2024年04月28日

【薙刀式】最速の条件

Twitterから。
> Azeron cyborgみたいなやつを両手に装着して、五十音と主要な濁音と拗音を単打に割り当てるのが最速だと思うんだがな。

Azeron cyborgってなんやろ、と調べると、
Data Handが倒産してて、
それを買い取ったものであるらしい。
手の形をしてて、指先にクリック、前後左右倒しの5操作が付いてて、
ひとつの指で5種の操作ができるやつだ。

5×5×2=50あるから、これにカナを当てれば、
同時押しで何かになれば、と思うのは人情だ。
果たしてそれが最速になる?


僕はならないと思う。

たしかに、
指とキーの距離は0だからとても近い。

だから瞬間的に指が動き、
1U=19mmを動く必要がないし、速いのでは?
となる気持ちもわかる。

たぶん、1キーだけ取るなら速いかもだ。

だが、言葉というのは、
日本語で言えば、5音、7音が基本である。
連なりとして現れる。

5打、7打が一連で出来なければ、
言葉を紡ぐ装置として意味がない。

仮にうまくカナが置けたとして、
左倒しの連続の語と、
左倒し右倒し左倒しみたいに、
倒す方向が逆の語では、
前者の方が速くなると思われる。

そのようなことを考えて、
各カナが最適に置かれていれば、
言葉を紡ぐことが最速になろう。

また、
各指には器用さや速度や耐久性の差がある。

30キー×30キー=900パターンの連接速度をかつて測定したけど、
それ以前に、
ある指×ある指の、同手の組み合わせだけを測定した、
トリル測定があるので再掲しておく。


---ここから

速い順。★☆で右手、左手を示す。
数字は一番遅いものを1とした時の速度。

★示中 2.6
☆示中 2.3
★中薬 2.3(トップ3)

★薬小 2.0
★示薬 1.9
★示小 1.7
☆示薬 1.6
☆示小 1.5
☆中薬 1.4

★中小 1.2
☆薬小 1.2
☆中小 1.0(ワースト3)

---ここまで
元データは、
http://oookaworks.seesaa.net/article/452701491.html

ほとんどの場合、右手アルペジオが左手アルペジオを上回る。
左手は唯一人差し指中指が速いが、
あとは右手に負ける。
薬指小指が遅いと思われたが、
それより遅いのは中指小指という、薬指を挟んだ2指だった。

また、右手は隣り合った指の組み合わせが得意だが、
左手は人差し指がらみのほうが得意だ。

そしてこれは僕のデータであり、
他の人はどうかは不明である。
似てるのか全然違うのかすらわかっていない。



これらを基礎データとして、
カナの連接を組むべきだ。

計算的にやってもいいし、
経験的にやってもよい。


たかがクリックだけでもこれだけ差が出る。
色んな連接が色んな言葉を編むとなると、
その最速の最適化問題は、
相当に難題ということがわかる。

そしてその法則性さえわかれば、
それはそもそもキーボードの配列設計でも活かせる、
ってことになってしまう。

じゃああとは、どっちのハードが速い?ってなって、
十分に熟練すると、
どうなるかを誰もまだ見てないから、
言い出しっぺがやることになるだけだ。


というわけで、
かなり高いハードルだと思うけど、
是非実験してみてください。


「指の運動量が最小の方が速い」ことすら、
まだ実証されていない。

指の運動は複雑な3次元軌道を描くが、
ある程度空走距離がある、
バッファがあった方が打ちやすい説もある。

ホームポジション遵守だと、
逆に手が凝って疲れる説すらあり、
手を適度に運動できる方が速い、
という説すらある。

どちらの説が正しいのかは、
まだ誰も試していない。



最速の条件は、だから何もわかっていないよね。
仮説はいくらでも立てられる。
証明は、数学ではないから、
「やってみ」でしかないのよね。

そして「やった」ら、
その人だけなのか、他の人にも適用できるものなのか、
という実証が必要で、
数を貯めていかないと、証明したことにはならない。

頭の中で思うより、最速の条件はむずかしいのだ。
posted by おおおかとしひこ at 13:30| Comment(2) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
Datahand型キーボードのSvalboardに自作のかな配列を入れて使っている者です。
Svalboardの公式ページも載せておきます。
https://svalboard.com/

