キャラクターの印象しか残らず、
ストーリーの印象は残らないのだと仮定すると、
メインストーリーやテーマよりも、
キャラクターのストーリーラインから見るべきなんじゃないか?
僕は、
2時間映画では、メイン登場人物は、
せいぜい5〜6人程度であるべきだと考えている。
それぞれにストーリーラインを持つから、
5〜6本のストーリーラインをさばけばよい。
だが、一人一本というのは珍しく、
主人公(クラス)は2〜3本くらい持っていることもあるので、
多くて10本のストーリーラインをさばけばよい、
というのが劇場用映画を考えること、
のようにとらえてもいいかもね、という話だ。
一本のストーリーラインには、
バックストーリーや前提、
目的や動機、
行動、
そして結果をもつ。
メインストーリーが殺人事件の解決だとしても、
犯人の動機には「ふられたことの復讐」だったりして、
殺人事件の解決と、
ふられたことの復讐という2本のストーリーラインがある、
ということだね。
主人公でも、
仕事でのトラブルを解決するストーリーラインと、
家族やプライベートのことを解決するストーリーラインの複数が走ることがよくある。
一番よくあるのは、
ヒロインとのラブストーリーの進展と結実だよね。
つまり、
それらの5〜10本のストーリーラインが、
同時進行して、
それらをうまく解決させることが、
劇場用映画を書く、ということだ、
と考えると、わかりやすいのではないか。
典型的な脚本論では、
メインプロットだけを追いかけていて、
それらが三幕構成を持ち、
設定、展開、解決を持つ、
などのように議論されていたが、
どうもそれが精度が低い気がしていた。
まあ初心者向けだからかなあ、
などと適当に流していたのだが、
本格的に書くには、三幕構成理論だけじゃ全然足りないなあ、
という思いがあった。
この、各ストーリーラインの整理、
ということを考えると、
話が考えやすいかもしれない。
それぞれのストーリーラインは、
はじまり、展開、おわりを持つ。
それぞれのストーリーラインは絡み合う。
つまり、
あるストーリーラインの展開が、
他のストーリーラインに影響したりする。
浮気女が家庭や仕事場に乗り込む、なんてのは典型だ。
仕事をしている間、
彼女に会えないのもそういう展開だ。
また、
それぞれ別に結果が出るよりも、
ある結果が、同時にそれぞれのストーリーラインの解決になっていると、
とても気持ちよい。
メインプロットの解決と、
主人公の内的問題の解決が、
同時に起こるべきだ、
というのは、
メインのストーリーラインにおいて必須だけど、
他のサブのストーリーラインでも同じだぜ、
ということではある。
勧善懲悪ものだと、
悪役の敗北というストーリーラインの結果と、
主人公の勝利というストーリーラインの結果は、
同時に出るわけだよね。
だから対決ものはおもしろいわけだ。
一方の勝利と他方の敗北が、
同時にきまるわけだからだ。
同時にストーリーラインの結果が出るのは、
シンクロというか、気持ちいいわけだね。
このようにして、
ストーリーラインたちをさばく、
という意識で、
ストーリーという束を見直すのもとてもよいと思った。
事件よりもキャラクターなんじゃね?
という前記事を書いて、
よりそのように思えてきた。
結局、
各キャラクターが幸せな結末を迎えたかどうかが大事で、
事件そのものが解決して世界が幸せになったかは、
結構どうでもいいんじゃないかなあ、
と思ってしまったんだよね。
なので、キャラクターのストーリーラインを、
重視した脚本論があってもいいんじゃないかなあ、
なんて思った次第。
前に「縦と横のメソッド」を紹介したが、
そういうことだと思っている。
真ん中にメインプロットを書き、
これが従来の三幕構成理論だとすれば、
横に広げたストーリーラインたちは、
これらを、どう背骨周りでさばくか、
ということを考えた図だということになるわけだね。
もちろん、たかがメインプロットすらさばけない実力の人間が、
5〜10本のストーリーラインをうまくさばけるはずがない。
だから、短編を書いて練習するのだ。
短編ならば、1本で済むからね。
2本、3本のラインを絡ませる話も書けるだろうね。
メインがちゃんと数名いれば、
それぞれはどうなったのか?
納得いく形で終ったのか?
同時に解決したか?
なんてことを考えらるからだ。
そういえば、ノーランの脚本は、
いつも「別々の場所で起こっている複数のストーリーラインが、同時進行する」
という形式をとっていることが多い。
別々の場所でほとんど絡んでいないわけだから、
ストーリーラインを絡ませるのがこの脚本家は下手なんじゃないか、
ってことだと思うわけさ。
同時進行するストーリーラインで絡まないならば、
たとえば3本脚本を書けば済むだけの話だからだ。
それをバラバラにしてサンドイッチにしてるだけやんけ、
という批判もできよう。
というわけで、横と縦の糸をどう絡めるのか、
どうやってそれを見せると面白くなるのか、
を考えればよい。
それは、
各キャラクターから見たこのストーリーを、
ちゃんと面白くすること、
ということになるだろう。
そして、
各キャラクターのストーリーをおもしろくしつつ、
全体から見た俯瞰的におもしろいこと、
各ストーリーラインが影響しあったり、
そしてメインが一番面白くなること、
などのようにしていくことが、
脚本をさばく、ということになるのかもしれない。
2024年10月13日
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