2024年06月15日

四角いフレーム

Twitterから。
> 世界を四角く切り取るカメラというメンタルモデルが登場してからというもの、人間の視界は四角形になってしまったのではないか、という疑いを個人的に持っている
https://x.com/knshtyk/status/1801165467685687494

そのことを学生時代に思ったので、
「丸いフレームの映画」をつくったことがある。


まああくまで実験レベルなので、
ストーリーがちゃんとあったわけではないけど。

わかったことは、
「肖像画の楕円フレームみたいになる」ってことだね。
それで世界が大きく変わるとかではなくて、
まあなんとなくぼんやりした世界だった。

逆にいうと、
フレームが四角になったことで、
「我々は世界をしっかり把握した」
のかもしれない。

そもそも動画以前の絵画だって、
色んなフレームがあったよね。
楕円だけでなく、不定形の壁画もあった。
それが四角に収束したのは、
「我々は世界を四角で整理した」
という体験があったからではないか、
と思う。

つまり、四角以前は整理されてなくて、
四角によって「整理という把握」があったのでは。

遠近法、透視図法なんかは、
垂直水平を整理することで、
「世界を整理して把握する」ことだよね。

そんな風には、四角フレーム以前はなかったのだ。


さて、じゃあ、
VRみたいな四角いフレームでないものは、
それをどう開放するのか?

答えは「散漫になる」だ。
「どこを見ていいかわからず、
注意散漫になる」が結果。

我々は世界を四角く切り取ることで、
ぼんやりしたものを整理したのに、
その四角の枠を取ると、
またぼんやりした世界に戻るのよね。

分かりやすい例が、AVのVR。
一人の女だと集中しなくて、
変なところ見てることがあるよね。
だからAVのVRが一番向いてる素材は乱交もの。
色んなところに集中力を散らしておもしろい、
に過ぎない。

そして思うことは、
「いいやつを見逃したのでは?」
という不安が残るってこと。

四角いフレームは、
散漫になる世界に対して、
「ここ見るところですよ」
「ここがベストですよ」と、
整理して渡す行為なのだ。

仮に乱交があったとして、
「見るべきプレイ」にカメラを向けて、
今どうなってるのかをベストアングルで見せることが、
乱交(ふつうの)AVの手腕というものだ。
この、編集行為があると、
「我々は乱交プレイの中でベストの瞬間を(おおむね)目撃できた」
と信じられる。

これによって安心して、
「ベストの世界に集中できる」
になるのだ。

これを解るために、
四角くないフレームで実験するといいよ。


四角いメンタルモデルを考える前に、
スマホの前に黒紙をかざして動画を撮ればいいのに、
なぜみんなやらないのかがわからぬ。

やった人間だけが、本質的な映像作家になれるのかもしれないが。


楕円フレームでわかったことは、
「代表的な構図が使いにくい」こと。
絵で起こってることを整理するための、
いくつかのアングルが使えなくて、
「何が起こってるかわかりにくい」ことがわかった。

これは丸いフレームで漫画を描いてみればわかることでもある。


また、漫画は必ずしも16:9や1.85:1の、
横長のフレームを使用しない。
縦長や斜めの「整理」の仕方をすることもある。
漫画が実写になりにくいのは、
この「整理の仕方」が同一になれないことも含むのよね。


僕は、
四角いフレームが四角いメンタルモデルを発生させたとは考えていない。
そもそも「人の整理」が四角のメンタルモデルを要求するようにできている、
と考える。
数学は直交軸が基本だし、土地は四角だし、
建築も直角が基本じゃんか。
絵画や映像以前から、人は四角で整理するはずだ。


ちなみに、
テレビが4:3から16:9に移行したとき、
「内容の整理の仕方」が変わると僕は感じて、
テレビが嫌いになった。

テレビのわかりやすい整理が、
映画のような深い整理になってしまうが、
それは電波のような手軽さから遠ざかるぞと。
腰を据えないと整理できないから、
それほどのものを用意しないと振り向いてもらえないぞと。

ざっくりいうと、16:9は縦書きの文章で、
4:3は横書きの文章に近い。
じっくりとちゃんとした文章を、16:9は要求する。
にも関わらず、
そのことに気づかずに、
16:9の画面に4:3レベルの軽薄な内容を流してるから、
スカスカに見えるんだよ。

結果、今テレビは凋落の一途だね。
でも16:9を量産するほどの時間と予算と実力がないから、
もう無理なんよな。

僕はテレビがV字回復するには、
「4:3に戻すこと」だと考えている。
でももう誰もやろうとしないだろう。
だから詰みなのよ。



じゃあ、映画で伝えられる世界の整理とは?
1.85:1で絵を描いてみなさい。
100枚も真似すれば大体わかる。
ここまでしかできない、という範囲があるのよね。
だから、「内容で深掘りしないと満足しない」
とわかるようになるぞ。


スマホの縦型動画なんかをやればわかるけど、
これはこれでまた世界の整理がかわる。
(ざっくりいうと主観的になり、他人が存在しなくなる)
posted by おおおかとしひこ at 08:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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