僕はDatahand型でタイパーレベルの最速入力は難しいと考えています。
Svalboardの制作者Morganさん、その前身Lalboardの制作者JesusFrekeさん、この二人でもMonkeytypeの英単語で100wpmから120wpmしか出せていません。
僕としてはこれでも相当早いと思うのですが、YouTubeでMonkeytypeの動画を見ると200wpmを越えるものがいくつもあるので……。
元々DatahandやSvalboardは腱鞘炎をはじめとするRSI(反復運動損傷)を和らげるため開発されたもので、長時間低負荷でタイピングすることを重視しています。この点から見ても、やはりタイピング競技との相性は悪いと思います。

僕が使用しているモデルはSvalboard Alphaという、現在販売されているLightlyのプロトタイプにあたる物です。
アクチュエーションフォースは20gから25gで、入力時の指の移動距離は5mm程度です。
これだけ見ると早そうなんですが、大岡さんもご指摘の通り、指の動きがネックと言えるかもしれません。スマホのフリック入力をイメージしてもらえると分かりやすいと思います。
例えば右手人差し指で北側のキー(SvalboardではNキー、North keyと言います)に触れた後、もう一度同じ人差し指で南側のキー(Sキー、South key)を入力しようとすると、振り子のように行って戻ってくる動きになります。指への負荷はありませんが、このときの移動距離が大体1cmから1.5cmくらいになるので、この時間的なロスをどう見るかによります。
かなを上手く配置すれば対処できますが、文章入力中にこの動きを発生せさないようにするのは不可能でしょう。
僕は慣れているので連接や数打鍵必要な言葉(考えられる、思われる、いなくなった、など)はすんなり入力できます。

Datahand型のキーボードはその性質上ポジションを固定されがちです。人によっては不快で疲れや痛みを感じるかもしれません。
僕の場合は海外のユーザーさんたちと同じように肩こり、首の痛み、腱鞘炎、テニス肘がだいぶ改善したので、ホームポジションの固定が体質や癖と上手く噛み合ったのでしょう。
根拠はありませんが、きっと僕たちDatahand&Svalboardユーザーは少数派だと思います。

最後に僕の入力速度を書いておきます。遅すぎて参考にならないかもしれませんが……。
ATOK Passportを使用していて一日最低一万字は書いています。
タイピング系サイトで計測すると平均秒間打鍵数は3打で、瞬間打鍵数は秒間6打です。
十分間の速度を測定したことはありません。
大岡さんのお言葉をお借りするなら、「創作文」で一時間あたりの文字数も大体二千字から三千字となっています。これを下回ることもあれば、上手いこと頭が回って四千字近くになることもあります。実のところ、このコメント(約千五百字)も大体三時間くらいかけて書きました。
長時間のタイピングで平均速度の3打を維持できないのは、打たずに考える時間が長いことと、自分にとって痛みを感じにくい快適な入力速度が秒間1.5打から2打程度だからです。キーボードの種類や配列に関係なく、この程度の速度しか出ません。これ以上早くなることも、極端に遅くなることもありません。
Posted by myomyomyo at 2024年04月29日 19:04
>myomyomyoさん

非常に興味深い実用レポートありがとうございます。

アクチュエーションフォース低いなー、
とびっくりしました。
「倒す」という動きを気にいるかどうかはありそうですね。

そして、やはりそこまで速くなるわけではないと。

じゃあなんなら速いんだろうなあ。
日本人の文章作成、
それくらいが関の山なのかもしれないですねえ。
論理配列と物理を工夫したとても、そこらへんが収束値なのではないか、
という仮説は確からしいなあ。

じゃああとは腱鞘炎などにならない、
低負荷の争いになってくるのかしら。


マジで誰か、
1万字/1時間の高速長文入力とか、
達成しないかな。たぶん手が壊れそう。
Posted by おおおかとしひこ at 2024年04月29日 19:56
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック