2024年09月17日

【薙刀式】単打とシフト

全て単打のローマ字系列からカナに来ると、
まず戸惑うのがシフトかもしれない。

原理的にしょうがないことをまず理屈で理解して、
そこから感覚になじませていくことだ。


ブラインドタッチ可能なキー数を、
10キーの上中下段、30キーとしよう。

最上段数字キーが行ける人は、
4段配列、龍配列、蛇配列、いろは坂配列などを使うとよい。
なんなら漢直も4段目使うしな。

僕は常用が無理だった。
そもそもQやTYすら怪しい感じだし、
TabやCapsも無理なので、
なるべく30キーにするようにした。
(その外が打てる人はそこに特殊キーでも置けばいいと思う)


しかるに、カナの数は30では足りない。
清音46、句読点2、長音1、促音1の、
最低でも50は必要だろう。
(新JISや月だと、小書き8、濁点半濁点2の追加で60)

半分はシフトレイヤーに入るのだ。

これはもはや原理的な問題だ。
よく使うメジャーを単打、
マイナーをシフトに置くことで、
確率的には単打を増やす(大体70%前後)けれど、
シフトカナの出番がないわけではない。

3段カナ配列というのは、
単打、単打、シフト、単打、シフト…
というふうに、単打とシフトを入り乱れて打ち分けていく方式だ。

そもそもローマ字から見れば、
母音以外全て二打である。
一打、二打、二打、二打、一打…
のようになるはずだ。
二打がシフトに変わったと思えば良い。


じゃあ変わんないじゃんと思うけれど、
打鍵効率(1カナを出すのに必要な統計的出現率を加味した打鍵数)
を出すと、
ローマ字1.7、薙刀式1.3くらいだ。

「ローマ字が二打必要で、カナは一打でいいから、
カナは二倍速い」というのは嘘だ。
バカがそのように見積もって議論しているだけだ。

「二打を打つ割合が、カナでは半減している」
という感覚がわかりやすいかもしれない。

人の感覚というのはレアケースを拡大して認識する。
その方が異常事態を検出しやすいからだ。
なので、
ローマ字だと「デフォルトが二打で、たまに母音一打がある」
と認識しがちで、
3段カナだと「デフォルトが一打で、たまにシフトがある」
と認識しがち。

ローマ字は「普段損して時々ラッキー」、
カナは「普段得して時々損」と、
普段の得よりも、時々の損を拡大して認識しちゃうのよね。

人は「日常の幸せ」を享受できなくて、
特別な幸せしか認識しづらい機構になっている。

ここで「得している」と、
まず理屈で理解できるかが、
3段系カナ配列を使う上でのポイントになるかもだ。


月配列がわかりやすい。
メジャー一打、マイナー二打だから、
ローマ字のほとんど二打、時々一打に比べて、
ずいぶん得をしていることが理解できる。


ただDKというオイシイ位置のキーをシフトに使うことで、
そこに文字を置けないことが月配列の欠点だ。

新下駄、下駄は「文字キーを同時に押すとシフト」
ということで、文字領域とシフトキーを兼用した。
これで文字を置けたけど、
今度は同時と順次を打ち方で区別する必要が出る。

あちらを立てればこちらが立たずだ。

文字を8指、シフトを親指、
と区別したのが親指シフト系列で、
元祖親指シフトは親指2キーを用いた。
しかし毎度毎度シフトを叩く必要があったので、
押しっぱなしで連続シフトがかかればいいのに、
と改良したのが飛鳥だ。

親指シフトが2キーあれば、シフト面も2面あり、
計3面を使いこなす必要がある。

薙刀式はそれすら面倒として、
シフト面1に減らした。
(その代わり、濁音シフト、半濁音シフト、
拗音シフト…などのように、
「変化音」を同置でシフトする)

まあ、あちらを立てればこちらが立たずというわけだ。

これらの方式のどれが最適かはまだ分かっていない。
それほど沢山の人が触っていないからで、
大量のフィードバックが得られていないからだ。
新配列はひとつにつき、
高々数百人のオーダーでしか使われていないと思う。
千人、一万人使ってないと思う。
エリートやエースは使えるが、
人民への実験段階はまだ、という段階かと思う。


厄介なことは、
シフト方式を一旦決めてしまうと、
それ合わせに配字が決まってしまうため、
「配字だけそのままでシフト方式だけ変更したい」が、
かなり難しいところだ。
そして、配字こそ、各単語の運指を決めるものだから、
それを動かすと配列の味が変わってしまうことだ。

親指シフトの中指シフト化、
薙刀式の中指シフト化など、
意欲的な試みはあったが、微妙というのが本音だろう。

配列はシフト方式に縛られてるのだね。


薙刀式が採用しているセンターシフトは、
親指2キーを使いこなすのは無理、
USキーボードでも使える、
などを考慮した上でのものだ。
ついでにSandS(Space and Shift)が気に入ったので、
その感覚で使えるものを採用した感じ。
だから連続シフト前提である。

