2024年09月15日

実写の中で記号的になるとおもしろくなる

前記事の逆の話をする。

実のところ、実写という現実に近しい世界で、
キャラクターや状況が記号的になると、
話が急に面白くなることがあるんだよ。


分かりやすい例は、
「トップガン」だね。

主人公と対立するライバル、アイスマンがいる。
何もかも正反対で、いつも対立している。
ところが主人公の親友でコンビの、
グースが事故死してしまう。

クライマックス、最高に優秀な二人がコンビを組むことになる。
主人公とアイスマンのコンビの誕生だ。

おそらくこのテンプレは、
古今東西どこにでも転がっているかもしれない。
でもこれは強烈に楽しいんだよね。

前半で対立してればしてるほど、
コンビのうまくいかなさが面白くなる。
そして二人が優秀であればあるほど、
相手が何を考えてるか察せられるから、
パフォーマンスが噛み合った時最高のコンビになる。

この対立とコンビの感じが、
最高に良いのだ。
そしてそれは、とても記号的だよね、
ということだ。


記号的なので簡単に応用ができる。

「テリーマンが負傷したため、
キン肉マンとバッファローマンがコンビを組むことになる」
「クリリンが倒れたため、
悟空とピッコロが組んでサイヤ人を倒す」
「レイがやられたため、
ケンシロウとラオウがコンビを組んで修羅の国にいく
(そんな展開はないが)」
「カミーユが精神崩壊したので、
アムロとシャアが手を組む(そんな展開もないが)」
などのように、
簡単につくることができる。

これは構造が記号的で、
変数を代入できる、というわけだね。



現実はごちゃごちゃしている。
整理しづらく、ややこしく、泥臭い。
そこに記号的なものがあると、
整理されて、わかりやすくなり、美しくなる、
ということだ。

はじめから記号的でテンプレだと、
「ああ、記号的な簡単な世界ね」になると思う。
おそらくは、
「最初は現実のような泥臭い世界に、
急に記号的なものがたちあがる」
瞬間がおもしろいんじゃないだろうか。


これを男女に応用すれば、
「はじめはいけすかないやつ、だと思ってたのに、
徐々に本当の姿がわかってきて、
最後には惹かれるようになる」
というラブストーリーの典型(テンプレ)になるよね。

そしてその後お約束のように、
「最初ケンカしてたものだから、
中々素直に好きと言えない」
もある。
これもいつでも使えるテンプレだよね。

僕がこれを見た一番古い例は、
「アフリカの女王」(1951)だけど、
もっと古いものもあると思う。



キャラクターにもテンプレがある。
人間というのは複雑で捉え難いものであるが、
「ある面で切り取るとテンプレ的」になる。
たとえば、巨人ファンか阪神ファンかで、
人はふたつの勢力に分かれてしまう。
あんなに複雑だった人間というものが、
ある面から記号的になる。
この瞬間がおもしろいというわけだ。

巨人阪神はもう古い切り取り方だから、
今だときのこたけのこ派?
なんでも対立するものがあればよいわけだ。

複雑な人間たち、人間関係を、
記号に立ち上げたかったら、
わかりやすい「断面」を与えればいいんだね。

その断面においては、
対立するA派、B派に分かれるだろう。
(俺は特別なC派さ、というやつも出るわけだ)

このことを、「石を投げる」というのであった。
人間(たち)に石を投げると、
当たり方、返し方で、どんな派閥に属するかわかるわけだ。
それを同時に色んな人に投げ掛ければ、
一瞬で対立する二陣営に分かれてしまうかも知れないね。
(最も簡単なのはニュースを流して、
リアクションを取ることだろう)


その断面がいつ現れるか、
どんな断面かはわからない。
しかしそれをコントロールできる、
ということは覚えておくと良い。

捉え所のなかった複雑な現実が、
ある断面を得て記号的になる。
それが「おもしろい」「わかる」瞬間かもね。
posted by おおおかとしひこ at 17:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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