2024年06月18日

確定する恐怖

なぜ執筆が進まないのか?
なぜ次にやるべきことが思いつかないのか?
確定する恐怖があるから、じゃないかと思う。


昔「描かない漫画家」という漫画があった。
偉そうなことを言ってぜんぜん描かない、ニートの話だ。
「明日から本気出す」というやつだね。

何もやっていない状態だと、
まだ書いていない状態だから、
いかようにも妄想することができる。

しかし実際に一部書いてしまうと、
「これが自分の書いたもの」と確定してしまうから、
妄想よりも大したことがないことを、
目の当たりにしなければならない。

それが、妄想したものよりも、
全然実力が足りてなくて、
しょぼしょぼのものになっていることに、
プライドが耐えられないわけだ。

だから、確定したものを書かずに、
確定しない状態をキープしようとする心理だ。

つまり、確定したものは恐怖でしかないわけ。

確定してしまったら、
「こんなもんか」とバカにされてしまう。
それを避けたいわけだ。


執筆途中に、
そういう心境に陥ることはよくある。

プロット時点では、
絶対名作になるぞ、なんて意気込んでいたのに、
実際書いてみると、
どこが名作だよ、平凡だし、全然盛り上がらないし、
などと、
自分の実力に向き合うことになるわけ。

だから書いても書いても、
プロット時点での魅力ある状態に追いつかないので、
「この話はつまらないんじゃないか」と、
恐怖してしまい、
これ以上期待を下回ることを恐れて、
辞めてしまうんじゃないかと思うんだよな。

書かなければ100点だったかもしれない。
しかしここまで書いた時点で60点。
これ以上書かなければ60点で終われる。
これ以上書いたら50点、30点……になってしまう。
こういう恐怖に陥ったとき、
人は執筆を辞めてしまうのだろう。


対処法はいくつかある。
30点を覚悟して最後までやること。
プロットは100点だったかもしれないが、
実際書いたら30点のプロットだったと、諦めることだ。
完成しなかった100点よりも、
完成した30点のほうが、はるかに点数は高い。
3億倍くらいね。
でも頭の中の妄想のほうがよかったと、
ずっと後悔することになる。
でもそれは、頭の中の妄想のほうが、たいていよくなるだけのことだ。
その30点から、人々が200点の妄想ができれば、
それは200点の出来になるよ。

別の考え方として、
「戻って書き直す」がある。
先に進む前に戻って、
瑕疵を直し、次へ進む方法論だ。
50点が60点に戻り、70点に戻ることになるので、
書き続ける気力が湧くことがある。
これはとてもゆっくりになるので、
あまりお勧めできる方法ではないが、
どうしても書けない時には試してみてほしい。

どこかで自信を失っていることが原因だから、
失敗したと思っているところへ戻って直すと、
自信がちょっと湧いてくるものだ。

前に進められるだけの勢いが出てくるまで、
ちょっと進む、戻って書き直す、
またちょっと進む、戻って戻って何か所も書き直す、
を続けるといいだろう。
三歩歩いて二歩下がる、という戦術だ。
時間はかかるが、それでも前進はしているから、
そのうちまた勢いに乗れる、自信のあるポイントまでやって来るだろう。
そのときまで耐えながら、進んでいくしかないだろうね。


確定する恐怖がある。
それは、自分の才能のなさに向き合う瞬間だ。
妄想ではあんなに良かったのに、
現実の自分はたいしたことがない。
鏡の中のイケメンが、
他人の写真でぶさいくに映ってて、
現実を知らされる瞬間に近いかな。

それでも前に進もう。
あなたが書かなければ、その話は誰も仕上げられない。
お前が始めた物語だ。ケツを拭くのはお前なのだ。

最後までとりあえず書けば、
とりあえずは確定する。
これを足場にすれば、
第二稿、第三稿はもっとよく書ける。
足場がないものは、何も書けないのと同じだ。

未来の俺がもう少しよくしてくれると期待して、
今は暗闇をコツコツ進めることだ。
ときに戻りながら、
イメージとずれていたところを修正しながらでもいいだろう。
終わらない仕事はない。
終わるまでやればね。
トンネルは長いぞ。2時間の脚本というのはそういうものだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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