2024年08月24日

物語とリアル

いい場面のときに夕焼けになるとしようか。

どういう夕焼けがいいかね。
オレンジに染まる夕焼け?
真っ赤なやつかな?

しかしリアルを考えると、
そんないい夕焼け、めったに出ないんだよ。


夕焼けというのは一種の奇跡だ。
晴れないと出ないし、
晴れ過ぎても味がない。

もしあなたがカメラをやるならば、
夕焼けを撮ることにチャレンジしたことがあるに違いない。
それで、勝率はどれくらいだった?
3日に1回くらいはいい夕焼けが出たかな?
出ないと思うんだよな。
いい夕焼け、シャシンになる夕焼けって、
月に一回くらいの確率だと思う。


で、リアリティだ。

リアリティを考えると、
いい場面のときにいい夕焼けが出る確率は、
1/30程度だ。
まず出ないわけ。
でも、いい夕焼けが出るドラマチックな場面は最高だよね。

つまり、
ドラマチックと、リアリティは、
1対1/30くらいには違う、
ということである。

ドラマチックは、リアリティを30倍くらい強調したもの、
と数値的にとらえることが可能だ。


どれくらいならば演出か、
という議論がある。
2倍に強調したら作りが入っているだろうか?
せいぜい20%増しくらいに強調するか?

しかし、ドラマチックは、
先の計算によれば30倍に強めているぞ。

1・2から30とは、
ずいぶん幅があるものだねえ。


ファンタジーならますますリアルから離れる、
というのは誰にでもわかる。
しかし、
夕焼けすら、
ドラマチックな強調(確率的に30倍)がなされている。


ちなみに、
僕はよくコンテに夕焼け狙いを書くんだけど、
今まで成功した試しがほとんどない。
二十年やって、数回くらい。
1/30という計算は、あながち嘘じゃないでしょ。
(実際にはプロの技でなんとかドラマチックに見えるようにいろいろやるんだけど)


夕焼けは出ないから、リアル狙いで出ない。
夕焼けは出ないからこそ、ドラマチックな瞬間は貴重なそういう瞬間である。

どちらもほんとうだ。

あなたはどちらを狙っているのか、
はっきりさせることだ。
これをリアリティラインなどと呼ぶ。
それがぶれるのはよくない、
ということが近年わかって来た。

「マントをつけたら空を飛ぶ」のはリアリティではない。
しかし、交通法は空中にも適用できるのか、
航空法の適用範囲なのか、
などを考えるのはリアリティである。
どっちの世界の話なのか、きめておけ、
ということだ。


リアリティを狙っているときに、
急にドラマチックなものが出てきたら冷める。
ドラマチックなものを狙っているときに、
急にリアルがでてきても冷める。

序盤でなるべく世界観を決めろ、
というのは、そういうことだ。

これはドラマチックのリアリティラインの話である、
これはリアリティよりのラインである、
どちらでもよい。
ぶれずに最後まで貫くことだね。
posted by おおおかとしひこ at 07:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック