2024年09月09日

対照的な二人が必要

なぜ対照的な二人がいると、ストーリーは分りやすくなるのか。
分りにくいストーリーは対照をうまく使っていないのではないか。


人間は人の間と書く。
人間は単独で存在するのではなく、
人と人の間に存在して、
初めて人間になる。
つまり、人間ドラマとは、ある人間とある人間の間に起こる。
(そして、二人の間だけではなく、別のある人間と、
別のある人間との間にも起こる。
あるいは、人間たちと人間たちとの間にも起こる)

それは、立場も目的も性格も異なる人(たち)
の間に起こる。

対照的なのがよいのは、
差を際立たせやすいからだ。
まったく異なる二人が全く異なるのは、
真逆な時が最大だろう。
だから対照的であることは、まったく異なることを表現しやすい。

だけど、ただ違う、対照的なだけでは、
コントラストがついている絵なだけである。
ストーリーに使うにはまだ足りていない。

テーマと関係ある対照性が重要だと考える。


たとえば。
「怒りっぽい人と、怒りっぽくない人」を用意するとしよう。
それらの差異でもめ事が起こる(コンフリクト)のだが、
今無理やり二人の間でドラマを考えてみる。

A(怒りっぽい人)と、B(怒りっぽくない人)とする。
たとえば、普段Aが怒りっぽくて、
人々から疎まれていて遠ざけられていたとするが、
Bが鬱になりかかっていることを知り、
Aが周囲の人に怒ったとしよう。
Bをみんなで救えよと。
それ自体は褒められることではないものの、
そのことが気づきを与え、
Bが救われた、という話を考えることができる。

これは、対照的な二人の間のドラマである。
あまり褒められた特徴ではない「怒りっぽい」ことと、
その真逆の人に起こったドラマだと言える。

このこととテーマがどう関係するか?だ。
「怒りっぽいことは感情が豊かなことであり、
褒められるべきだ」というわけでもないだろう。
「怒りっぽいことと、怒りっぽくないことの中間を取れば幸せになれる」
という中庸のオチでもあるまい。
二つの対照的なものを扱う場合、
その中点がベストである、というのはつまらない物語である。
対照的なもの、対立するものがあるならば、
それららの軸とは関係ない、第三の軸に結論が行くように止揚する、
というのが物語論におけるアウフヘーベンである。

ということで、たとえば、
「普段短所と思われるものが、長所になることがある」という瓢箪から駒的な結論になるとしようか。
「すべては文脈が決めるのであり、
自分の主観で決めるものではない」ともいえるか。

ということは、これを強化する、
新しいエピソードをつくればいいのだ。
仕事で我慢ならず怒ってしまいそうなAを、
今度はBが助けて謝り、
我慢して仕事を最後まで完遂するように助ける、
という恩返しの場面をつくればいいわけ。
そうすると、
ただ怒ってばかりだと迷惑だし、
ただ怒らないとそれも問題だが、
ものは使いようになる、
という話になるわけだ。

中庸を取らずに、アウフヘーベンするために、
この二つの両極端がある、
と考えるとよい。


とりあえず適当に「怒りっぽい」と「怒りっぽくない」の間でドラマをつくってみたが、
これがテーマと合致するように、
ストーリーをつくっていくわけだね。
テーマから逆算してこの対照をつくる場合もあれば、
逆に面白い対照をつくって、
こういうテーマの話に落とせそう、
と考えることもあるだろう。

あるいは、
最初は対照的でなかった二人が、
あるテーマを描くためには対照的であるべきだ、
という風に、改造を受ける可能性もある。

もちろん、その対照とドラマとテーマの組み合わせの面白みがないと、
詰らないものになるかもしれないが。


そんな風にして、
逆算で対照をつくったり、
ここは対照にしたほうが語りやすいなどと改造したり、
対照だったがあんまり効果がないからやめて、
別の対照部分を強調するなど、
色々やっていくと、
どういう対照とテーマがあるか、練っていくことができる。


あることを描くときに、
その本質の対照的なものを使う時がよくある。

あるスポーツの、
スピードタイプとパワータイプの二人とか、
先日のガラスの仮面では、
役者をするうえで、
本質を掴む泥臭いタイプと、
どのようなものか理解して技術で表現する華やかなタイプが、
対照的に使われている。

答えはどちらでもない。
二つを統合した、もっと先にあるだろう。
だから対決の結果、
相手のいいところを取り入れるようになるはずだ。
posted by おおおかとしひこ at 07:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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