必ずしもそうじゃないかもしれないが、
半分過ぎて、まだ主人公たちに魅力を感じていないなら、
あまり面白くないんじゃないか。
ストーリー進行に重きを置きすぎると、
そうなってしまうかもしれない。
動機や目的や出来事や、行動や過程やその結果や、
次にやるべきことにかまけていると、
この人たちが人間であることを忘れてしまいがち、
ということだ。
人間なんだから、感情の起伏もあるし、
喜ぶし、悲しむし、嫌にもなるし、
積極的にもなるし、テンションも上がるし、
テンションも下がるし、恐れるし、
ドキドキするし、ということだ。
それらをちゃんと描いて、
キャラクターを魅力的に描いていくとよい。
ただ喜ぶだけだって、
そのキャラクターなりの喜び方があって、
それをもう一回見たくて、喜ばせたい、
という欲望が出てきたっていいんだよ。
それが人間の感情というものだ。
そして、観客がそう思っている感情と、
キャラがそう思っている感情とが一致したときに、
観客はキャラクターとの一体感を得ると思う。
重要なのは感情的な一体感であり、
理屈の一体感ではないということだ。
正義であるとか、義務であるとか、
やらないといけないこととか、事情とかは、
あくまで理屈の上の出来事だ。
そうではなくて、感情的な一体感ということだ。
「誰もがその笑顔をもう一度見たくなる」
というものをつくれれば、
観客とキャラクターは感情一致に至るということだ。
そして、
ある一定時間同じ感情を共有すると、
好きになるんじゃないかと思う。
つまり、
ストーリーも半ばを過ぎて、キャラクターを好きになれないのは、
感情的な一致ポイントについて、
あまり考えられていない脚本なんじゃないか、
ということだ。
つまり、ざっくりいえば、人間臭くない、
ということだ。
もちろん、
魅力的な人間像を描けていれば、
感情的な一致などなくても、
そのキャラクターを好きになるかもしれない。
でもそれは、よほど難しいことであり、
そういう濃いキャラが出来たらラッキー、
くらいに考えておくべきだろう。
だがそれは、人間的に魅力のないキャラクターを、
放置してよい言い訳にはならない。
人間的に魅力があるキャラクターを、
創作することにおいては、
やりすぎてやり過ぎることはないと思う。
なので、
人間的な魅力、それは性格とか傾向などの抽象的なラベルではなくて、
具体的なエピソードで表現していくことを、
まずは考えるべきである。
このエピソードをみたら、
誰でもこの人を好きになってしまうやつを、
考えていくとよい。
まあそれって、たいていの男子にとっては、
女子のエピソードであることが多くて、
同性のエピソードは難しいんだけどね。
だから、
主人公の魅力あるエピソードというのは、
たいてい同性だから難しい。
ここで、主人公=自分にしていると、
「自分なんかに魅力があるわけがない」という自虐がやって来るので、
主人公の魅力あるエピソードを考えることが難しくなるわけ。
こうして、ミッドポイントになってもなお魅力を感じられない主人公が生まれがち。
そうじゃなくて、
主人公は作者と別人なんだから、
新しい男の友人だと思って、
そいつのいい所を見せられるような、
ナイスなエピソードをいくつも考えるんだよ。
サブキャラはわりと作りやすい。
主人公の責任がないからだろう。
極端な性格に振りやすいのもあるだろうし、
主人公よりもキャラを濃くしやすいからね。
つまり、味付けが濃いとそれを生かしやすいわけ。
主人公が特濃というものは少ないから、
どうしても濃い味付けならつくれるが、
薄味だと微妙、
ということになりがちだ。
だから、サブキャラは1個だけあれば、
強烈に好きになるかも知れないが、
主人公クラスになると、
いくつもそういうエピソードを用意して、
合わせ技で好きになっていくことになる。
そして、前にも議論したが、
「好きになるエピソード」は単体としては存在しない。
メインプロットを解決していく、
メインのストーリーの中で現れるものだ。
だからたとえば、あるストーリーの段階をクリアするときや、
失敗するときや、
リバーサルするときに、
主人公を好きになるエピソードと、
重ね合わせとして存在する、ということだ。
だから、ストーリー展開のときに、
ただ展開させてはつまらないのだ。
主人公を好きになるような、
ナイスなエピソードとして、
記憶されるべきなんだよね。
この塩梅が難しいからこそ、
中盤は難しいのだと言える。
序盤こそは第一印象だけつくっておけばよかったが、
中盤はそのさらに奥深くに入って、
キャラクターを好きになる段階だ。
それがうまく機能していない場合、
あるいはそれをまったく考えていない場合、
ミッドポイントを過ぎても、
なんだかキャラクターに魅力を感じないものになっている確率が高いね。
半分たっても、
なんだか浮ついているというか、
上滑りしているというか、
芯を食っていない感じがするとき、
そのことについて考え直すとよいだろう。
まあ、幸い、ストーリーは半ばまで来ている。
具体的な原稿はあるから、
それをベースに修正していけばよい。
真っ白から考えるよりは、だいぶ楽だ。
「あ、あれのやり方をこうしたら快感じゃない?」とか、
「あそこでもっと悲しみを表現できる」とか、
ちょっとしたことを思いつくだけで、
キャラクターの好きになり方は変わってくる。
感情に寄り添うこと。
それを魅力的に表現すること。
笑顔ひとつで観客は惚れることがある。
憂い顔ひとつで観客はぐっとくることがある。
行動ひとつで、観客は好感を持つ。
計算高く、そして自然にやることだ。
2024年06月19日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック