2024年07月24日

取材の重要性

取材しよう。
ネットで調べることはもちろん、
現地にいって、経験者の話を聞こう。
「あなたが知らない現実」を知るためだ。


どんなに想像したって、
想像の外の世界のほうが広い。

想像の世界はあり得るかどうかふわふわしているが、
現実にある世界は、
「それがほんとうにある」という意味で、
「成立している」現実だからだ。

想像の世界は、
一応無矛盾で成立しているようにつくるものだが、
色んな角度から見たときに、
突っ込みどころがない保証はない。
しかし現実というのは、
現実で成立しているものだから、
説得力があるように出来ている。

僕はそれまでスキーにはまったく興味がなかったのだが、
スキー競技経験者と話をしていたら、
高梨沙羅がすごい、という話を聞いた。

あの人、
スキージャンプの滑降のときに、
凹んでいる溝の横に一切触らないんですって。
ちょっと横に滑ったらガンってぶつかって、
その分摩擦があって、
それでスピードが落ちるから、
それを嫌って、
絶対板を横滑りさせないように滑っているらしい。
その板のコントロールがうまいから、
初速があってジャンプできるのだそうだ。
そのコントロールが一流だから一流なんですって。

へえ。

そんなところにリアリティが潜むわけさ。

そんなの、想像で思いつくわけがない。
それが現実の強さだ。

高梨沙羅は横に当たらないんだぜ、
なんて思いつきもしないが、
説明されればなるほどすごいってなる。
それが現実のすごみだと思うんだよね。

僕らがストーリーの構成やセリフやキャラクター造形に、
細かく気を配っているのと同様に、
高梨沙羅はコースの溝に気を配っているのだ。


人間の注意力は有限だから、
集中した部分にそれは使われる。
どこにリソースを割いているか、
がその人の在り方なのだろう。


貝の養殖をしている漁師さんと話したときに、
大潮が月二回あって、
その時は引き潮が遠くまで引くので、
そのときに貝を撒くんだ、
という話をした。
大潮や小潮をベースに生きていないよね。おれら。
ひょっとしたら女子は生理で月の何かをベースにしているかもしれないが、
俺らは家賃とか給料くらいしか、
「月」を意識することはない。
異なる人たちで意識は異なるわけだ。


もちろん、
これらの何かをどうやって話に組み込むかは腕だ。

月に二回ある何かをイベントとして入れたり、
スキー板の横にマッチを取り付けて滑らせる、
とかは考えられるが、
それがうまく組み込められるかはなんともいえない。


だけど、知られていないリアルを知っていると、
「新しい嘘がつきやすい」ということは、
覚えておくといいだろうね。

想像ベースで新しい嘘を考えると、
どうしても抜け穴があったりするからね。


取材はしよう。
できるだけ自分と関係ない人々の話を聞くと、
面白いことがみつかる。
おれらは職人畑だから、
事務職の人の話を聞くのもおもしろいんだよな。

自作キーボード界隈だと、
エンジニアのリアルが聞けて、
想像じゃ思いつかないリアルが転がっていることが分かる。
その人たちにはそれが日常リアルなんだけど、
取材しない限りそれは想像では無理、
ということがたくさんある。


まあ、それらが即使えるかは分からない。
でも「へえ」をたくさんためておくと、
いつかそれを使うときが来る。


マタギがどうやって照準を決めて撃つのかとか、
朝早い職人が寝坊したときどうするのかとか、
どうでもいいことがたまに疑問に思うときがある。

ググれば済むのかもしれないが、
もっとリアルは実際の人からしか出てこないよね。
調べられないものは、その人に聞くとよい。
「すいません、ちょっと話を聞きたいんですが」
から始めるしかないよね。

それで聞いた雑多な知識は、
雑多な知識として格納しとけば良い。

大事なのは好奇心かな。
へえ、って思うことだ。
映画ってそもそも好奇心で見るものだよね。
posted by おおおかとしひこ at 07:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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