2024年05月13日

【脚本添削SP2024】3: 構成を書き出す2

同様に、「テンカウント」でも、
分数、シーン柱、重要な出来事を抜き出してみます。


0
ボクシングリングの上
  川田負ける
1
控室
  ユウトを飯に誘う●
2
中華料理屋
3
回想
  風間の死と異常状況●
5
夜、商店街
  ユウト、川田を殴る●
6
(回想)
翌日、半壊した中学校の校舎
  タイムカプセル●
8
夜、ボクシングジム
別のボクシングジム内
  再戦決定●
9
(トレーニングモンタージュ)
リング
10
赤コーナー
12
青コーナー
13
(ファイナルラウンド)
  必殺パンチで倒す●
15


「ママのかわり」に比べて、
ストーリーの動き出しポイントが早いです。
最初負けてるところから始まってるし、
「セットアップは途中から」という原則をうまく使っている。
座敷牢に子供を閉じ込めてる異常な死が、
この話のオリジナリティの部分ですが、
それも3P目で早く来るので、
「この話の第一印象」として焼きつきます。

基本的に行動として描かれていて、
ストーリーが動いている感じが強く、
ダイナミズムという点での才能を感じます。

だけど、これは「おもしろい」か?
というのが問題点になります。

骨格だけ抜き出しましょう。

0
1 飯に誘う
2
3
4
5 殴られる
6
7 タイムカプセル
8 再戦決定
9
10
11
12
13 必殺パンチが決まる
14 引退

 負け→逆転の秘策→新必殺技で勝つ

という、少年漫画的黄金パターンをそこに見ることができます。
これ自体は悪くないけど、問題は説得力です。
これはあとで論じます。


これも「ママのかわり」と同じ問題を感じます。

設定はおもしろい。
親友の息子、廃人に追いやった親友、その再戦、
親友の残した秘策、
など、なかなかに面白い魅力をもったものが散りばめられています。

問題は?
そう、テーマなんですよ。

「で、この話は何が言いたかったの?」
ってなるんです。

「廃人に追いやった親友の息子と、
再戦する。
親友が残した技で勝ち、引退」
というプロットで、
何が言いたいんでしょう?

自己満足?


むしろ、息子に廃人にされるオチのほうが、
ボクシングの厳しさとか、
人生の辛さみたいなことが浮き彫りにされるのでは?
因果応報的な。

あるいは、
親友の残した手紙は、
親友が返し技を出すためのフェイク、
というオチもあり得ます。
実はひそかに息子に返し技を伝授していて、
息子が父に最初に習った技がそれであった、とか。

そうすると、
死んでまで俺に勝ちたかったのか、
という話になるので、
執念や思いみたいなところまで話が届きます。


作者は何がしたかったの?
というのは、詰まらない話によくある疑問です。

「テンカウント」は、
形式的にはストーリーになっていますが、
面白い話にはなっていません。

アクションや必殺技とかがあることで、
何かしら燃える要素にはなってますが、
「その道具で何がしたいの?」がないのです。
道具を使いたいから使ってるみたいな。
日本刀を振り回したいから日本刀を振り回してるみたいな。

日本刀は道具であり、
道具の使用には目的があります。
誰々を殺したいために日本刀は使うのです。
ただ振り回したいのは日本刀の使い方として、
間違ってます。

で、この話は何が言いたかったの?
というとき、
「言いたいこと」が目的です。
ボクシングの試合や、必殺技は、
道具にすぎません。

日本刀を振り回してるのをみて面白かった、
となるでしょうか?
刺激に飢えてる人ならそうかもですが、
今やそれ以上の刺激がある現代では、
まあ無視されておしまいでしょう。
刺激ならネットの方がいいので。

問題は、
その刺激を使って、結局のところ何を達成したか、
です。
それをやった目的ですね。

親友の友情?
息子はこのあとどうすんの?
納得すんの?
一方的な引退に対して「は?」ってならないの?

座敷牢は結局なんだったの?
出オチ?


このへんが、
「なるほど!」とすっきり腹に落ちない限り、
ストーリーとしては完全とはいえないです。

形はできてる(「ママのかわり」より)けど、
魂のできてなさは、大して変わらんです。
こっちのほうが、
外形ができてる分、余計に症状としては深刻です。



「それで何がしたかったの?」
こそが物語の核心です。

途中を描きたかった、
設定を描きたかった、
ではおかしなことになります。

オチこそ描きたかったものになるべきで、
そこから逆算でストーリーは作られるべきです。


異常ベビーシッターが死ぬことで、
何を言いたかったんでしょう?
「へんなやつには気をつけろ」?

テンカウントで引退することで、
何が言いたかったんでしょう?
「俺は疲れた」?
「俺は有終の美を、チートで勝ち逃げできた」?

ふわっとしてます。

もっとガツンと来るものがストーリーです。
ガツンと来させるために、
その前を使うのです。


もし、
「へんなやつには気をつけろ」が言いたいことならば、
ベビーシッターが死んだ後、
たとえばお隣さんが助けてくれてるとして、
そのお隣さんも異常者でした、
みたいなバッドエンドで、
世の中まともなやつなんていないぜ、
というオチにすれば、ガツンと来ることになるでしょう。
そのために、お隣さんをどううまいこと描くか、
みたいになるでしょう。

取引先のアンバサダー契約も、
「有名人とセックスしたかったから」と、
枕を強要してくる異常者として描くことが可能です。

なんだよ世の中異常者だらけだぜ、
実は主人公もね、となれば、
ガツンと来そうな逆算が働いていることになります。


僕は、
「テンカウント」を読んでる時、
因果応報的に、
川田が廃人になる、というオチを期待していました。
座敷牢のエピソードがそのまま帰ってきて、
「罪」が清算されると。

ボクサーはまともなテンカウントを聞くことは稀である、
みたいなことになるのかと。
ものすごく弱いやつか、無敗の強いやつしか、
テンカウントを素直に聞けないのだ。
ほとんどの中途半端なやつは、
地獄の中でテンカウントを聞くしかないのだ、
なんて風になれば、
この物語の意味があると思われます。



現時点で、
どちらをリライトするかは決めてません。

こうして分析しながら、
リライトの芽を探している感じです。

さて、
ではこのように俯瞰したものと、
各自のログラインを眺めてみましょう。
posted by おおおかとしひこ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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