ストーリー全体を図のように俯瞰したい。
昔からずっと思ってきたことだ。
図のように示すことができたら、
色々とリライトの試行錯誤をすることが可能になるのでは?
と考えているからだ。
その新しい方法を編み出したので、メモする。
「縦と横のメソッド」と名付けた。
ストーリーを俯瞰する方法はいくつかある。
【あらすじを書く】
文章であらすじを書く方法。梗概などもそれ。
オチまで書くことで、
大まかには何が本質なのかをあぶりだすのにちょうどよい。
800字、1200字など制限を設けると、
大事なところだけを抽出できるだろう。
ただし、リライトの役に立つとは限らない。
全体を見ることは出来るが、
リライトに使いたいのは、
全体と部分の関係がもっと詳しく見れるものだろう。
【ログラインをつくる】
一行であらすじを書く。
かなり本質に迫らないと難しい。
うまくログラインを書けてないときは、
ストーリーそのものが適当な時か、
ログラインを書くのが下手なときだ。
俯瞰するには役に立つが、
リライトにはあまり役に立たないかもね。
「これをこのようにリライトすると、
こういうログラインだったものが、
このようになる」という予測には役に立つ。
本質を残すのか、改訂するのか、
という大きな構造をみるときには良いかもだ。
【ストーリーラインを色分けする】
言葉を読まなければならないと、
図としてよりも文章として認識してしまい、
眺めるのではなく読んでしまう。
これでは図示にならない。
なので言葉を配して、色の糸だけで考えるやりかた。
のちに述べる縦と横のメソッドは、
これを発展させて、
縦の位置と横の位置だけ見ればストーリーを図示できるため、
色を不要にしたやりかただ。
【シーン名だけを抽出して、分数を横に書く方法】
以前論じた。
僕は基本的にこれをずっと使っている。
シーンの前やあとに「今何分か」という分数を書く。
「〇分で〇が起こる」という書き方だと、
そのシーンの何分かまでを調べないといけないが、
「〇分から〇分のこのシーンでは、〇〇が起こる」
という風にだけ調べておけばよいので、
分数を把握しやすいのがよいところ。
また、シーン(柱)の横に、
大事なエピソードや重大な出来事があるなら、
併記しておくと、全体を俯瞰するときに役に立つだろう。
基本的には、
一幕、二幕前半、二幕後半、三幕、と、
4ブロックにわけて書くのが全体を俯瞰しやすい。
また、これに対して、
起伏のグラフを重ねても、分りやすいのであった。
その起伏のターニングポイントが、
ストーリーのターニングポイントであるか、
チェックしやすくなる。
そして、より劇的にするべきか、
それともマイルドにするべきかも、
計算できるに違いない。
ただ、やっぱり「文字を読む」が発生するため、
図を見て、図をいじってストーリーを考える、
には、まだ遠かった。
そこで、縦と横に役割をさだめて、
その位置とその近辺を眺めれば、
図としてストーリーを理解できるもの、
を編み出した。
それが以下のものである。
【縦と横のメソッド】
縦軸と横軸でストーリーを俯瞰する方法。
今回書いた話の例で。
縦軸には各キャラクターのストーリーラインを書く。
つまり、
主人公青山、ヒロイン千佳、ライバル火野などから見たこのストーリーである。
重要なポイントを押さえ、
それらの起こる順番は、
ストーリーの起こる順番に、上から下に書く。
そのとき、前につくった表から、
その出来事の分数を書き込むとよい。
分数ごとに縦に並べる。
そのキャラの出番がないところは空白になる。
各キャラクターのぶんだけ、この縦のグラフは存在するだろう。
たとえば、
右端に、名脇役である久我原のストーリーラインがある。
根幹に関わってくるほどではないが、
ちょいちょい重要な場面にいぶし銀のように絡んでくることが、
このグラフからわかるだろう。
また、
主人公には複数のストーリーラインがあったりする。
第一に重要なものはメインプロットのストーリーラインだが、
他にラブストーリーや別のストーリーラインがあることがあるだろう。
主人公青山に関しては、
メインプロットと、妻子のラインの二本がある。
ヒロイン千佳に関しても、
青山とのことと、闇の取材という仕事のことの二本がある。
主人公以外も複数のラインを抱えていることがある。
ライバル火野も、自分のラインと薫のラインを抱えている。
それごと、すべて図示できるのがこのメソッドのポイントだ。
さて、これらを横に並べる。
横軸がキャラクター、縦軸が時間や出来事、
というものができよう。
各キャラクターから見て、
ストーリーが縦に同時進行しているような、
表になっているだろう。
そしてここからがキモだ。
あるエピソードでキャラクターAとBが絡んだとしよう。
そういうときに、ABを横線で結ぶのだ。
つまり、このグラフには、
縦にストーリーライン、
横に「絡み」が図示されることになるわけ。
見た目的にはあみだくじみたいな?
