プログラムピクチャー、馬鹿にできない。
書いた経験を積もう。
プログラムピクチャーとは、
「よくあるベタなジャンル」というやつだ。
よくある設定で、
よくある展開で、
よくあるオチである。
○○もの、と呼ばれることが多い。
刑事もの、医療もの、レスキューもの、
探偵もの、会社もの、
職業もの、
家族もの、恋愛もの、
勧善懲悪もの、ヒーローもの、
ミステリー、コメディ、ミュージカル、
戦争もの、時代劇、
復讐もの、逃亡もの、
どんでん返し、少年もの、
SF、ロードムービー、スポーツもの、
アイドルもの、青春もの。
こういったジャンルは、
きらびやかなオリジナルたちに混じって、
定番の味として一定の需要があるものである。
下手にオリジナルで面白そうと思って失敗するくらいならば、
安定の味の中に少しだけオリジナリティを混ぜればよい、
と考えるわけだ。
はじめての飯屋に入って、
いきなり店長のお任せを頼むか?
まずは豚の生姜焼きとか、
トンカツとかカレーとか、
「知ってる」ものの中から検討するんじゃないか。
それは、観客だけじゃなくて、
製作者も、ということ。
あなたに得意のジャンルがなければ、
上の何かを得意にしてみる手もある。
○○ものといえば○○○だ、書かせてみたら?
と誰かが思うかもしれないぞ。
それは出世というより、確実な仕事を得て、
ルーチンワークになり、
レギュラーワークになる可能性がある。
ただ、それだけだと○○ものの○○○で終わってしまうので、
その中で自分の味を少しずつ混ぜていけばよいのだ。
いきなり人類の味わったことない麺類を発明するよりも、
ラーメン屋で修行して、
少しずつ○○○風を試していけばよい、
という考え方である。
では課題を。
上にあげた「すべてのジャンル」で、
よくある設定をなるべく書き出しなさい。
よくある展開をなるべく書き出しなさい。
よくあるオチを、なるべく書き出しなさい。
これは、あなたの中に使えるパターンがどれだけあるかの、
引き出しの総ざらえをしようとしている。
もしこのパターンが少なければ、
あなたが馬鹿にしているプログラムピクチャーなど、
一本も書けないかも知れないわけだ。
なお、長編2時間を書く必要はない。
15分とか45分でよい。
もちろん2時間書くつもりでも良い。
これが白紙何枚にもなれば、
それが実はあなたのアイデアノートになる。
恋愛ものに家族ものを混ぜたり、
刑事ものにSFを混ぜたり、
スポーツものに復讐ものを混ぜたりすると、
新しくなるからだ。
(青春ものにSFが混ざるのはよくあるよね)
この組み合わせは、
苦手なジャンルの中に得意ジャンルを混ぜると、
書けるかもしれない。
逆に、
得意ジャンルの中に、
小さな苦手ジャンルを七味のように入れても良い。
どれなら書きやすい?
どれなら書きにくい?
それらを調べて、自分の得意不得意をリストアップしておきなさい。
そしたら、
得意を伸ばすために得意ジャンルの名作を見ても良いし、
不得意をカバーするために、
そのジャンルの名作から駄作まで、徹底研究しても良い。
得意ジャンルの伸び代は知れてるが、
苦手ジャンルの伸び幅は結構ある。
まだ未開拓であったわけだからね。
上にあげたジャンルの他にも、
何かあるかな。
全然あると思う。
それらをまた抜き出して、
よくある設定、展開、オチを、
リストアップする。
そうしていくうちに、
一大プログラムピクチャー研究ノートができあがる。
さあここからが本番だ。
あなたのオリジナルの話を書きなさい。
上のどこかのジャンルに似ててもよいし、
似てなくてもよい。
そして、詰まった時に、○○ものを混ぜられないか?
と思うのだ。
それは、主人公のメインプロットとは限らない。
主人公の他にメイン登場人物はたくさんいるから、
サブ人物のサブプロットとしてそれを利用するのだ。
たとえば刑事ものに、家族ものを混ぜてみよう。
殺人事件犯人逮捕のメインプロットに、
犯人が生き別れの母を探している、
というサブプロットを混ぜるわけ。
そうすると、犯人逮捕で有名になってしまったが故に、
母が面会にやってくる、というオチを書けるよね?
そんな感じ。
もちろん別の家族もののパターンを持ってきてもいい。
青春ものを混ぜるとしたら、
犯人は高校生で、
幼い頃からの親友なのだが、
部活でライバル関係になり、
怖い目に合わせてレギュラーを辞退させようとしたが、
怪我させようとしたら死んでしまった、
などのようにしてもよい。
痴情のもつれでもいいよ。
BL的な関係かと思わせて、
相手は普通に女が好きで、とかでも構わない。
いずれにせよ殺人があって解明があって、
逮捕があれば刑事ものだよね。
つまり刑事ものとはあくまで枠組みにすぎず、
犯人や事件の人生を描くジャンルでもある、
とやり始めたら気づくはずだ。
刑事ものに会社ものを入れたのが「踊る大捜査線」。
警察といえども会社で起こるゴタゴタがありえる、
とした観察眼は鋭い。
このドラマのメイン視聴者は、会社員たちだった。
会社で起こる不条理を、刑事もののガワで描いてたんだよね。
このように組み合わせていけば、
新しい味を作れるかも知れないね。
3つのジャンルを混ぜたら新しくなる?
どうかな。
味噌×魚出汁×ラーメンくらいまでが限界だね。
どれかは隠し味くらいになるだろう。
ざっくり味噌ラーメンジャンルに入っちゃう。
ぱっと見分解できなくて、
よく分からないものになりがちでは。
強いものを二つ、くらいでちょうど良さそう。
ヒーローものだが、その中の誰かは生き別れの兄を探している、
くらいはとてもよくあるよね。
(あり過ぎるから別パターンを薦めるが)
このようにして、
プログラムピクチャーが書ければ、
その要素を新しい枠組みの中に放り込むことができるわけさ。
つまり、基本セット、基本パーツみたいなことだ。
それらを全く使ってない、
全く新しいストーリーもつくれるだろう。
ただそれは強度がなく、
ぐずぐずに崩れがち。
既にある骨格を利用すれば、
そこはしっかりするから、
それをベースに飛ぶやり方もあることを、
知っておくと良い。
全く新しいことを目指したくせに、
よくあるパターンのオチになることは、
とてもよくある。竜頭蛇尾ってやつだ。
だったら最初から蛇二匹できちんと太くすればいいのだ。
そのうち新しいオチを思いついて、
結果竜頭蛇尾の数倍良くなるわけ。
結局、プロデューサーたちが安牌かどうか判断するのは、
その入り口だけなのよね。
その関門をさっさと通過して、
安牌で盤石を作ってから飛翔すると良い。
そういう意味では、
プログラムピクチャーはパーツである。
切って冷凍したネギとか、
すでに煮込んでおいたダシとか、
ひき肉とか、
漬けなんとかとか、
煮物とか、
うまく混ぜれば使える、頼もしいやつだ。
2024年09月05日
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