2024年04月16日

【薙刀式】左右交互とアルペジオ

左右交互打鍵に関する歴史的な経緯は、
大体tkenさんが説明してくれている。
https://x.com/fsktakahasi/status/1779843861134901432
僕の認識も大体同じ。

これを知らない、Keyboard Layout Analyzer(KLA)の、
左右交互打鍵率という指標を盲信してしまう一派もあってねえ。


KLAのスコアを上げることを最初の目標にして、
各配列の比較をして、
○○配列に勝った、
と一喜一憂するのはとてもわかる。

だけど、KLAの指標が、
合理性や速度、
配列としてのすばらしさの、
絶対値になるとも思えない。

アルペジオ、同手連続の悪運指、
左右交互だけど弱くて遅いもの、
などは計算から抜けているからね。


もともと左右交互を重視しよう、
という指標は、
同手連続、同指連続を避けよう、
という指標だと考えられる。

同手、同指全体をざっくり悪運指にしたのだろう。
左右交互率が高ければ、
その確率を下げられる、
という、補集合的に考えた結果だと思う。

この考え方は、
新JISの設計時に重要視されたからか、
その特徴を色濃く継承する月配列系列の設計で、
とくに重視されて議論されていた記憶がある。

一方、
飛鳥なんかは、
中段の同手アルペジオなんかを、
本能的に重視していたり、
新下駄では、
まずアルペジオを検討して、
無理なら左右交互にする、
という設計の仕方を公開している。

この、
大きく二つにわかれる設計方針により、
結果的な左右交互率ってどれくらい違うんやろ。
誰か計算してないかな。



僕はアルペジオにも色々な速度があると考えていて、
左右交互にもグラデーションがあると考えていた。
なので、
実際に僕の肉体で、
30キー×30キーの組み合わせ、900連接パターンの速度測定をした。
とるさんもその測定をしてくれて、サンプル2ではあるが、
以下のような性質が抽出されている。
以下右利きとする。

・速いアルペジオは左右交互より速い
・同手連続の平均は左右交互の平均より遅い、
 つまり同手連続の悪運指が足を引っ張る
・右手のアルペジオは左手のアルペジオより速く、
 バリエーションも豊富
・左→右が、右→左よりも有意に速い
・同指連続のうち、左右交互や同手連続の悪運指より速いものがある
・同鍵連続のほうが下手な同手連続より速いものがある

などの結果を得た。
単純な、左右交互と同手連続という指標だけでは考えられない、
複雑な姿をしていることがわかった。
http://oookaworks.seesaa.net/article/490739021.html

サンプル数が少ないため、
人によってこれらの傾向は似るのか、
全然違うのか、
いくつかのパターンに分けられるのかも、
わかっていない。
(そもそも同一人物で傾向に再現性があるのか、
すらも二度とやりたくないので分からない)


このデータを用いた、
仮想の打ち手が○○配列を打ったら、
どれくらいの速度を出すのか、
について調べた、岡さんの計算的調査もある。
http://oookaworks.seesaa.net/article/501326115.html
http://oookaworks.seesaa.net/article/501332636.html
http://oookaworks.seesaa.net/article/501336664.html
http://oookaworks.seesaa.net/article/501359892.html
http://oookaworks.seesaa.net/article/501413398.html


こうした解像度の高い議論抜きに、
KLAの指標に一喜一憂してるのをみると、
まあ、まだそこしか知らんのだなあ、などと温かい目になってしまう。



薙刀式の運指原則は僕の直感によって並べて、
莫大な使用実績によって、
微調整を繰り返してきたものだ。
自分の900連接の分布に、
かなり近いものであることがわかっている。
まあ打ち手の手に配列は近づいていくわな。

これが、
「大岡の手に特化したものだ」なのか、
「汎用性はそれなりにある」のかは、
他の人の手のデータが沢山ないため分からない。
ただとるさんのデータは僕と似ているので、
「似た手の人が薙刀式を使うとよい」のか、
「わりと汎用的によい」のかまではわからない。

薙刀式使用者が何人いるかわからないが、
僕のこれまでのメモによると、100人くらいかと思う。
(黙って使ってる人はわからないし、
始めたけどやめた人もわからないので、肌感で。
1000人のオーダーはいなくて、
10人よりは多い)

そういう意味では、
俺の手特化というわけでもないと思われる。

新配列使用者は一体何人いるのかは分からんのよねー。
新配列サミットみたいなことを仮にやっても、
全員が来るわけでもないからね。
(濃いメンツは集まりそうだけどさ)



本題に戻ると、
左右交互打鍵率は、どれくらいがよいのだろうか?
60%くらい?
そもそもそんな指標の上下に意味がないかもしれない。


ちなみにアルペジオを重視しすぎると、
同手連続が長すぎる羽目になる、
という逆の現象も全然ある。

薙刀式でいうと、
「してしまって」は左手アルペジオ7連、
「こととして」は左手アルペジオ5連。
「おもわれる」「おもわれた」は右手アルペジオ5連、
「なくなる」は右手アルペジオ4連。
「考えられる」「考えられた」の右手パート、
「ん゛えられる」「ん゛えられた」は右手アルペジオ5連。

このあたりはよく使う。
長いけど、
高速で打ちやすく、
文章をなめらかに書くことができるので、
気に入ってる部分だ。

こんなに打ちやすい流れはそれほど存在しないので、
同手連続が続く場合は、
どこかに切れ目が入る。
でもその切れ目は、よくあるフレーズ単位のまとまりの、
切れ目になっているので、
あまり苦痛は感じないようになっている。はず。


こんな風に、
個別の議論をするべきだと思うんだけど、
それを考えなくてざっくり考えたいときに、
左右交互や同手連続といった、
荒い考え方が使えるはずなんだよね。

各配列をざーっと串刺しで見る時とか。

KIHで実際に見た、
月配列や月光の打鍵では、
左右交互が多いというよりは、アルペジオが少ないなー、
という感覚の印象だった。
DKが逆手なこともあるから、
同手連続は薙刀式より少ない印象だ。

新下駄は想像より左右交互が多い気がしたが、
同時シフトになるとどっちかがアルペジオになってたりと、
左右交互/同手連続の指標から外れた打鍵になるから、
なんともいえないところだなあ。

あるいは、
使い手の好みもあるのだろうか?
左右交互でリズミカルにやりたい人、
アルペジオでぐしゃっと潰したい人、
色々いそうな気もする。


少なくとも、「左右交互打鍵率が高いほどよい」
というKLAの指標の盲信は、間違ってると思うね。


(追記)
KLA:
http://patorjk.com/keyboard-layout-analyzer/

ここで基準になってるスコアは、
The optimal layout score is based on a weighed calculation
that factors in the distance your fingers moved (33%),
how often you use particular fingers (33%),
and how often you switch fingers and hands while typing (34%).
と明記されている。
指運距離33%+同指を連続で使わない33%+左右交互性34%
というところかな。
これがどれだけ妥当なのか、あるいは他の要素はあるのか、
については議論があまりされてないね。

(相加平均を取る時点で、
そもそも三つの指標の平均や偏差が揃っている、
標準化されたデータなのか?については明記がない)


配列同士を比較するときに、
その打鍵理論に明るくないと公平な比較ができず、
ましてやその指標がどれくらい効いてるのか、
数値化することの困難さを表していると思う。
(そもそもその計算結果が妥当かどうか、
各配列に詳しくないと読み取ることもできまい)

なおカナ配列を含み、
日本語文章に対応したものは、
すでにeswaiさんが作っている。
ご活用されたい。
https://keyboard-analyzer.vercel.app/
posted by おおおかとしひこ at 10:17| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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