
なので、好き放題書けばいいさ。
それが素直な議論であり、
悪意のないものであれば、
議論百出することが、このことを考えることにとても有利に働く。
だってそれは、何で書かれたのか?
が重要だからだ。
その議論の質が高ければ、少なくともよい配列を使ってる証拠になる。
もちろん、この文章は薙刀式で書かれました。
議論の質が高いかどうかは、賢明なる人々にまかせます。
競争は人類を進歩発展させる。
長期的に見ればそれは真実だが、
短期的に見ればマウントの取り合いとか、
足の引っ張り合いがある。
人類は賢くもあり、愚かでもあるからだ。
2で勝てない人は1で勝ってマウントを取るだろうし、
逆の人もいるだろう。
なんなら、配列道に入ってない人ほど、
実体験に基づかず、ネットの知識だけで○○配列最強、
とか思いがちだ。
僕は3を測定できるといいなあとずっと思っている。
そして、
123を測定した上で、
その人に適した配列がわかる方法があって、
それらを自由に使える社会が、
真の自由社会だと考える。
僕が思うゴールはそのへんかもしれない。
どうやればいいのかはわからないが、
議論し続けるしか、
文字を書くしか、
今のところはできないと考えている。
僕がプログラミングができるなら、
そうした判定機や、そのための理論を構築するかもだし、
何かを調査するかもしれないけどね。
いや、先にIMEつくっちゃうかな。
エディタもつくりたい。
今はただ3をよくするためには、
論理配列と自作キーボードの打鍵感をよくすることしか、
できてない。
合わない配列を使うべきではない。
それはあなたの思考に枷をかける、纒足だ。
そんなもの窓から捨てて、
自由を獲得するべきなのだ。
選択肢はqwertyでも、JISカナでも、
薙刀式でも、新下駄でも、飛鳥でも、親指シフトでも、
月でも、シン蜂蜜小梅でも、新JISでも、
AZIKでも、大西配列でも、カタナ式でも、
漢直でも、
他の何かでも、
自作でもいい。
たった一つに絞らなくたって、
複数使ってもいい。
僕は薙刀式とフリックを使ってるし。
(デバイスを変えると併用できることが知られている。
また、カナ配列同士、ローマ字配列同士は干渉しやすい)
配列を変える目的は、
速くなることだ。
ただ、どの速さを速くなりたいかを、
解像度高く捉えておくと、
間違えないだろう。
2024年04月07日
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