2024年05月19日

【脚本添削SP2024】9: リライト版「テンカウント」

早速ですが、
僕が書き直した「テンカウント」です。
テンカウント_リライト版.pdf


どのように考えたか、
解説します。


風間父にドラマが足りないと思いました。

なんでタイムカプセルを埋めたんだっけ?
なんで必殺技を思いついたのに、
試そうとしなかったんだっけ?
そのへんがよくわかりませんでした。
「遺書」というのもよく分からなかったです。
なんのための遺書だったのか、
その意図が分からない。
掘り起こされる時には死を予感してた?
まだ中学生の時に?
その辺にご都合を感じたので、
まったく異なるドラマを考えました。


いったん「どっちが強いか決着がついたら、
このアドバイスを開けようぜ」と、
約束をしていたことにします。

で、川田サイドからみたら、
やったぜ必殺技を授かった、
と思わせておいて、
これは全部風間の「試合」だった、
というどんでん返しにしてみました。

そうすると、
「勝負への執念」などが表現できるな、
と思ったからです。

それで終わりにせずに、
川田の息子が次の修羅になることで、
戦いの螺旋は終わらない、
というオチにしてみました。


「テンカウント」というタイトルがずっと気になってて、
引退としてのテンカウントと思わせて、
「まだテンカウントは聞いてない」と、
どんでん返しに使うやり方にすることで、
タイトルも伏線としておいた感じです。

そうすると、修羅とは、
安心にテンカウントを聞くまで終わらず、
たぶんそれはないのだ、
という予感があり、
戦いに身を投じた人たちの執念、
よく言えば情熱を表現したことになります。

よっぽどのボクシング好き、
というオチになるわけですね。

試合に負け、風間に騙されて死ぬから、
バッドエンドではあるものの、
戦いはまだ続けられるぜ、という意味ではハッピーエンドです。

はたから見たハッピー/バッドとは関係ないところに、
彼らの価値観はあり、
それは狂っているともいえるし、
人類の昔からある原始的なものだとも言えます。
そのすごみの効いたラストとなりました。

テーマは「戦いは執念であり、ずっと続くのだ」とでもなりましょうか。

元原稿のテーマがあいまいであったので、
今ある材料から捏造してみました。


テーマが「道徳的に正しいこと」である必要はありません。
ダークファンタジーなどはたいてい、
「世界はひどいものだ」が基調になっていますよね。
もちろん、ライトサイドのほうがいいのですが、
暗いものは暗いなりの魅力があります。

今回は、
明るく、道徳的なラストにするアイデアが出なかったので、
出てきた暗いアイデアにしたがいました。


元原稿でのテーマがよくわかりません。
何故川田は勝ちたいのか、
勝って引退するのはなぜか、
「やり切りたい」が動機なら、
付き合わされる他の人はそれを分かってるのか。

父を廃人に追い込まれたユウトは、
それで納得したのか。
ラストにテンカウントを聞くことで、
何が達成されたのか。

その辺が曖昧なのが、
この話は何を言いたかったのか、
腹に落ちなかった理由です。

本来ならば、
最初にどこにゴールを定めるかで、
そもそも材料の選定があるべきです。
オチが出来ていないのは9割できていないのと同じ、
逆算でつくっていない、
というのはまさにこのことです。



また、テーマは作者の主張ではありません。

僕自身が「戦いは螺旋である」と思ってるかは、
関係ないです。
「そういう話があると面白いよね?」と思ってる、
というだけです。
矛盾する複数の主張を、
どれも面白いと思ってても自由です。

つまり、どんなに作品の主張が強かろうが、
作者の思想が濃いかどうかは判定できません。

作品のテーマ=作者の主張というのは、
演技はその人のプライベートだ、
みたいに思うくらい頭が悪い考えだと思います。
プライベートで犯罪者であろうと、
その人の仕事は別人としてやってるわけで。



ストーリー構造としては、
どんでん返しとして面白かったのではないでしょうか。

次回は、
より細かいところについて解説します。
posted by おおおかとしひこ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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