時間軸は同時に進む。
絡んだ時だけ横が関係するみたいな。
また、今登場していないときは、
単なる縦線で描かれる。
この間別のことをしてるかもしれないし、
進捗がないかもしれない。
今登場している人たち(表)と、
登場していない人たち(裏)を、
分別できるのだ。
で、重要なエピソード順に、
なるべく太い囲みで囲む。
序列をつけるべきだ。
各幕のラスト、
第一ターニングポイント「とべた」、
ミッドポイント「落下」(かりそめの敗北)、
第二ターニングポイント「吹雪」が、
最重要なポイント。
これに追加して、
冒頭の事故と、ラストの「まだつづきがある」を、
最重要ポイントと考える。
これが背骨になり、
その他重要なエピソードが散りばめられ、
ぶら下がっているイメージだ。
ここほど重要ではないが、
重要なエピソードも、まあまあ太めの枠で囲んで、
目立つようにしておく。
そしてそれらのたびに、
横糸(各キャラクター同士の絡み)があると。
縦軸をくわしく見てみよう。
バックストーリー、
ACT1、ACT2-1、ACT2-2、ACT3
と、5ブロックに分かれている。
バックストーリー、すなわち、
ストーリーが始まる前にあったこと
(それは回想やセリフの中で語られる)は、
各キャラクターの時系列順に並んでいる。
それはそのキャラクターの生きる動機や、
行動する動機になっていることが多い。
ACT1からが三幕構成理論に従って、
ブロックわけしたものだ。
つまりACT1の終わりには第一ターニングポイントが、
ACT2-1の終わりにはミッドポイント(この場合、かりそめの敗北)が、
ACT2-2の終わりには第二ターニングポイントが、
置いてある。
もちろん、真ん中の青山のメインプロットが重要なストーリーラインで、
エピソード数も多く、重要なものばかりなのだが、
それ以外にも、
他のキャラクターのストーリーラインで、
重要な出来事があることがわかる。
(丸で濃く囲んでいるところ)
一枚目でいえば、
W杯チャンピオンに、とか、崖っぷちとか、
ハッとか、つづきがしたいとかは、
メインのラインで起こっていないエピソードだ。
だが、これはストーリーを駆動するうえで、
とても重要なエピソードなのだ。
(詳しくは脚本を見せられないのであれだけど)
逆に、重要なことはどこで起こっているか?
誰絡みのエピソードなのか?をチェックするために、
これはあるわけ。
主人公で起こっているか、
他のキャラで起こり過ぎていて、主人公が退行していないか、
主人公は立っているが、ほかのキャラがご都合の人形になっていないか、
などのバランスを見ることができるわけだね。
もちろん、主人公以外の、
どの重要なエピソードがそのキャラクターの変化の原因になるかもチェックできる。
主人公だけが変化をするのではない。
重要なストーリーであればあるほど、
他の関わった人物も変化するだろう。
それらを各キャラクターのストーリーラインを縦に見ることで、
チェックできるわけだ。
横に走らせたラインが、
各キャラクターの関わりを示している。
主人公青山は、妻の薫を挟んで火野と三角関係に陥っている。
とくに浮気と離婚のポイントで大きく絡むことになる。
複雑な感情があろう。
千佳は前半、青山と関わりまくる。
久我原の登場で、三人のチームになる。
火野との関りが途切れたころ、
51分のパスワード事件で糸が再び結ばれるようになっている。
これらを俯瞰したり、
それぞれのシーンの分数をチェックすることで、
これをこっちに移動したらどうなるか、
これらの順番を入れ替えられないか、
何をどう書き直したら、あとにどういう影響がありそうか、
などを事前にチェックしやすくなるわけ。
たとえば1枚目の右下、45分の「草原」のエピソードは、
第一稿ではここの場所にあったが、
第二稿で37分の場所にあがり、
この第三稿でもとの45分の位置に戻ってきた。
第一稿では別のプロットラインになかなか話が変らず、
飽きるんじゃないかと思って、
第二稿ではそれをインサート扱いで上げたんだけど、
