2024年10月13日

キャラクターのストーリーラインで考える

キャラクターの印象しか残らず、
ストーリーの印象は残らないのだと仮定すると、
メインストーリーやテーマよりも、
キャラクターのストーリーラインから見るべきなんじゃないか?


僕は、
2時間映画では、メイン登場人物は、
せいぜい5〜6人程度であるべきだと考えている。
それぞれにストーリーラインを持つから、
5〜6本のストーリーラインをさばけばよい。
だが、一人一本というのは珍しく、
主人公(クラス)は2〜3本くらい持っていることもあるので、
多くて10本のストーリーラインをさばけばよい、
というのが劇場用映画を考えること、
のようにとらえてもいいかもね、という話だ。


一本のストーリーラインには、
バックストーリーや前提、
目的や動機、
行動、
そして結果をもつ。

メインストーリーが殺人事件の解決だとしても、
犯人の動機には「ふられたことの復讐」だったりして、
殺人事件の解決と、
ふられたことの復讐という2本のストーリーラインがある、
ということだね。

主人公でも、
仕事でのトラブルを解決するストーリーラインと、
家族やプライベートのことを解決するストーリーラインの複数が走ることがよくある。
一番よくあるのは、
ヒロインとのラブストーリーの進展と結実だよね。

つまり、
それらの5〜10本のストーリーラインが、
同時進行して、
それらをうまく解決させることが、
劇場用映画を書く、ということだ、
と考えると、わかりやすいのではないか。


典型的な脚本論では、
メインプロットだけを追いかけていて、
それらが三幕構成を持ち、
設定、展開、解決を持つ、
などのように議論されていたが、
どうもそれが精度が低い気がしていた。

まあ初心者向けだからかなあ、
などと適当に流していたのだが、
本格的に書くには、三幕構成理論だけじゃ全然足りないなあ、
という思いがあった。

この、各ストーリーラインの整理、
ということを考えると、
話が考えやすいかもしれない。

それぞれのストーリーラインは、
はじまり、展開、おわりを持つ。
それぞれのストーリーラインは絡み合う。
つまり、
あるストーリーラインの展開が、
他のストーリーラインに影響したりする。
浮気女が家庭や仕事場に乗り込む、なんてのは典型だ。

仕事をしている間、
彼女に会えないのもそういう展開だ。

また、
それぞれ別に結果が出るよりも、
ある結果が、同時にそれぞれのストーリーラインの解決になっていると、
とても気持ちよい。

メインプロットの解決と、
主人公の内的問題の解決が、
同時に起こるべきだ、
というのは、
メインのストーリーラインにおいて必須だけど、
他のサブのストーリーラインでも同じだぜ、
ということではある。

勧善懲悪ものだと、
悪役の敗北というストーリーラインの結果と、
主人公の勝利というストーリーラインの結果は、
同時に出るわけだよね。
だから対決ものはおもしろいわけだ。
一方の勝利と他方の敗北が、
同時にきまるわけだからだ。
同時にストーリーラインの結果が出るのは、
シンクロというか、気持ちいいわけだね。


このようにして、
ストーリーラインたちをさばく、
という意識で、
ストーリーという束を見直すのもとてもよいと思った。

事件よりもキャラクターなんじゃね?
という前記事を書いて、
よりそのように思えてきた。
結局、
各キャラクターが幸せな結末を迎えたかどうかが大事で、
事件そのものが解決して世界が幸せになったかは、
結構どうでもいいんじゃないかなあ、
と思ってしまったんだよね。

なので、キャラクターのストーリーラインを、
重視した脚本論があってもいいんじゃないかなあ、
なんて思った次第。


前に「縦と横のメソッド」を紹介したが、
そういうことだと思っている。
真ん中にメインプロットを書き、
これが従来の三幕構成理論だとすれば、
横に広げたストーリーラインたちは、
これらを、どう背骨周りでさばくか、
ということを考えた図だということになるわけだね。


もちろん、たかがメインプロットすらさばけない実力の人間が、
5〜10本のストーリーラインをうまくさばけるはずがない。

だから、短編を書いて練習するのだ。
短編ならば、1本で済むからね。
2本、3本のラインを絡ませる話も書けるだろうね。
メインがちゃんと数名いれば、
それぞれはどうなったのか?
納得いく形で終ったのか?
同時に解決したか?
なんてことを考えらるからだ。


そういえば、ノーランの脚本は、
いつも「別々の場所で起こっている複数のストーリーラインが、同時進行する」
という形式をとっていることが多い。
別々の場所でほとんど絡んでいないわけだから、
ストーリーラインを絡ませるのがこの脚本家は下手なんじゃないか、
ってことだと思うわけさ。
同時進行するストーリーラインで絡まないならば、
たとえば3本脚本を書けば済むだけの話だからだ。
それをバラバラにしてサンドイッチにしてるだけやんけ、
という批判もできよう。


というわけで、横と縦の糸をどう絡めるのか、
どうやってそれを見せると面白くなるのか、
を考えればよい。

それは、
各キャラクターから見たこのストーリーを、
ちゃんと面白くすること、
ということになるだろう。
そして、
各キャラクターのストーリーをおもしろくしつつ、
全体から見た俯瞰的におもしろいこと、
各ストーリーラインが影響しあったり、
そしてメインが一番面白くなること、
などのようにしていくことが、
脚本をさばく、ということになるのかもしれない。
posted by おおおかとしひこ at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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