2024年09月04日

志の差

昨日「ポーの一族」の続編を二巻読んで興奮してたんだけど、
ふとウイングマン実写化のニュースと比べてしまう。

なんという志の差か。


一方は、
「なるべくおもしろいものを」と、
無限に知恵を絞った、
編み物のように編み込んだ、
緻密なプロットと生々しい生と死。
そこに炙り出される人間の本質や業のようなもの。

実写化とか何も考えてない。
100年近くにわたるヨーロッパが舞台で、
日本人は一人も出てこない。

絶世の美しい子供が二人と、
成人が一人出てくる。
この世にいない、概念みたいな存在。

オリジナルであろうとする面白さを、
極めた方向の到達点だ。



他方を見よ。

オリジナルを極めるのではなく、
かつて極めたものをアレンジするという、
安易な企画。

もちろん、CGなどがウイングマンに追いついたから、
できることかもしれないが、
オリジナルから40年もかかったのかよ、
と実写畑の人間としては心苦しい。

そもそも、
オリジナルドラマができないのは、
どんな企画を出しても通りにくく、
「かつて流行ったやつの実写化」
の企画の方が通りやすいからだ。

実のところ詰まらない企画しか出せないのかも知れないし、
せっかくの面白い企画を読めない、
スポンサーサイドにも問題があるかも知れない。
(僕らはよくわからないので専門家にお任せします、
なんてことを稀によく聞く。
いや、ちゃんと企画を把握して、
脚本を読み込んで、
歴史的な立ち位置を考えて、
今流行るかどうかを議論しようよ)

そんなぬるい状況では、
安牌の実写化が通るわけさ。

もちろん、ヌルい実写化ばかりで期待値がダダ下がりだから、
そこに原作者をがっつり入れたプロデュースサイドは、
いい読みをしている。
でもアオイの衣装がラムちゃんばりにならないなら、
ウイングマンをやる意味はないとすら僕は思う。

コンプライアンスなんて知るか。
コンプライアンスを守らないといけないなら、
ウイングマンはテレビでやるべき素材じゃない。

なんでドラマ枠を維持しなければならないか。
それで食ってるスタッフを食わせる為だ。

じゃあウイングマンつくりません、
この枠は1クール空白です、
ってなったら、100人かそれ以上が失業するのよね。

それを回転させ続けるために、
毎回毎回ドラマは作らないといけない。


もうその自転車操業も限界で、
新しい企画は通らないし、
通った実写化はめちゃくちゃだし、
一体何がしたくてそれをやってるのかわからないよ。


「おもしろいものを見せたいから」
じゃない、邪な動機なんだよね。

ウイングマンの実写化で、
ストーリーが宣伝されてないのよ。
「もし書いたものがなんでも叶う夢のノートがあったら?
そこに、ヒーローになりたい男がヒーローの絵を描いたら?」
がなぜ宣伝されないのか?
その枠組みが少し古いからだ。
じゃあ、今なりの面白さにアレンジしなきゃいけないんだけど、
それが宣伝されないのがとても気になる。

青春の名作という枠しか見せてなくて、
中身を見せたいんだという強い思いがないんだね。


それに比べて、
ポーの一族の、純粋に、
人間の業を見せたいという強い思いよ。
そこに収束するためにすべての仕掛けを用意する、
計画的反抗よ。その手際のすばらしさよ。

どっちがおもしろいか、
火を見るより明らかである。



たった一人の天才と、
いい大人が100人がかりでつくるもの。

僕は後者の方が良いものができると信じて、
映像業界に身を投じているが、
ここ10年くらい、
よってたかって下らないものを魔誕生させる現場に、
もうだいぶ疲れている。

お前らポーの一族読めよ。
負けてるぞ。
恥ずかしくないのかよ。


どうやったらRRRを越えられるか?
を、朝まで飲んで議論してるやつ、
どこにいるんだよ。混ぜてくれよ。
自分たちの周りで「ポーの一族」並のオリジナルが生まれてないことが、
本気で悔しいんだよ。
posted by おおおかとしひこ at 14:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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