成功しそうなパートのこと、
だと思うとよい。
主人公には目的がある。
それを達成するとストーリーはおしまいだ。
それらを幕の終わりで示すと、
ストーリーは進行していると思える。
それが第一ターニングポイント、
第二ターニングポイントだ。
(明示してもよいし、暗示してもよい)
色んな状況で、
それが成功しそうになったり、
失敗しそうになったりする。
完全な成功はラストだけであり、
他は部分的な成功だ。
小成功、小成功、小成功、
と成功だけが続いてもあきてくるので、
失敗というスパイスをはさんで、
揺さぶるとよい。
これによって、
「次も成功するとは限らない。
失敗するかもしれない。
どうしよう。やるしかない」みたいな、
ハラハラを生むことが出来るわけ。
で、「行けそう」「行けるぞ」「このまま上昇気流に乗れ」
という上向きの部分が、
「盛り上がっているところ」と思うとよい。
映画には盛り上がるポイントがいくつかあって、
それらは、派手な絵だったり、
盛り上がる音楽がかかったり、
芝居が大きくなったり明るくなったりする。
テンポも上がったり、
逆にスローでじっくり見せる絵になったりもする。
劇的な絵が多く、気持ちもハイになるものだ。
だが、シナリオは、その根底を捉えなければならない。
ガワを見るのではなく中身を見る。
何が起こっているか、だ。
派手な絵や派手な音楽がかかるのは、
「成功しかかっている」からだ。
「成功が見えてきた」からだ。
「いけそう」だからだ。
「盛り上がってまいりました」という状況は、
センタークエスチョンの答えが見れるのでは?
ということだ。
三幕のクライマックスが、
なぜ盛り上がるかというと、
「大成功して終わるのか?それとも失敗して死ぬのか?」
というセンタークエスチョンに、
答えが出るからである。
ハッピーエンドの作品ならば、
これ以上ない成功によって終わるからだ。
つまり盛り上がりとは、
「答えへの肉薄」の具合ということである。
それをコントロールするのも脚本家だ。
近づいているぞ、近づいているぞ、
という風にあおったり、
近づいたと思ったら残念でしたー、と離してしまったり、
などをやるということだ。
観客を2時間それで翻弄するのが、
脚本家の仕事なのだ。
で、ただ近づいているだけ、ただ遠ざかっているだけだと、
そんな2時間も興味が持つわけがない。
よっぽどそれに興味があるなら別だけど、
(たとえば自分がやっている仕事と同じ仕事の話とか)
その数は少ないと思ったほうがよいだろう。
じゃあ、なぜ観客は2時間の、
近づいたり遠ざかったりを楽しめるのか?
感情移入によるものである。
主人公や、脇の人物や、
ヒロインや、主要登場人物に、
肩入れをしているからである。
彼らの一挙一動に興味があり、
彼らに成功してほしいと思っているからだ。
そうでなければ、2時間の行ったり来たりの振り子には興味が持てない、
つまり、「つまらない」と感じてしまうに違いない。
登場人物たちが、
わが事のようになっていなければ、
どんな盛り上がりも滑るだろう。
つまり、
目的に近づくぞ、残念でしたー遠ざかるぞー、
という揺さぶりは、
感情移入が前提でなければつまらないということだ。
滑っているならば、滑り続けるぞ、ということだ。
だから、
「盛り上げなければ」と焦って、
目的や成功との距離感を測るのは、
悪いことではないが、
それ以前の問題をクリアしているか、
のほうが重要なんだよね。
もし感情移入が微妙であるならば、
それ以前のどこかのそういうシーンを強力にするか、
あるいは途中どこかにインサートシーンをつくり、
そのワンシーンで登場人物に感情移入させるものをつくるべきだ。
ワンシーンで感情移入させるのは、
最初からそれが出来るならやってるわ、
という難易度のレベルだけど、
何もしていないよりマシだと思うよ。
どうやって感情移入させるのかは、
以前にもさんざん書いた。
好きにならせてもよいし、感情移入させてもよい。
感情移入は、
「私はこの人とは違うのだが、
この人と同じ立場に置かれたら、
同じような気持ちになるだろう」
という観客の想像によって働くのである。
あるいは、セーブザキャットテクニックを使ってもよい。
「案外いいやつ」というエピソードをつくるのだ。
(save the catは、子猫を助けるような場面、という意味だ。
不良が空地の捨て猫を拾う場面と似たような意味だね。
別に猫を出さなくても、
この人は思ったよりいい人かもしれない、
という場面であればなんでもよい)
考えていることで示してもよいし、
行為で示してもよい。
その人がいい人かどうか、試すものをぶつけてもよい。
そうすることによって、
「その人のことが少しわかる」
というシーンにするといいだろう。
理想はストーリーの進行と同時にやるのがいいが、
それが出来ないのなら、
せめて感情移入に至るようなエピソードを優先させるのがいいだろう。
もし、その人に興味がわき、
その人の行く末が気になってきたら、
やっとその人の成功や失敗に興味がわき、
いつの間にか夢中になっていて、
盛り上がるところで盛り上がってくれるのだ。
2024年09月14日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック