2024年05月16日

【脚本添削SP2024】6: テーマとログライン

「AなBが、Cに出会い、Dする話」
というのが大岡式ログラインの考え方でした。
Dが大きくいうとジャンルを規定して、
Cが新しい面白さ、コンセプトに関係のある何か、
であることがわかると思います。

さて、Aは?
これがテーマに絡みます。


ログライン再掲。

「ママのかわり」

 仕事に忙殺されるシングルマザーが、
 娘の子守りを任せたシッターの異常さに気づき、
 娘を守るために立ち向かう

「テンカウント」

 試合で親友を廃人にしたアマチュアボクサーがその息子と試合し、
 親友と作った必殺技で勝つ話


Aに当たる部分は、
「仕事に忙殺されるシングル」
「試合で親友を廃人にした」
部分です。

これは主人公の逆境、内的問題に関係する部分で、
これを克服することが期待される、
前振りです。

つまり、
恵美は、
仕事に忙殺されることをやめ、
愛理と向き合い、良い親子になること
(さらに夫の死から立ち直ること)、
川田は、
親友風間を殺してしまったことから、
贖罪なり立ち直るなりすること、
が結末として期待される前振りになっている、
ということです。

「モテない俺が」とスタートするなら、
ラストはモテモテ、あるいは一人と愛し合うこと、
「暗黒の時代」とスタートするなら、
ラストは平和が訪れること、
「密室殺人で犯人は不明」なら、
ラストは謎が解明され、犯人が逮捕されることが、
期待されるということです。

そうでなければ、
その前振りはいらないのです。

チェーホフの有名な言葉に、
「壁にかかった斧は、必ず後で使われる」
というものがあります。

後で使われないなら、その斧は削除するべきです。
斧以外の、面白いお話で持たせる必要があります。

「押すなよ」は、必ず後で押されるためにあります。

あるいは、
いきなり斧で人を殺しては唐突です。
いきなり熱湯風呂で後ろから押しても面白くないです。
前振りがあって、それに応えるから面白いわけです。


ストーリーの結末とは、
事件の解決だけでなく、
前振りした全てのものが解決される、
斧があるなら使われること、
を意味します。

事件解決、よかったよかった、
と、まだ斧が使われてないなら、
それは削除してよいのです。


で。

結末に解消されるべきAは、
テーマの逆のことが多いです。

つまり、「ママのかわり」は、
異常シッターvs闇の母親を描き、
シッターの死(解決)によって、
「仕事に忙殺される」が解決して、
母子として幸福になる、
というお話になるべきです。

シッターvs母はモチーフ、
テーマは母子の愛?ですかね。

悪を倒したーママー愛理ーごめんねーもう子供をダシにしないー、
愛が大事ー、
というのが期待される結末であり、
提示されるテーマということです。

ただそれに「説得力がある」かどうかでいうと、
「?」って感じですね。

シッターの萌という人格を捨てて、
愛理を取り戻すことにはそれなりのドラマが必要だけど、
この原稿には、
これだけ長いセットアップがあるにも関わらず、
なんのヒントもありません。

愛理は気づいてSOSを出している?と思われる描写
(あとで使われていない)と、
スノードームで象徴される絆?かなー。
(スノードームが絆ってよくわからん)

そこからうまく展開させて、
テーマである母子の愛に落とすのは、
かなり難しいと思います。

つまり、「ママのかわり」は、
物語たりていません。
ただの不気味ショー、
嵐が過ぎ去るのを待つ、時間経過でしかないわけです。



「テンカウント」のテーマは?

贖罪?

戦いの螺旋は終わらない、あたりにして、
あるいは必殺技は風間のフェイクだった、
という以前に出したアイデアなら、
なんかまとまりそうな気がしますね。


このようにして、
Aを深掘りしていくことで、
結末のテーマが見えてくるわけです。
極論、テーマの逆がAなのだから。

つまり、
テーマを変えればAが変わり得る、
ということになるのです。

さて、
前振り(伏線)を回収しましょう。
「テンカウント」に現れる、リアリティのなさについて、
次回掘ります。
posted by おおおかとしひこ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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