ためしに、今書いているやつの予告編をつくってみるのだ。
そうすると、見えてくるものがある。
もちろん、動画でつくるのではなく、
テキストで考えるといい、ということだ。
あるメインのセリフを抜き出すことになるだろう。
すごいアクションを抜いてくるだろう。
息抜きのギャグみたいなのが最後に挟まれるかもしれない。
緩急をセリフでつけることになるかもしれない。
ゆったりとした間から、絶叫をつなぐかもね。
それに字を乗っけることも出来るよ。
「万年ロートルボクサーに訪れた、
最大のビッグチャンス……!」とタイトルを乗っけて、
「俺に全盛期はなかった!」というセリフに繋ぐことも出来るわけだ。
もちろんこれは「ロッキー」の予告編をつくろうとしている。
そのあと、エイドリアンとのラブロマンスにつないでもいいよね。
予告編では時系列をバラバラにできる。
ハイライトをうまく抽出して、
いい感じにバラバラにしていくとよい。
意味のバラエティを編集する感覚だ。
さあ。
あなたの物語は、
どういう予告編になるだろう?
どういう導入をして、
どういう面白そうだな、があり、
どういう映画のジャンルかわかり、
そしてどういう締めで、期待をマックスにさせるのだろう?
まだ完成もしていないものの予告編をつくるのは、
遊びでもあるが、
実は客観的な視座に立つことでもある。
「これはどのように見せるのが最適解か?」
を考えれば考えるほど、
「そもそもこれはどのように見えているのか?」
を見なければならない。
それに気づくために、
「予告編をつくってみようぜ」という遊びを、
やってみると良いのだ。
今書いている話では、
「北の大地で、静かに炎を燃やすやつがいる」
という導入のタイトルを入れることにした。
なかなかキャッチーな導入だ。
つまりこれを思いついた時点で、
この話は、寒い北の風景と、
登場人物の情熱とを対比させたものなのだ、
という本質に気付くことができるわけだ。
自分が思ってもいなかったことを、
予告編をつくってみることで気づくことがある。
無意識では考えていたことかもしれないが、
あえて人に説明する、ということをやってみると、
こうしたことに気付けるわけだね。
自分のものの例では、
そうか、寒いところでは情熱の炎が対比的によく見えるな、
という発見だった。
自分がなぜ寒い大地を舞台にしているのか、
理由が分った気がするからだ。
自分は人の情熱が書きたいのであり、
それを表現するために、
わざと寒い所へ放り込んだのだな、
という無意識に気づくことができた。
なるほど、じゃあ、寒い風景と人物を、
対比した場面をつくったほうがいいのでは?
などと、ここから背骨を通していくことが可能になるわけだね。
もちろん、この導入でなくてもよい。
ヒロインのセリフ(これがテーマになる)、
「ねえ、人生は、一度失敗したら失敗?」
と尋ねるセリフから始める手もある。
この場合、失敗した人生のやり直しの話である、
という導入になるわけ。
あるいは、今書いているクライマックス直前での、
ライバルとの会話、
「俺は、お前がまた落ちねえかなって思ってる」
「俺も、お前が一回落ちればいいのにって思ってる」
から始めたり、
これをエンドに持ってくる、
ということを考えても良い。
なんにせよ、
「見ている人や登場人物の感情が高まって、
しかもキャッチーなポイントはどこか?」
を探すときに、
予告編をためしにつくってみるのは、
とても有効な手段だということだ。
もし絵が描けるならば、
それをコンテ形式にしてもよいし、
コンテが無理ならば、
ポスターをつくってみてもよい。
そうしたら、
キャッチコピーを書くことになるだろう。
キャッチコピーを書くことは、
その作品の本質に迫り、
その作品をキャッチーに見せ、
しかも落ちをばらし切らず、
面白そうと思わせなければならない。
これを短く書ければ、
もっとも作品を客観的に見たことになると思う。
(それがとても的確で良いキャッチコピーならば)
単純に、
予告編を見るのって楽しいよね。
ああ、映画だーって気になるよね。
自分が書いた名セリフが連打されるのを見るのは、
なかなかに爽快なものがある。
つまり予告編とは、
上手なダイジェストだともいえる。
うまく圧縮して本質を抽出して、
ダイジェストとしてよいものをつくりながらも、
ネタバレを避け、
しかしキャッチーなところは残し、
ということをやらなければ、
いい予告編はつくれない。
それってつまり、
その物語の構造がちゃんとわかっていて、
しかも外から見て面白そうだと判断できる、
客観性がないとできないわけだ。
すべての要素がしっかりしていないと、
いい予告編にはならないだろう。
だから、
それをつくることで、
「ああ、自分には〇〇が足りていないぞ」と、
チェックするときに使えるということだ。
「ああ、予告編に使えるほどのいいセリフを書いていないなあ」とか、
「絵になる場面がないなあ」とか、
「案外コメディリリーフが足りていない」とか、
「何かを対比させたいのに、足りない」とか、
「テーマを象徴するシーンってあるかなあ」とか、
「ヒロインの可愛い所とかないな」とか、
「そもそも何が言いたいんだっけ?」とか、
「なんか盛り盛りすぎて、お腹いっぱいになる」とか、
「他のたくさんの予告編に混じっていたときに、
何かひとつだけ持って帰ってください、となると、
何だろうか?」とか、
考えることになるわけだ。
それを考えることで、
作品の枠の外に出て、
客観的にとらえて、
リライトの指針にできるわけだね。
その意味で、
「予告編をつくろうぜ」ということだ。
2024年06月28日
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映画の予告編で
本編は置いといて
お勧めの予告編を教えてほしいです。
何の記憶にも残ってないですね…
予告編なんてそんなもんじゃないですかね。