ストーリーをざっくり考えているときは、
まだ自分の人格は一個である。
そのうち分裂させなければならない。
そのときに、名前を与えるといいよ、
という話。
構想段階では、
「主人公から見たストーリー」をつくっているはずだ。
私と世界、私と事件、のような感じだ。
これはまだ一人称の世界であろう。
映画は三人称であるから、
三人称として、外に出さないといけない。
そして、三人称であるから、
他者とのコンフリクトや協力などの絡みがあって、
はじめて三人称になる。
このとき、作者自身の人格を分裂させるような感覚がある。
自分の人格の中の、
主人公らしき人格と、
その他、ライバルらしき人格と、
ヒロインらしき人格と、主人公のアシスト的な人格と……、
などのようにだ。
こういう人物がいて、こういう展開で……
などと構想するときはまあ良い。
しかし、
もっと細かく考えるには、
「名前をつける」といいよ、
という話。
「主人公の友人」というよりも、
「谷口」という具体的な名前があったほうが、
「谷口はどう思う?」なんて脳内で聞きやすいからだね。
つまり、他者になっているわけ。
主人公の名前がない状態では、
まだ自我と分離すらしていないんじゃないかなあ。
「もし自分がそのシチュエーションになったら」
と考えるのは物語の妄想の源泉であるが、
まだ「自分」になってて、
「他者」になっていないんじゃないかな。
主人公にも名前を与えよう。
山田太郎でもいいし、ファナティックルシアでもよい。
もっとふつうに、川田隆二とか原口翔太でもよい。
そのストーリーにふさわしい名前を創作しよう。
そして、川田はどう思う?
友人の谷口はどうする?
なんて風に、
自分にではなく、他人に聞くようにしていくとよいだろう。
「この時谷口は裏切るつもりであったのだ」
などと考えることはたやすいが、
「この時友人Aは裏切るつもりだったのだ」
を考えることは結構難しい。
Aはまだもわもわしてよくわからない状態にいるからね。
自分の分身をつくり、
自分から切り離して自由に動かせる人格にするには、
はっきりした名前を与えるのが、
一番手っ取り早いと思う。
あとで変えてもよいのだ。
まずはひとつ名前を与えて、
固定した何かにしてしまえ。
「伝説の最強武器」ではなくて、
エクスカリバーと名前をつけてしまえ。
「主人公の済む都市」ではなくて、
大田区蒲田と名前のつくものにしてしまえ。
そうしたら、
イメージはその名前によって、
どんどん具体的になってゆく。
活躍や役割にふさわしくないなら、
名前を変えればいいだけのこと。
伊集院と大げさな名前をつけたが、
大した事をしないなら田中でよい。
「ひろこ」とヒロインの名前をつける場合と、
「睦美」とつける場合と、
「もも」ではだいぶ違うだろう。
そんな風にして、
分霊のディテールを少しづつ明快にしてゆくのだ。
そろそろ命名のタイミングだな、
と思ったら、
名前事典を引いたり、ネットを徘徊したり、
資料探しをして何かいい名前を拾ってこよう。
名前を考えるだけで一週間くらいかかってもよい。
ドラクエだって主人公の名前を決めるのに手間取ったよね。
それの再現である。
自分の名前でなくて、
他人の名前をつけることはたいへん難しい。
その時点で、自分ではない、
と自覚していくのだ。
他人だから、いくらでも不幸にできるし、
他人だから、自分にない力で困難を突破することが出来るからね。
2024年12月10日
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