歌詞を作ってみよう。
歌謡曲ならばストーリーが必要だけど、
歌詞は実はある一点を描写するだけで終わることも多い。
昨日のSMAPのSHAKEを例に作り方を解説しよう。
まずその「一点の感情」を考える。
この歌の場合、
「彼女から電話が来て会おうとなって、
今夜はセックスできるぜやっほう」
だ。
この女たぶん恋人じゃなくて、
セフレだと思う。
日常的に連絡を取り合ってるのではなく、
やりたい時に電話してくる関係だろう。
だから恋とか君に会えるとかのふりをしながら、
頭の中はセックス以外にない。
この感情を歌にする。
SMAPだからストレートにはできない。
オシャレに恋の駆け引きのように見せればOKだ。
だから「君に会えるのはハッピー」という感情にまとめればよい。
そこで、
「この感情をポジティブに言う」を、
ショットガンする。ブレインストーミングだ。
ハッピー 超ハッピー グッド
シアワセ 最高 絶好調 ラッキー
今日の占い一位 走りたくなる早く会いたくて
ステップが軽くなる ウキウキtonight
ムーディーな夜 ダンスな夜 ハードコアな夜
ロマンチックな夜 二人で踊ろう
ギグしようぜ ライドオン
適当だ。こんなもの沢山出る。あと50個100個出るだろう。
そもそも作詞家ならこんな言葉のメモすら持っている。
この歌詞で目を引くのは「ブギーな」という、
変わった形容詞。
まあ「ブギーナイト」「ブギーな夜」
なんて表現はあるから、
そこからの発想。
音楽関係の言葉は歌に使いやすいよね。
ノクターン 夜想曲 シンフォニー 交響曲
アップテンポ リズムに合わせて 二重奏 連弾
ハモろう セッションしようぜ
ちなみにブギーはブルースの手法で、
シャッフルのことらしい。
70年代からある古い言葉だ。
だからそんなのを現代に混ぜてレトロかっこいい狙いなわけだ。
さて、大体道具は出揃った。
じゃあタイトルどうする?ってなるわけ。
この気持ちを一言でストレートに表すか、
ニュアンスだけ残すかだよね。
セックスをもっと婉曲語にできないかなーとかんがえる。
今夜のセッション 今夜の対戦
ハッピーセッション ブギーなおれら
ランデブー 会おうぜ!
でもっとストレートな「腰振り」を英語に読み替えて、
「SHAKE」を思いつく。
米米クラブの「SHAKE HIP」が頭の片隅にあったかもね。
ケツを振れ、と訳してもいいが、
腰振りともっとストレートにしてもよい。
となると「シェイク! シェイク!」がサビになるだろうな、
などと想像するわけだ。
ここまで考えれば、
シェイク シェイク ブギーな胸騒ぎ
超ベリーベリー最高 ヒッピ ハッピ シェイク
のクライマックスのサビは思いつける。
あー今からセックスできるー君にあえるー
急ぐぜ〜
という気持ちを歌詞に起こせばよいのだ。
そしたら大概のことは幸せに見えるものだ。
シューシュー 星が流れてく
明日からハレルヤ 二人ならヤレルヤ
ハレルヤとヤレルヤのダジャレくらい思いつくものだろう。
下品なダジャレ、キリスト教徒は怒らないだろうか。
まあ地に満ちよだからOKか。
妻じゃないけどね。
「星が流れてく」なんて詩的な言葉は、
あきらかに「夜の街の灯り」を詠んでいる。
今から食事にでも行ってホテル街へ行く俺が、
星が流れているのを見ているわけさ。
走っててもいいし、なんならタクシーに乗ってるかもね。
(業界人ならまあありえる)
「シューシュー」は変わった合いの手だけど、
流れ星がshooting starだと知ってれば思いつく。
最近の歌詞は、歌詞先行ではなく、
メロディ先行のことが多い。
だから、このへんの「ハッピーな言葉」かつ、
「音に合う言葉」を並べれば歌になる。
だから、「このメロディのリズムに合う、
○○な言葉たちを並べる」とサビになる。
そのために、リズム調整用の言葉があると、
楽になるよね。
ヘイヘイ ワオ イェイ 胸騒ぎ
なんかはそんなパーツのひとつだろう。
この辺でサビとタイトルと、
「ただ一点だけ描く気持ち」ができたら、
あとはその前後のストーリーをつくればいい。
やなことがあって、君から電話が来て何もかも幸せに見えるぜ、
なんて感じになるだろう。
あとは具体例。
業界人あるあるじゃダメだから、
OLちゃん(SMAPのメインファンだ)にもわかるやつがいいよね。
というわけで、こんなものが出来上がる。
全文引用はJasrac的にだめかもだが、
歌詞の研究という学術(創作論)目的なので免除だ。
コピペできないから手入力…
SHAKE
"きょう会わない?"ってキミの電話
ボクも今そう思っていた
テレパシーみたいでウレしい
明日は休みだ仕事もない
早起きなんかしなくてもいい
キミと昼まで眠れそう
Oh...渋滞のタクシーも
Oh..進まなくたってイライラしないyeah!