それが集中や感情移入を途切れさせ、
邪魔なインサートに見えたので、
もとの位置に戻した格好だ。
それも、
この表をみれば、
絡みと時間との関係性が可視化できているので、
考えやすいのである。
全体を眺めると、
横の糸は最初限られたところだけを編んでいるが、
後半になるにつれて、
左右全体を渡るようになることが見て取れる。
これは、
全体が混ざったようになり、
バラバラな孤立的複数の人格だったものが、
関係を繰り返すことで、
ひとつの社会になってゆく過程を図示できていると思う。
これらを俯瞰することで、
各エピソードの重要度を整理することができる。
もっとも重要なものは、
メインプロットの、
事故、とべた、長野で落ちる、吹雪、まだつづきがある、
という5つだ。
前半では、
千佳に会う、W杯チャンピオンに、滑り台、崖っぷち、ハッ、つづきがしたい、
などが二番手に重要なエピソードで、
後半では、
黒猫、谷口の死、じゃ触るな、がとても重要なエピソードで、
三幕の、落ちねえかな、言うね、長く続く情熱と言ってくれ、
なんかも相当重要なものだとわかる。
逆に、
「このストーリーは、
これらの要素で構成されたストーリーである」
という風に見れるわけ。
全体を、
縦に尺、横に関係する人物として見れて、
しかもどのキャラクターのエピソードかを視覚化できて、
そのキャラクターから見たストーリーも、
視覚化されているわけ。
なかなか優れた道具ではないだろうか。
各キャラクターのストーリーラインをさばく、
ということを考える時、
順番や因果関係がごちゃごちゃになることがまれによくある。
もちろん、頭の中ではある程度整理されているのだが、
リライトでいろいろ動かすことを考えると、
その「つもり」がぶちぶち切れてしまい、
色んな不都合が起きることが多い。
それらを事前にシミュレーションできる道具として、
この縦と横のメソッドを開発した、
という感じかな。
サブキャラの久我原は、
ストーリーに大きくは関わってきていないが、
「つづきがしたい」と、「男としては叶えて欲しい」
というのが、
結構重要なエピソードであることが分る。
たしかにここは久我原にグッと来るところで、
それがここにいるんだなあ、
と俯瞰できる。
前後に移動した場合、前提や感情の流れが変わるから、
やっぱここだなと確認できる。
これをつくるコツは、
主人公を真ん中に置くことかな。
左右で人物関係をわけて、
右側と左側はあまり関係ない区分にすると、
図がすっきりすると思う。
映画というのは、メインキャラクターは、
多くて5〜6人、というのが僕の経験則だ。
だから、最大でもこの図は横に6人並ぶ程度になるだろう。
(全員にストーリーラインが複数あることもないだろう。
ややこしすぎるからね)
映画よりも長いドラマや小説などでは、
横はかなり広がるかもしれない。
その代わり、
各キャラの縦はそんなに複雑にならないかも。
映画という特別な尺のストーリーが、
この表を要求しているのかもしれない。
エピソードは短く書けるのがよい。
名詞ひとつや、短いセリフがよい。
象徴的でないシーンが重要になることはあまりないだろう。
重要なのに短く書けないならば、
それはうまく書けていない可能性が高い。
また、ちょいちょい小道具を使っているのがポイントだね。
そのシーンを象徴するのを、小道具でやっている。
「ああ、ウンコのシーンね」とか、
「クラッカーのシーンか」とかあると、
覚えやすく象徴的になるからだ。
そういうのもチェックできるよ。
ということで、参考にされたい。
これで俯瞰して、
「うん、これでいい」と確認するのにも使える。
大体15分おきに重要な出来事が起こっているので、
あまり退屈せずに見れるだろうなあ、
というのも計算に入っている。
また、先にこの縦横の曼荼羅を書き、
現状の原稿がこうなっていない、
と理想と現実のギャップを埋めるのにも使える。
活用されたい。
2024年08月20日
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