飯の問題は死活問題。
最近現場の飯のクオリティは下がる一方だ。
https://news.livedoor.com/lite/article_detail/26649385/
もともとロケ弁というのは、
職人たちに施工主が振る舞う文化から来ている。
もちろん自弁でもいいのだが、
同じ釜の飯を食うことで仲良くなり、
連帯感が生まれるのでとてもよい。
また、ロケ弁だと休憩を短縮できることもデカい。
8時間しか撮影できないときに、
どっかへ行って飯食って帰ってきてください、1時間で、
というのは結構あやうい。
スタジオは土地の広い僻地にあるし、
都内の人通りの多いところでロケしたら迷惑なので、
ロケは郊外が多い。
となると飯屋まで行ってこいで30分、食事30分、
でいけるか、という問題もある。
だから、
施工主が飯を振る舞うかわりに、
現場から動かず仕事を続けられる、
というメリットばかりがある。
ところが、
施工主のご予算が下がってくると、
どうする、という問題だ。
かつては一食無限OKだったCM撮影の弁当は、
上限2000円までになり、1500円、1200円に下がってきた。
最近物価上昇に合わせて1500円に戻ったっけ。
お茶代、お菓子代を入れるとわりとカツカツですね。
(お菓子が現場にあるのは、
飯時間が撮影の段取りによっては時間通りに食べられないからである。
お菓子で24時までしのぐことも、ままある)
CMの場合、キャストに高いギャラを払っている
(年間数千万の契約費に加えて、当日撮影料100万円とか)手前、
キャスト用弁当は豪華だろう。
2000〜3000円はある。
ただ、現場の予算総額は決まっているため、
その分スタッフの弁当が安くさせられる。
つまり、キャスト弁当とスタッフ弁当は別発注だ。
エキストラなんかはさらに下のクラスの弁当だったりする。
僕はその見栄に意味がないとずっと考えている。
働くべきスタッフにいい飯食わせろよなと。
まあ、ちょっとスタッフ用弁当が下がっても、
キャストが機嫌良くニコニコしてくれてれば、
現場はスムーズなので、
それは必要経費としても問題なかろう。
どうせ撮影は一日だし。
問題は、
長期撮影のドラマや映画だ。
風魔は金がなかったから、
弁当も安かったなあ。750円くらいだったと思う。
朝ご飯は300円くらいに見えた。
それも最終回近辺は出なくなったね。
朝8:00集合なら朝ご飯出さなくて良い、
なんてルールがあって、各自食ってこいになってた。
いや、6:00集合にしてカットたくさん撮らせてよ、飯抜きでいいから、
とずっと思ってたものだ。
映画「いけちゃんとぼく」の撮影では、
トンネル内のライティングが結構かかり、深夜までのびた。
深夜飯がわりに制作部が山奥から都会に戻って、
マクドナルドの100円バーガーを差し入れてくれたが、
一人一個しかなくて、かえって腹減ったものだ…
こんな悲惨な飯状況で、
「いいもの」はつくれるのかなあ?
予算があれば、
いいカットを撮るだけの機材がレンタルできる。
いい照明をつくるだけの時間が増える。
(職人たちのギャラは日払いのため、
なるべく一日でたくさん撮るから絵が安くなる)
予算があれば、
世間並みの飯が食えて、モチベが湧く。
かつては映像業界は世間よりいい飯食ってたけど、
長引く予算削減で、
世間様より酷い飯を食ってるのが現状だ。
見るにみかねた高級取り
(売れっ子カメラマン、売れっ子芸能人、
売れっ子スタイリストなど)が、
差し入れをしてくれることがある。
差し入れ文化は職人のモチベをあげるが、
毎回期待するわけにもいくまい。
現場は当日何人来るかわからないし、
弁当食ってってくださいよ、と飯を振る舞うお客さんも来ることがあるから、
多めに発注して廃棄、というのが基本だった。
だがSDGsとか言い出して、廃棄を減らせとお達しが来る。
じゃあもう自弁でええやんけ。
などと、
結構な飯悲惨状態になりつつあるのが、
現状だ。
じゃあ、飯を豪華にする代わりに、
機材費減らしていいですかと聞かれると、
機材費に回してくれ、とみんないう。
いい絵を作りたいからね。
やりがい搾取は、こうして起こるわけさ。
僕は、こうした状況まで施工主が把握するべきだと思う。
その上で、いくら作品に投資するか決めて欲しい。
高知県の山奥のトンネルで食った、
100円バーガーの味は忘れられないな。
すぐなくなって、
「誰だよ2個食ったやつ!」って喧嘩になってた。
それでもそれを絵に出さない職人たちを、
僕は尊敬している。
そしてそんな職人をないがしろにしている、
施工主はたくさんいる。
もし施工主が知らないのなら、
間で情報を中抜きしてるやつがいる。
世直しをするには、
一番偉い人が庶民のふりをして庶民に溶け込み、
悪い代官に目星をつけるのが、
昔からの日本のやり方ではなかったか。
庶民からは変わらないのがこの国よな。
ちなみに、
ハリウッドの場合は組合が強く、
毎年条件をアップし続けてくれる。
組合費はそこそこするが、
条件が悪いなら一斉ストライキをすることもある。
(ちょくちょくニュースになるよね)
日本にそれはないので、
搾取され放題が今だね。
もっとも、
映画は資本主義の権化だ。
だから搾取が行われすぎて、
アメリカでは組合で自衛しなければならないほど酷かったのだろう。
日本では昔から、
「生かさぬように、殺さぬように」搾取するのが基本だ。
それが、そろそろ限界を下回りつつある。
Netflixは予算があるってさ。
脚本開発に一年とかざららしい。
何も作ってなくてもその脚本家に開発料という名の一年働くギャラが入る。
開発料出ないなら無職で一年働くことになるからね。
そりゃ面白いものができるよ。当然だ。
安心して働ける環境がないと、
人は縮こまったままになるからな。
2024年06月22日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック