映像の仕事なもので、AIによる画像処理の可能性について、
色々と模索している。
そこで「AI酔い」みたいな現象に遭遇することがよくある。
3D酔いとはまた違った、認識の酔いみたいなもの。
実際気分が悪くなり、回復にはそこそこかかる。
色々考えてみたところ、
ピアジェの「対象の永続性」の破れが原因ではないかと思った。
まずおもしろげな作業をしてみよう。
フワちゃんがSNSでのやらかしで、休業に追い込まれた。
で、ある番組に出演していたんだけど、
そこで「フワちゃんだけ消されている」
という奇妙な現象が話題になった。
「フワちゃんだけ消しゴムマジックで消された」というやつだ。
たとえば、
SNSにアップされていた写真と、
実際にオンエアされた画像を見ればわかる。
異なる写真だが、
ここで急にフワちゃんだけいなくなったことは考えにくいので、
別テイクの写真からフワちゃんが消されたことは事実だろう。
で、1枚目の写真から、
消しゴムマジックでフワちゃんだけ消すことが出来るかな?
と技術的興味がわいたので、プロレベルでやってみることにした。
それが次の写真。
見事にフワちゃんだけ消せている。
使用したAIはPhotoShopのFirefly。
しかし、AI一発で消せたわけではなく、
人力での消し技術との組合せが前提だ。
この作業中に「AI酔い」が発生しやすいという、
現場からのレポートをして、
それからこれがピアジェのいう「対象の永続性」が壊されているからだ、
という話をしたい。
まず、消しゴムで一発で消せたのはここまでだ。
地面の影が変で、
カバンが違うものになっている。
よく見ると有吉の肘あたりも破綻している。
なので、AIに何枚かつくらせる。
そのたびに異なるものが出来るのが、
AI(というかニューラルネットによるディープラーニング学習)の特徴だ。
2番目のカバン、3枚目の肘を合成して、
足元の影をつくったものがこれ。
ここにオンエアされたものからカバンだけ持ってきて合成、
アラだけAIで消すと、
最初に見せたものが出来上がる。
で、これらを合成する作業中に、
AI酔いをしやすいんだよね。
一枚程度だとそんなでもないが、
1時間継続したり、色んな画像を扱うと、
船酔いみたいに平衡感覚がなくなって、
ぐるぐる回るような、気分の悪い感じになる。
なんでかを考えると、対象の永続性の破れだろう、
と推察したわけだ。
発達心理学者ピアジェによって発見された現象。
ある物体Aを手で隠したとき、
それはAがなくなったのではなく、
手の向こうにあり続けて、手をどけると、
また見えるようになる、という「理解」のことである。
大人には当たり前のこのことは、
赤ちゃんには当たり前ではないことがわかっている。
あるものを手で隠したときに、
それがなくなってしまったものとして悲しむのである。
それが、手をどけてもどけなくても、
そこにあり続けるのだ、
と理解するのは2歳前後らしい。
たとえば「いないいないばあ」を赤ちゃんが喜ぶのは、
この学習の途中であるから、と考えられる。
つまり、人は、「対象の永続性」を学習によって獲得している、
という学説である。
これが遅れて発達する子供もいる。
小学校低学年くらいでまだこれを学習していないと、
すぐ物をなくしたと勘違いしたりするわけだ。
あるいは誰かが盗んだと騒いだり。
そのようなチェックとして、これがあり続ける、
という概念を提唱したわけだね。
この当たり前の感覚が、
AIにはない、という話である。
つまり、
フワちゃんで隠されている部分は、
人工の芝生がありつづけ、人の影があり続ける、
ということを理解していない。
フワちゃんで隠れている人は、
胴体がつながり、足があり、ということはある程度理解しているが、
半パンか長ズボンかは理解していない。
有吉のカバンが隠れている、ということは理解していても、
それがどのようなデザインかまでは、
理解していない。
これらを人間側が、「あるものとして」合成する、
という作業過程において、
「そう認識していない者に、あるものとしてふるまうことの橋渡し」作業が発生して、
直観と異なる画像を修正し続ける作業で、
人間側の「対象の永続性」の感覚がおかしくなり、
酔いを引き起こすと考えられる。
そこにそれがあると感じている感覚は、
理屈レベルではなく、神経の感覚レベルだ。
だから「ん?」と違和感を感じて、
合成作業ではそれを消すことをやり続ける。
その「ん?」が、これまでの合成のやり方でない、
AIが吐き出す画像の修正になると、
かなり神経が逆立てられるっぽいな。
絵がうまい人ほど、
こんな間違いをするAIは、絵が分かっていない、
と感じると思う。
だけど、
絵を描かない人は、
何が変なのか分らず、AIを使い続けるんじゃないか。
だってフワちゃんが勝手に消えて、便利だものね。
いや、ほんとうには一発で消えてないのだ。
フワちゃんは消えているが、その周辺がおかしなことなのだ。
それを変だと感じない程度にしか、絵の感覚を持っていないのだろう。
オンエアに使われた画像の、
きれいなやつは入手できなかったので、
どこまでちゃんと消せていたかは不明だ。
だけど、この作業自体不毛だよなあ、
と感じたのでここに記録しておく。
ほんとうにデジタルは人を幸せにしている?
どんどんしんどくなっていない?
奴隷の奴隷を増やすことにしか寄与していない感じがするなあ。
いつかAIの尻を拭くだけの下層民が、
反乱を起こすんじゃないかな。
2024年09月09日
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