2024年07月18日

フィクションの主人公は、作者より行動的だ

物語は、行動によって記述される。
行動しないものは物語ではない。
行動なきところ状況変化はなく、それはただの定常状態である。

物語とは、
定常状態に行動を起こして状況を変え、
それが波紋を呼び、
いろいろあって、
ついに定常状態を変えるまで(最低限自分の幸せの確保で、
最大限世界平和)をいう。

で、
この時、行動の主体=主人公は、
大抵作者自身よりも、
積極的で行動的でなければならない。


なぜなら、
きっと作者は行動的でないからだ。

行動的ならば、友達も多く、
その付き合いでいっぱいで、
世界を変える組織をつくり、
ウクライナ戦争を止めて、
少子化に歯止めをかけているだろう。

現実にはそんなことできないにせよ、
物語の中ではそんなことが起こる。

あなたは行動的ではない。
だから机の上で妄想し続け、
外にも出ないで机の上で妄想を書き続けている。
行動的ではないから、
集団の中でも一歩下がった位置にいて、
観察する立場にいただろう。

あなたは行動的ではない。
もし行動的ならば、
異性にアタックしまくってモテモテであり、
就職面接はガンガンアピールして人事と友達になり、
今頃会社を立ち上げて、世界征服に乗り出している。

架空の世界でじっと妄想してる暇はない。
架空の世界をたくさん見て、時間を潰せるだけの余裕はなかったろう。

あなたは行動的ではないからこそ、
たくさんの名作を見て、分析して、
そして暗闇に新しい物語を書くのだ。

だからあなたは陰キャである。
しかし主人公は陽キャなのだ。


もちろん、陰キャが主人公でも構わない。
だがその陰キャは、
とびきり行動的な陰キャだろう。
スパイとか忍者ものは、そういう陰キャの物語だ。

なぜならば、
行動で世界を変えることが物語だからである。

例外はない。
あったらおしえて。


だから、
客観的に見れば、
行動的でない作者が、
行動的な主人公が世界を変えるさまを書くのだ。

この、行動性のギャップを客観視せよ。

あなたは暗闇の中でじっとしながら、
光の中で走り回る主人公を書くのである。

だから、
行動力、積極性は、
主人公>作者
である。
逆はないだろう。


だから、
ある場面に来た時、
あなたなら逃げてコミュニケーションを閉じて、
部屋に閉じこもって出てこない場面だとしても、
主人公は逃げずに戦う。
孤独に戦うか味方を連れてくる。

あることをやらなきゃいけないとき、
作者なら面倒でほったらかすことでも、
主人公はコツコツとやる。
行動的だからだ。

あなたの基準で世界を見るな。
主人公の基準で世界を見るのだ。



僕は、つねづね、
作者と主人公を同一視することの危険性について語っている。

それは結局、
所詮陰キャの作者レベルに、
物語が閉じてしまうことの危険性だ。

自分でできる範囲までしか物語の可能性を狭めているぞ、
という警告なのだ。

あなたに世界戦争を止めることはできないが、
主人公にはできる。

あなたは世界チャンピオンになれないが、
主人公にはできる。

あなたはヒロインとラブラブになれないが、
主人公にはできる。

行動によって世界を変えたり、
行動を失敗して傷つきながらも、
なお動機のために行動をやめない主人公。

あなたとは違う人種だ。


あなたは他人を書く。
あなたより偉大な人を書く。

物語はあなたのドキュメントではなく、
架空の主人公による架空のドキュメントである。

むしろ自分にできないことをやればいいのに、
なぜ自分並みのちんけな主人公しか書かないのか?

世界を変えること、成功することへの、
観察と分析が足りないからだ。

そしてそれを認めてしまうと、
それができてない自分の惨めな姿に跳ね返ってくるからだろう。


だから、
自分の成功を夢見ないことだ。
架空の主人公が架空の成功をするさまを応援せよ。

脚本家だろうが映画監督だろうが、
たかが河原乞食の一人に過ぎない。
作品がいかに偉大でも、あなたは偉大ではないぞ。

架空の主人公の架空の行動と架空の挫折と架空の立ち直りと、
最終的な架空の成功が、
偉大なだけだ。


「尊い」という腐った人たちの言い方はわからなくもない。
「自分にできないことをやる人」を、
みんな見たいのだよ。


あなたは尊くない。知れてる。
だけど、
主人公は尊く、その冒険は尊い。

あなた自身よりも、主人公の実在のほうが強い。
それがフィクション作家である。
posted by おおおかとしひこ at 08:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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