シェイク シェイク ブギーな胸騒ぎ
チョーベリベリ最高 ヒッピハッピシェイク *
シューシュー星が流れてく
あしたからハレルヤ ふたりならヤレルヤ **
ポケットティッシュを2個もらった
ネオンボードは輝いてる
街は楽しくうたってる
すれ違ってく恋人たち
ウデを組んだりけんかしたり
みんなどこへ行くんだろう?
Oh...ガムをふんづけても
Oh...きょうはオコらないイライラしないyeah!
*くりかえし
ヘイヘイ嫌な顔しない
キミと会えるから あしたからハレルヤ
Oh...吹き抜けてく風
Oh...気持ちがいいもんだ夜はこれからyeah!
*くりかえし
ヨーヨーキミが待っている
しあわせな気分さ
*くりかえし
**くりかえし
Aメロ2回の部分で設定部や、
見ている周囲の風景を描き、
BメロのOh…の部分で嫌なことを描いて、
そんなの関係ねえ君に会えるからyeah!になる。
(3サビの前はもはやサビに向けての囃子になってて、
ネガティブ設定を忘れている)
「セフれから電話が来てタクシーに乗って君の待ってる店に向かっている。
渋滞もヤレるから気にしない、
早く腰振りたいぜイェー!」
という一点の気持ちを、
うまく広げればこのような歌詞を書ける。
そのまんまを書けば広がらないので、
わざとぼかして、
誰にでも当てはまる「恋人に会いに行く気持ち」に、
重ねられるようにすれば商品になるわけさ。
今夜は正常位か 後背位か
なんて歌詞もあったかもしれないが、没ったろう。
朝までダンス 朝までブギー
なんて歌詞もあったかもしれないが、
他の歌でもあったかもしれない。
このようにして、
「言葉をあつめて、言葉を組み合わせる」と、
JPOPは大体できる。
キャッチーなメロディが先につくられていて、
それに「あてはめる」のが作詞家だ。
歌詞先行はまた別だ。
ストーリーがかっちりあって、
それに起伏をつけるのが作曲家。
この「SHAKE」はさすがにメロディ先行と思われる。
歌詞先行でこれを書いてたら、
よほど何曲も書かされて、
ヤケになってつくった曲だろう。
まあ30曲くらい納品しなきゃいけないなら、
そのうちの1曲はこんなんかもね。
何を吸えばこんなの思いつくんだ、
というツッコミから始まった解説だが、
かなり追い詰められた、
ギリギリのショットガンだと思うよ。
そう突っ込む人は、
一年に一曲くらいしか書かない、
(たとえば夏休みの読書感想文のように)
と思ってるのかもね。
作詞家なんて一日一曲がノルマぐらいなもんでしょ。
すぐネタなんてなくなるよ。
100曲作ったあとに、
まだこれが出せますか?
という世界さ。
こういう時に技術が生きるのよ。
「言葉をショットガンする」ときに、
どれだけワードを知ってるかとか、
それらをどう組み合わせてタイトルと引っ掛けるかとか、
その辺のワードセンスとか、
あとは前後や周辺だなとか、
ネガティブなことと対比しようとか、
その具体はガム踏んだとかにしようとかだ。
あとはちょいエロをどう入れ込むかとか。
SHAKEは腰振りじゃなくてカクテルのことかもね、
なんて表向きの理由があるのかと思いきや、
ヤレルヤなんてストレートなのは、
SMAPのスター性と関係してるかもしれない。
言葉をあやつる技術をまなぶために、
こうした「歌詞を書く」にチャレンジするのはありかもね。
知らないけれどキャッチーなメロディのカラオケをゲットして、
そのメロディに合わせて歌詞を書く練習をしてみてはどうか。
10曲もやればヘトヘトになって、
いい塩梅に力の抜けた歌詞が書けるかもしれない。
あー、頭を緩く構えるとかこういうことか、
と分かるかもしれないぞ。
2024年10月19日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック