2024年06月04日

尺の見積もりがおかしいので脚本に起こした

セクシー田中さんの件、小学館側からの報告書が出た。

読み進めているのだがすぐに止まってしまったのだ。
初手の部分、見積もりが違うのでは?
と感じたので、脚本起こしをやってみた。


小学館報告書より引用。読みやすいように適宜改行。

> 当初の頃から、本件漫画の原作は
> 10 月発行予定のコミックス 第 7 巻分を含めても
> 原作の分量としてはドラマの第 8 話途中くらいまでとな り、
> 第 10 話のドラマ化のための原作には不足することが予想されていた。

不足?
そんなわけないでしょ。

あの濃厚な原作を薄めなきゃドラマにならないし、
分量的にも縮めなきゃいけない、
と僕は見積もった。
ざっくり半分はエピソードを捨てる必要があると感じる。

この読解力の違いが、まず間違ってるのでは?
と思われる。


ボランティアで、
原作一話を「そのまま」脚本に落とし込んだ。
先に結論を言っておくと、原作第一話をそのまんま脚本に落としたら、43分ぶんになった。

セクシー田中さん原作準拠版#1.pdf

漫画のままでは、予想された通り、ドラマ脚本としては弱すぎる。
第一、朱里のナレーションが多すぎる。
近年ナレーション(ボイスオーバー)は極端に減っていて、
使うにしても冒頭とラストくらいだ。
間のすべてのナレーションはどうにかして処理しなければならない。

しかし少女漫画の華はナレーション(ボイスオーバー)だ。
事件は内面で起こっていることがとても多い。
しかし舞台演劇ならいざ知らず、
三人称視点で「私はこう思っている……!」と言う人はいない。
だから、三人称形式、ボイスオーバーなしの形式に変換する必要がある。
これはのちに論ずるかもしれないが、ことの本質ではないので省略するかもしれない。

あとは、
ストーリーが動いている部分が遅いことだろうな。
冒頭の合コンの場面が長すぎる。
半分以下に切って、さっさと田中さんを出したいところだね。

内容も詰まりすぎてるから、
もっと緩めにして情報量を減らしたほうが快適に見れると思う。



まあそれはいい。
問題は「不足」かどうか?ということだ。



ページ数を見よ。
このレイアウトだと1ページ2分相当。
登場人物紹介ページを除けば、22ページ目で終っている。
実質43分、というところか。

ただ、踊りのシーンはほとんど書かれていないため、
ここにトータル5〜6分は尺を取ることが考えれられる。
なのでざっくり48分としようか。

60分ドラマの正味は45分くらい。3分はカットしたい。
30分ドラマの正味は20分くらい。28分カットしたい。つまり半分以下にね。


おや? 日テレの計算が合わないね。
7巻時点で14話。30分ドラマにして倍、28話分くらいはゆうにあることになる。

「原作が不足」ってことはないでしょ。
へんだ。




この件でたくさんのツイートを見たけれど、
原作に登場しない、
ダンス教室のモブキャラに生駒里奈が入ってる、
と指摘したツイートが、めっちゃ気になるのよね。

主役の朱里(ドラマでは田中さんぽいけど)よりも、
格上じゃん。

ということは、
キャスティングの目論見としては、
朱里よりもダンス教室の話をメインにして、
生駒里奈を活躍させようという布陣であることがわかる。
つまり、生駒里奈と木南晴夏の、
ダブル主演ものという目論見だ。

あるいはスケジュール抑え的に考えると、
スペシャルゲストだろうか?

「田中と朱里の友情もの」という企画書を守るならば、
生駒里奈は敵役(アンタゴニスト)を演じて、
生駒里奈vs田中+朱里
という構造にしたかった可能性も読み取れる。

敵がいたほうが話が盛り上がる。
味方が団結するからだ。
生駒里奈は悪女で憎まれ役だったのかも。
三好や笙野をたらし込む役柄だったのかもしれない。
原作でいう、見合い相手のふみかを悪役に仕立てたイメージだ。
笙野も三好も取り込んで、ダンス教室にも土足で乗り込んでくる的な。
そういうかき回しならば、
それを倒して平和なダンス教室になりました、
というオチならば、
未完結原作にも顔が立つかもしれないね。


そして原作者の意向を汲む限り、
これは不要だろう。
「原作でやりたかったことではない」からだ。

しかしドラマ的なラストの盛り上がりを、
生駒里奈vs田中と朱里という対決ものになるなら、
キャスティングの話題込みで盛り上がるだろう。
(それが望まれた結末ではないにせよ、
テレビ的な盛り上がりという意味でだ)

ここに、目論見のかけ違いを読み取ることができる。


そして、
その原作にないキャラクターと展開を2話分確保するための、
「8話分しかない」計算だったのでは?
と邪推する。

数字は嘘をつかないが、
嘘をつく奴は数字を(都合のいいように)使うからね。


すべては予想に過ぎない。


しかし、どう考えても、最初の議論の前提が間違っている。

脚本の素人だと思って、小学館を日テレがだました、と言ってもいいんじゃないか。
だましてないなら、プロとして計算が甘すぎる。
posted by おおおかとしひこ at 18:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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