2024年07月13日

人を好きになるのはどこか

第一印象、二回目の発見、三回目の確信。


一発で人は人を好きにならない。
見た目でひとめぼれする時もあるが、
脚本ではビジュアルを書くことが出来ない。
また、
物語は、超絶イケメンと、超絶美女のものだけではない。

なので、ひとめぼれ以外の、
好きになる段階を作っていくべきだ。

少なくとも僕は三段階あると思っていて、
第一印象、第二段階、第三段階、
ととりあえず呼ぶことにする。


「おっ、ええやん」というのが第一印象だろうか。
それがないと、まず候補にも入らないだろう。
ただし、
「第一印象は最悪だったのに、
その後ギャップのあるところを見つけて、
好きになってしまう」パターンもあるため、
第一印象だけが必要条件ではない。
ただ、
第一印象がいいと、あとで得することは多い。

第一印象が良いと、
もっと良くしたほうがいいんだろうか?
多分だけど、
第一印象から得られる良さの、
延長線上だけだと、
それ以上好きになることはないんじゃないかなあ。
それとはまったく別のところで、
好きになるポイントがあるはずだと思うんだよね。
「ギャップ」とよく言われるのはここだと思う。

カッコイイと思っていた(第一印象)が、
案外かわいいところもある(第二段階)とか、
怖い人だと思っていた(第一印象)ら、
案外優しいところがある(第二段階)、
のようにだ。
第一印象と離れているところに良さを見つけると、
「二つの要素で描かれる」が訪れて、
リーチがかかるんじゃないかなあ。

このリーチがかかっている状態のときに、
さらに「第三段階」があると、
人は完全に落ちるんじゃないかと考えている。

ああ、この人についていってもいいや、と思える瞬間というか。


その間に、減点があったら、
好きになるには時間がかかってしまうだろうか?
僕は、
失敗や減点よりも、
「好きになる加点ポイントが減点を上回る」
ときに好きになるんじゃないかと思っている。

つまり、どこまで行っても、
「好き」というポイントが勝負であると。

最悪最低と思っていたやつが、
実は〇〇で、というパターンだってあるわけだしね。


我々は世紀のやりちんではないので、
現実の女たちをそのようにコントロールすることは難しい。

だが、
世紀のストーリーテラーなので、
架空の登場人物について、
そのようにコントロールするべきだ。


つまり、
観客が、登場人物たちを好きになるように、
コントロールせよ、
ということだ。


主人公を好きにならないと、
30分も経つと見るのがきつくなるだろう。

脇役にいいやつがいないと、
主人公だけだと持たないだろう。

ライバルや敵にすら、
愛せるポイントがあるかもしれない。

ヒロインは、ビジュアルだけでなく、
人間的に美しい人である必要がある。


不思議なことに、
よくできているストーリーほど、
登場人物たちを好きになる。
ストーリーはどうでもよくなり、
登場人物たちが、ここでどういう結末を迎えるかのほうが、
気になる(それがストーリーそのものなのだが)。

そうなるように、
観客が、登場人物を好きになるように、
つくっていくべきだろう。

好きでもない人と二時間いるのは苦痛だ。
好きな人との二時間なんて瞬きと同じである。


出来るだけ早く好きになってもらえ、
というのは、時間をうまく使うコツなのだが、
「無理して好きにならせる」ことなんて難しいので、
自然な感じでいいと思う。

ただ、ミッドポイントが来ても誰も好きになれないストーリーは、
たぶん退屈だろうね。



観客は、どこで登場人物たちを好きになるんだろうか。
主人公を好きになれないならそもそもつまらないストーリーだけど、
その他の人物も好きになれないのは、
やっぱりつまらないだろうね。

観客の好きをコントロールしている、
そう思うと、
エピソードの在り方も変わってくるのでは?

「好きにならせるぞ」という気負いだと逆に失敗する。
「俺も、観客も、ここでこの人物を好きになる」
という風にやっていくのがコツだ。
「ここで、この人に初めて会った」というような場面だね。


それが、三回もあれば、
まったく違うことで三回あれば、
好きになると思うよ。

全ての登場人物について、
そうするのは難しいだろう。
だけど、多くのメイン登場人物について、
三回いい場面がないのは、
二時間も何やってんの、とも思えるよね。
posted by おおおかとしひこ at 10:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック