書かれた内容を100とすると、
120とか150とか、少し広がりがある方が良い。
想像の働く余地をつくるわけだ。
極端な例を。
理系の論文では、
やったこと100に対して、
90でも110でもダメで、
ちょうど100のタイトルを求められる。
嘘をついてはならないからだ。
たとえば、
「制約と変数の貢献度に基づく説明可能な計画最適化のための分枝限定法の高速化」
土屋 祐太, 濱本 真生
「大規模言語モデルの Function Calling の構造化機能を活用した情報システム非機能要求の自動分類」
向田 和弘, 福居 誠二, 長岡 武志, 北川 貴之, 小形 真平, 岡野 浩三
のように、
「やったことを正確に書く」ことが求められる。
(人工知能学会から適当に引用)
むしろタイトルこそが結論である。
ラノベのタイトルに似ている、とも言える。
(ラノベ好きは理系に多いなそういえば。笑)
逆に針小棒大なものは?
詐欺とかかな。
「簡単な作業で一日10万円?!」とかね。
(「?!」があるから断言ではないので嘘ではない、
みたいなやつ)
僕が最初にそれに出会ったのは、
「プロ野球を10倍楽しく見る方法」かな。
沢山の裏話満載本であったから、
楽しくはなるのだが、
10倍は盛りすぎと子供心に思ったなあ。
理系論文なら「せいぜい数倍」と見積もられるだろう。
だけど、
こうしたタイトルの付け方は参考になる。
あなたが達成したことを、
少し緩めて隙間をつくるべきだ、
ということを言おうとしている。
その方が想像が働くからだ。
少しゆるゆるの服を着ている人を想像しよう。
スタイルはわからないが、
実際の肉体はガリガリだったりするよね。
でもそうした雰囲気をまとうことで、
なんだか良さそう、と思わせられればよいわけだ。
もちろん、詐欺は信用を失う。
だけど、理系みたいにガチガチならば、
「想像の広がる隙間がない」ことになる。
少しだけ広がるような、
そんなものになるのが理想だ。
ラストシーンのその後まで含むようなタイトル。
そのジャンルのことが好きになるようなタイトル。
そのことをソリッドに表現するのではなく、
少しだけふんわり包むようなもの。
「風の谷のナウシカ」は広げすぎだ。
テーマがぼやけてしまう。
(原作ほどの長さなら許容、二時間映画としては広げすぎ)
「天空の城ラピュタ」は、
想像が広がるのでちょうど良い。
「RRR」は何もわからないので世紀の悪タイトル。
「THX-1138」「es」「ガタカ」同様、
情報量0なので最悪。
タイトルをつけるコツは、
何かの芯を思いつき、
ラストが見えたあたりのタイミングでつけることかな。
そのあたりだと、
大体見えてて、まだふんわりしてるから、
ふんわりした風をはらんだタイトルにできる。
これが書き終えたあとだと、
「正確に書けたことを表現したい」が勝るので、
正確なタイトルになって隙間がなくなる。
あるいは、
「書けたことが大したことないのがわかってしまった」とビビって、
「これは一体何の話なのだろうか?」と迷い、
迷路に入って、
「これは自我の話だから、
心理学用語の自我esをタイトルにしよう」
なんていう訳のわからない理屈を編み出して、
「es」とかになりがち。
(実際は自我にまともに切り込んだ話でもない)
記号っぽいタイトルは大抵そのような「作者の怯え」が入っている。
「RRR」なんて、
「the stoRy of fiRe and wateR」のRRRだぜ。
意味わからんわ。ひねりすぎてこじれている。
ど直球に「炎と水の義兄弟」で良い気がするな。
書く前にタイトルだけつくると、
大言壮語になりがちで、
その内容に相応しくない、竜頭蛇尾になりがちかな。
僕は見たことないけれど、
「いつかギラギラする日」とか、
「限りなく透明に近いブルー」とかは、
そんな匂いがする。
タイトルありきになってしまって、
そこからする想像の方が良さそうだもの。
予告編詐欺に近いよね。
なので、
ふわっとした距離感の時にタイトルをつけて、
そこに着地できるようにつくるのが、
経験上おすすめだな。
タイトルの理想は、
「知らない人をオッと引きつけること」
「しかも本質をふわっと言ってること」の、
二点をクリアしなければならないと僕は思う。
書き終えたあとだと、
どうしても本質寄りに視点がなっちゃうのよね。
「俺の到達した本質をうまく表現したい」
なんてなってしまう。
先日書いた話でいうと、
「寒がりジャンパーの一番熱い日」なんだけど、
これはなんとなく内容を思ったときにふわっと出てきたタイトルだった。
書き終えて、この話の本質をもっと短い言葉でいえるか、
と考えて「下向きのジャンプ台」みたいにしようと思ったが、
いや、それは初見はわからんやろ、
と思って却下した。
書き終えたあとは、夢の提供がなくなる気がする。
実のところ、
あなたの到達した本質は、
その本編で示すのがベストなのだ。
だからタイトルはどうやったってダイジェストなんだよね。
じゃあ劣化本質なんて書いてもしょうがない。
だから、本質はゆるゆるの服のようにして、
キャッチーなタイトルにするべきだ。
勿論、本質に掠りもしないなら、
情報商材扱いされるけどね。
「羅生門」とか良いタイトルよね。
本編と全然関係ない(単なる舞台)けど、
ビジュアルイメージが強烈だもの。
「七人の侍」も良いタイトルだ。
シンプルだけどワクワクするじゃん。
野武士との戦いとかさ、菊千代とかさ、
雨の中の死闘とか全然入ってないけど、
ふわっと包括してる距離感が良い。
世の中には良いタイトルがたくさんある。
クソみたいなものもたくさんある。
列挙してみよう。
こういう時にTSUTAYAが潰れたのが痛い。
ざーっとタイトルを歩いて見るのは、
とても勉強になったんだよなあ。
2024年11月28日
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