実はセンターシフトを採用しているのは、
ほかに新JISしかない。
2面しかないからカナ配列の中では相当覚えやすい方なのだが、
反面、濁音半濁音は、濁点半濁点の後付け方式なので、
必ず二打必要なこと、
小書きが別置なので、
拗音や外来音が二打以上になること、
その濁音や半濁音なら三打以上になること
(以上というのはシフトが絡むから)だ。

このへんのややこしいやつを、
薙刀式は各種同時打鍵でカバーしている感じ。



先ほど50〜60カナを30キーで打つ、
と問題を簡単化したけれど、
実は日本語のカナは50ではない。

濁音が21(ヴを含む)、
半濁音が5、
小書きが9(ゎを含む)、
拗音が36、
存在する。

「しょ」「ぴゃ」などをどう入力するかは、
カナ配列の難しいところである。
ローマ字や新JISでは二打、三打と割り切っている。
ただ、「ゃ」「ゅ」「ょ」はそれだけではマイナーなので、
シフト面に行く。
そうすると「しょ」だけで三打必要になってしまうのよね。
ローマ字だってsyoだから三打なんだけど、
なんか損した気になるんだよな。

新JISでは、もっとも使う「ょ」だけ単打面にして、
玉虫色の解決をしている。
親指シフトはもっと古い設計なので、
「ゃ」「ゅ」「ょ」ともシフト面だ。

薙刀式はこれを「し」「よ」同時押しで「しょ」、
などとした画期的な方法だ。
「や」「ゆ」「よ」もマイナーカナだから、
たいていシフト面なので、
その表面には関係のないメジャーカナを置けるわけだ。


厄介なのは外来音。
これはマイナーなくせに、外来語ではよく使う。

ァィゥェォは新JISではシフト面だ。
薙刀式では、拗音同様に定義して、
3キー同時で実現している。
清音は半濁音同時押し(て+゜+い=ティ、ふ+゜+あ=ファ)、
濁音は濁音同時押し(て+゛+い=ディ、と+゛+う=ドゥ)
に定義して、打ちやすさと誤打のバランスを取っている。

外来音、バカにできないほど数がある。
薙刀式で定義された外来音は、
ティ ディ テュ デュ
トゥ ドゥ
シェ ジェ チェ ヂェ
ファ フィ フェ フォ フュ
ヴァ ヴィ ヴ ヴェ ヴォ ヴュ
   ウィ ウェ ウォ
イェ ツァ
クァ クィ クェ クォ クヮ
グァ グィ グェ グォ グヮ
の36。
スィ、ツィなどはマイナーなので未定義とした。
二打で打つ考えだ。


そう。
カナは50というのは、実は嘘だ。
上のものを数え上げると156あるわけ。

カナ配列というのは、
なんらかの方式で、156音を打たないといけないんだよね。

もちろんローマ字でも同様だ。
外来音は苦労してるよ。faとかviはいいけど、
ティがthiとか、ツァがtuxaとか、3打4打は当たり前。

これら全部を、どううまく処理するか?が、
カナ配列だ。



ローマ字は打鍵数を増やして、キー数を30にした。
その代わりすべて単打だ。

カナ配列は、盤面を増やす(40以上)か、
レイヤーに積んだ。
濁音以下の例外措置は配列によって異なる。
薙刀式だけが、すべて同置を実現している。
(なぜ可能かは、配字の工夫とシフト方式をうまく選んだから)

なんでこんなにややこしいのか。
カナは156あるからだね。

「156音を30キーで打つ」
やり方を考え付かなければならない。


そもそも日本語をキーボードで打つなんて、
狂ってるんじゃないかとすら僕は思うね。

英語話者は便利だよなー。
26キーをそのまま打ちゃいいんだからなあ。


薙刀式を学び中の人のTwitterから。
> 初学者には、なんで「に」や「も」までシフト入力やねんとイライラするポイントだと思う。
「に」=シフトD、「も」=シフトKは、
かなりの特等席ですね。
僕はSL単打よりもいい位置と評価します。
まあそこは慣れですな。
実際の文章を書いてみて、
連続シフトの使いやすさとともに実感するしかないかな。

もちろん、何が打ちやすい、打ちにくい、
というのは人によって違うから、
他の配列をチラ見してもいいと思う。

いずれにせよ、
「カナ配列を使うことはレイヤードを使うこと」
という意識に切り替えないといけないだろう。



すげえ簡単な、自分に向く配列かの見分け方。
自分の名前をその配列で打ってみること。
なるべく速く何回も打ってみる。10回とか。
その時の指の動きを目で観察して、
違和感が拭えないなら、
やめたほうがいいかもね。

ローマ字は30×30=900の組み合わせの運指のうち、
わずかしか使っていない。
カナ配列はもっとたくさんの組み合わせを使うから、
ローマ字で鍛えられてない筋肉や神経を使う。
まずそれに慣れるまで、かかるかもしれない。
posted by おおおかとしひこ at 10:20| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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