2024年08月28日

ハンターハンター: キメラアント編を読んだ

ああ、確かにこれは少年漫画というか、
ジャンプで出来ることを一段上に引き上げてしまったな。

週刊連載では無理で、月刊連載レベルの話だ。
休載が多い意味がわかった。
冨樫はベルセルク並のことをジャンプでやってたのか。

以下ネタバレで。


天から降って来た竜の雨、竜星群からの怒涛のために、
全ての伏線を丁寧につくっていた。

おそらくここのために、
全部の糸を紡いできたのだな。

ストーリーラインは何本もある。
全てのキャラクターに戦う動機を持たせて、
なおかつ王とコムギを真ん中の柱にする構成よ。


このクラスの分厚さは、
これまでのジャンプ漫画のスケールを超えてるかもしれない。

AKIRA、(ガイバー、孔雀王)、
うしおととら、烈火の炎、鋼の錬金術師、
ARMS、寄生獣、亜人、デストロイアンドレボリューション、
進撃の巨人、ベルセルク、シグルイ、ガンツ、
あたりの、
スケールのデカいバトルもので、
複数のストーリーラインが入り乱れるもののジャンルを、
ジャンプでやったんだな。

しかもアシスタントをつけずに、
たった一人で。

青年誌レベル、月刊誌レベル、
めちゃくちゃアシスタントつけるレベルの、
巨大な話をやり切ったのは、
賞賛に値する。

王メルエムとコムギ、
ネテロ会長に関しては、
描き切ったといえるレベル。
これだけで漫画家冥利に尽きるといえよう。


だからこそ、
今後これを超えるのは無理じゃないかと予想する。

キルアとゴンの物語、
ヒソカというジョーカー、
クラピカと幻影旅団、
あとレオリオ、
ゴンと父ジンの物語。
この辺は何も進んでいない。

カイトの死によってゴンはゴンさんになったけど、
それをどう決着をつけるかはわからない。
主役を寝込ませるのは悪手だと、
ファイアパンチの時に議論したはずだ。
主体がいなくなってしまう。
メルエムが生まれ変わって記憶喪失になり、
徐々に思い出すというのは既に使っちゃったので、
ゴンがいつどう目覚めるかでその後の方針が決まる。
逆に決まるまでゴンは目覚めないだろう。



おそらくだけど、
キメラアント編のテンションを超えるには、
10年クラスの溜めがいると思う。

普通これは10年くらいやってきた作品の最終バトルとして描かれて、
フィナーレを飾って、
その後単発の小品漫画を描いて、
しばらくしてもう一度挑んでは、
「○○を超えられない」と言われるクラスのやつだ。

それくらい、創作力や集中力、
つまり作家の魂を使い切ったシリーズだった。


ああ、これは冨樫仕事しろはネタだな。
だからいつまでも俺たちは待ってるぞ、
というエールなんだな。


頭脳バトルと読めないジョーカーを入れることは、
もはや冨樫の習性なのだろうか。
頭脳バトルの体で世界を構築して、
それをなんらかの確変で破るのも習性な気がする。

今回も、タコと狼のパートがジョーカー的確変要員であった。
カメレオンとナックルとシュートが、
確変要員ではなくメインどころになってしまったので、
ジョーカーの札を誰に持たせるかは迷ったのだろう。
パームの千里眼はチート要員で、
話を前に進めやすくするためのバランサーだな。

四次元マンションの彼も活躍するかと思いきや廃人扱いで、
もう少し使えたかも知れないが、
ネテロが出張ってきてからは、
それどころじゃなくなった感じだ。


最終シリーズならば、
ネテロの死の後に、ゴンとキルアの出番になるのだが、
それをピトー側に分断したことで、
まだこのシリーズは終わらないことを決意した
(結論から逃げた)のだな。


敵の3将軍をうまく使うことで味方を分断していた。
将軍担当を誰にする、裏(主に地下)担当を誰にする、
ということで味方のストーリーラインを分割しやすくしている。
3将軍も、蝶のプフをジョーカー代わりに使うことで、
うまく分裂させられていると思った。

蟻たちが元人間ゆえに前世の影響を受けて改心する、
というプロットラインは最初から考えてたのかね。
うまく使えればいいなーと撒き餌をしておいて、
途中で使い始めたんじゃないかと想像。

期待させておいたストーリーラインは全部ブラフで、
捻って捻って、という捻くれた感覚は、
以後のフォロワーを沢山産んだんだろうな、
と思わせる。

(今はそれが終わって、捻らずに真っ向勝負が、
求められてるとは思うが)



多分あと10年くらいは冨樫はハンターハンターを進められないだろう。
そしてゴンやキルアやクラピカやレオリオが、
仲良く何かをすることももうないだろう。
出し切った感が強すぎる。

物語とは、人格の分裂と再統合である。
そのカタルシスをやってしまったら、
再分裂はないんだよな。

王メルエムとコムギとネテロで、
それはほとんど達成されてしまったので、
あとは残滓刈りになってしまう。

これ以上の人格分裂をやらないとキメラアント編を超えられないが、
これ以上やるのはしばらく無理だと思う。
ゴンとキルア、ゴンとジン(とカイト)が、
これを超えないと、
最終回には辿り着けないからなー。

はじめの一歩が、
伊達戦後の「バトンタッチ」がピークであるように、
凄い前任者たちを若手が成長して超える、
のはかなり難易度が高い。
鬼滅も、若手たちが柱を越える前に終わったし。

刃牙がエア味噌汁でお茶を濁したような、
そんな最終回しか見えない。


AKIRAが鉄雄vsSOLがピークだったように、
ハンターハンターのピークは終わったと思った。
進撃のピークもマーレ編より前よね。



連載物って難しいね。
どこをピークに持ってくるかのコントロールは、
映画シナリオの方が計算できるよな。

全然ジャンルは違うけど、
ボーンアイデンティティシリーズや、
ミッションインポッシブルシリーズを思い出した。
感覚は近いと思う。
ただストーリーラインたちが結合しないという点では、
ノーランの悪癖に近かったかもね。


ということであと6巻。
ダラダラ読むことにする。
posted by おおおかとしひこ at 07:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック