一人では大きな問題を解決することができない。
だから、物語では必ず味方がいるものだ。
じゃあなぜその人は、主人公の味方になるのだろう?
その理由を考えていないと甘えになる。
主人公が好きだから、という感情的な理由になりがちだ。
あるいは同郷だから、同じクラスだから、
同じ会社だから、身内だから、家族だから、日本人だから、
みたいな、日本的な同族主義になってしまう。
これはある種の甘えである。
そうじゃなくて、
理屈で味方になる、協力する、
というものが描けるようになると、
味方の範囲は広がる。
感情的な理由がなくても協力するからだ。
それが、「利害の一致」だ。
その味方の目的はなんだろう。
主人公の目的とまったく同じか、
微妙に違うのだろう。
あるいは、主人公が失敗すると害が及ぶことになるから、
(半ば仕方なく)主人公の成功をサポートすることになるのだろう。
だから、
「協力してやるぜ」という味方になるシーンで、
観客は納得する必要がある。
ああ、この人の利害が一致しているから、
主人公に協力するのだ、
ということを。
もし金が目的とか、単純に勝つことが目的ならば、
敵方に味方するだろうね。
そうじゃなくて、
主人公の目的が叶うことで、
何かしら自分の目的も叶うから、
協力するんだよね。
そこを創作することが、
その味方を創作するということだ、というのが本題だ。
もちろん、利害の一致と、単に同族だから、
好きだから、などの分量比は色々あって良い。
幼い弟は何も考えず兄に従うこともあるし、
犬は懐いているものだし、
逆に仕事関係は嫌いな人でも有利なら組む。
利害関係が一致するから、と公言ながら実は好き、もある。
人間関係は複雑なほうがおもしろいし、
単純な方が強い。
ビジュアルや能力や口癖など、
その魅力的な協力者について考えることはいいだろう。
でも登場人物を定義するのは目的だ。
その目的が主人公と一致するから、
その人物は主人公とともに行動する。
2人協力者がいれば、
また異なる動機があろう。
3人協力者がいれば、
3人とも異なるべきだ。
だから面白いんだよね。
それらをうまく創作できるか、
リアリティがあり、当然だろうと思えるほどの、
まっとうな理由を創作しているか。
それはその協力者の設定ということだ。
なるべく異なるようにしたほうが、
バラエティが出て面白くなる。
そのバラエティを創作できているか、ということだ。
それを創作していないから、
「なんとなく主人公に協力する」という理由になっていて、
「なんとなく主人公が好きだから」という理由になってしまうわけ。
それがメアリースーにつながるんだね。
彼らは他者である。
それぞれに人生があり、それぞれに優先するべき都合がある。
それを曲げて主人公に協力するわけだから、
自分も得することがないといけないわけだ。
利害の一致というのは、そういうことだ。
もちろん、損して得取る、みたいな動機でもいいよ。
給料は下がるが、道義上、信条上、ここは協力するとかね。
ここに感情も絡んでくるから、
人生は面白いのだ。
最初は利害の一致だけで行動していたが、
感情的に好きになってもいいし、
逆に嫌いになってもいいわけ。
そうすると葛藤が起こる。
(葛藤とは他者間で起こるコンフリクトとは異なり、
その人の心の中で複数のことが矛盾をきたすことだ)
たとえば主人公の親友なのに、
属する民族上敵に回る、
「ベンハー」もある。
決断しなければいけない状況に追い込んだら、
その人は行動することになるだろう。
たとえば裏切るとか、たとえば告白するとか。
人間というのは、
理性と感情で行動する生き物だ。
計算づくの時から感情駄々洩れの時まで、
グラデーションがある。
そのどれの状態なのか、きちんと考えることだね。
もちろん、それは一個の状態ではなく、
何かのきっかけで変化していくことになるだろう。
その基礎条件であることの、
「利害が一致する」を、
うまくつくっておけば、
「それが成立する限り味方でいる」状況が生まれる。
「それがなくなると味方から離れる」状況もつくれて、
その時味方に残る理由が必要になる。
「まあ、もう少しこの先が見たくなってな」
というのは燃える瞬間のひとつだよね。
理性と感情は、バラバラに存在してその人の原動力になるからね。
つまり、理性と感情が別の結論をさすようにつくると、
こういう葛藤状況をつくれるということだね。
利害の一致を、複数通りつくろう。
それぞれの事情を別々のキャラクターに背負わせよう。
そうしたら、彼らはそれぞれの理由でそれぞれの行動をすることになる。
仲間って一枚岩じゃなくてよい。
その事情が描ければ描けるほど、
身内で回しているだけのものから脱せられるね。
呉越同舟は常におもしろいのだ。
2025年01月05日
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