2024年12月13日

分らないものに、分るものを持っていく

詳しい世界で、新しい物語を考えるよりも、
知らない世界に、分る物語を持っていくほうがおもしろくなる、
という話。


自分の詳しい世界をつい舞台にしがちだ。
関東人がいきなり関西を舞台にすることは難しいだろう。
静岡県以外の人がサッカー王国静岡を書くと、
だいぶ変なことになるだろう。
男子校を知らない女子がいきなり男子校を描くのは無理だろう。

だから、臆して、
自分のよく知っている世界を舞台にしがちだ。
自分のクラスの話、大学の話、会社の話、
友だちの話、恋人の話。

しかし、それじゃあよくあるふつうの話しかないから、
そこで特別な話を創作しようとして、
願望や無理のある話になってしまいがちである。

立脚点が世界にあり、
物語ベースで考えていないからだ。


逆の方法論を考える。

ある物語を先に考える。
それが成立する舞台はどういうところか?
を考えるわけだ。

たとえばボーイミーツガールストーリーは、
どの世界でもあり得る。
ガールミーツボーイをじゃあどこで描くか?
を考えよう。
転校生がクラスにやって来る話は、
さすがにこすられ過ぎているだろう。

じゃあたとえば、
「ブラジャー専門のワコールに、
男の新入社員が入って来る」という話だってつくれるだろう。
女しかいなかった職場に、いきなり男子が入ってくれば、
ガールミーツボーイになり得る。
同年代男子にするとは限らない。
急に小学生男子が看護婦の中にはいって来る、
という話だって考えてもよいのだ。

つまり、
変った世界設定ならば、
よくあるストーリーでも新鮮に見える、
ということを言おうとしている。
それがちょっと変化球のあるストーリーになるなら、
「変った舞台の、王道ストーリー(+変化球)」
という形になるよ、
ということを言っている。

変った舞台の、変った話だと、
飛び過ぎて感情移入が難しいだろう。
よくある舞台のよくある話はつまらない。

よくある舞台の変わった話は、
話自体を面白くしなければならないので、
難易度が高い。

変った舞台のよくある王道ストーリーは、
話は保証されているし、
変化球があるだけでおもしろくなる、
ちょうどいい難易度になる、
という話をしている。

ただ、変った舞台を思いついたり、
実際に取材する難易度はある。
しかし、「よくある舞台のまったく見たことのない話」を考えるよりも、
難易度は低いと考えられる。

だから、
よく知らないが、もしそこのストーリーだとしたら面白い話、を、
思いついたほうが勝ちではないかと思っている。



騙し騙され、というストーリー、
年上の男が若い年下に追い込まれる、
というストーリー自体は普通だけど、
それがビリヤードという変わった世界になると、
急に輝きを帯びるようなものだ。
(ハスラー2)

親友とともにライバルを追い抜く試験を受けるが、
途中で親友が不慮の事故で死亡、
ライバルとともに組み、実戦に出ることになる、
というよくあるストーリーを、
戦闘機学校でやるから面白くなるのだ。
(トップガン)

トム・クルーズの2本を上げたが、
おそらくトムは、こうした王道のよくあるストーリーを、
まったく別の変わった世界にもっていくのが好きなんじゃないかと思っている。

変った舞台や世界観は、
つくったり取材すればいいだけのこと。
もし、それまで映画で描かれたことのない世界があるなら、
それは勝ちを半分進めたようなものだ。

たとえば「舟を編む」という、
辞書編纂者の世界を舞台にする、
と聞いたとき、僕はやられたと思ったなあ。
何があるか知らないから、わくわくするもの。
(実際の小説、および映画は見ていないので、
出来上がったものがどうかは知らない)


逆に、まったく変わった話を思いついたなら、
わざとよく知った世界でやるとおもしろくなるだろう。
宇宙人との恋愛を学校生活でやれば、
うる星やつらになるわけだしね。

こんな風にして、
どこを知らないものにして、
どこをよく知ったものにするか、
のバランスを考えると、
俯瞰的になれるかもしれない。

知らない×知らないは怖い。
知ってる×知ってるは飽きた。

知らない×知ってるは、
ちょうどよく期待できるし、安心できる。
posted by おおおかとしひこ at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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