色んな問題が絡んでると思うんだけど、
僕は「初心者が想像しにくかったから」
だと思う。
そもそもあんだけボタンのあるキーボードを、
何も知らない人が見たら怖がるに決まってる。
「キーボードアレルギー」という言葉ができたのを、
神田氏ほか富士通チームはどのように考えていたのだろう。
車の制御ボタンより多いでしょ。
今でこそスマホでUI言われるようになったけど、
僕は現行キーボードは、
整理のされてない、散らかった部屋に見えている。
これに加えて、
「一つのキーに二つのカナがある」
なんてなったら気が狂うに決まってるさ。
僕は、
カナのエリアのキーを色分けした方がいいと思った。
「このエリアだけ潰せば親指シフトは打てる」と、
初心者を安心させるべきだったと思う。
つまり、
「ここからここまでが親指シフト、
ここから向こうは普通のキーボード」と、
境目を明らかにして、
親指シフトの全体像を把握させるべきだったと。
初学では、
左手担当のキーと右手担当のキーを分ける必要がある。
それを見越して、
左手をライトグレー、右手を濃いグレーにしたキーボードがあったけど、
あれじゃ余計ビビる。無彩色は怖い。
せめて、左手を赤、右手をピンクぐらいに、
派手にやった方がよかった。
親指キーも文字と同色で赤、ピンクでね。
そうしたら15キーずつ担当で、
親指キーも左右あると、説明なしで理解できる。
カナ印字が2字あれば、
親指との何らかの組み合わせでそれらを打ち分けるくらいは、
説明なしで想像できる。
そこまで意識が誘導できてれば、
「この親指キーと同時に打つのと、
単にそのまま打つので打ち分けるんですよ」
だけで説明は完結する。
「えー難しそう」とリアクションされたら、
「最初はそうだけど、やってるうちに慣れますよ」
「ゲーム感覚なのでわりと慣れます」
「最初はこんなぐらいでよくて(実演)、
慣れたらこれぐらいで行けます(実演)」
というフォローがすぐに出来ただろう。
「まず親指キーというのがありまして…」から始めてると、
コミュニケーションとしては遅い。
関心があったとしても「めんどくさそう」で終わるし、
関心がない人にも「いけるかも?」と思わせないといけない。
そして後者へのアピールに失敗したから、
親指シフトは普及しなかったのだ。
つまりアイコンである。
「親指シフト」と聞いて頭の中に浮かぶビジュアルを、
富士通は用意できなかった。
ネーミングが実にキャッチーで簡潔なわりに、
ビジュアルはごちゃごちゃしたキーボードだった。
そこに齟齬があった。
左手15キー+左親指キー+右手15キー+右手親指キー
というわかりやすいアイコンを覚えさせればよかったものを。
昔はじめて新下駄の配列図を見た時に、
結構アイコンとしていいなと思った記憶がある。
なんか色々カナが載ってるんだけど、
水色とピンクが2キーずつ塗ってあって、
きっとここが大事なキーなんだな
(少しは配列を齧ってたから、
きっと同時押しだろうまでは予測できた)
まではわかるからだ。
中指面、薬指面、そして新下駄のウリの拗音面すら書いてなくて、
そのバッサリ省略してる単打面のみの図が
(おそらくは全カナ載っけるだけの、
図表作成ソフトの限界があって、
やむなく省略したのだろうが)、
新下駄配列のアイコンになってるのは確実だ。
これを知ってたので、
カタナ式や薙刀式の配列図は、
「ビジュアルを見ただけで大体どんなものか想像できる」
ことを目標としている。
新JISや月ほどシフト方式が単純じゃないから、
そこまで簡略化できないことは覚悟しつつも、
なんか記憶に残るイメージになればいいや、
的な感じ。
ロゴをグリーンにしたので、
特殊入力するところはグリーンで表示してるのも、
なんかアイコンになるだろうな、と計算してのこと。
あるいは大西配列に至っては、
キャッチーなおさかなキーボードまでつくり、
そこに乗ってる配列、
のような配列そのものではないアイコン化を狙った。
なるほどデザイナーらしい戦略だ。
富士通にこうした、
ビジュアルで訴えることを考えていた人はいるんかな。
いなかったから、
あんなに地味なデザインの中に、
ごちゃごちゃした文字がよくわからずに配置された、
呪物のようなものしかなかったのだろう。
(前面印刷技術は当時なかったんだっけ。
qwerty表記を前面、親指シフトのカナは天面と、
役割も分けるべきだったね)
今でこそキーボード慣れした人は、
「真ん中に文字、最下段はスペースとかモデファイア、
左右に隣接して制御キー、4段目は数字、5段目はfn、
右横にはカーソルとか、その右はテンキー」と、
おおまかなエリア分けが出来てると思うけど、
当時は一般の人に、そんな概念すらなかったんじゃないか。
その中にあんなに文字だらけのキーボード持ってこられたら、
怖くてしょうがないよなあ。
もっとも、
当時キーボードを打つ人は、
普通の人ではなく特殊なオペレーターだったので、
結局どっちでも良かったのかも知れない。
富士通が負けたのは、
機能ではなく、価格だったのかも知れない。
だけど、
「ちょっと高くても便利なものを使った方がいい」
と判断させるほど、
親指シフトは「どんなものか」を、
理解されてなかったのだ。
そのために、アイコンが必要だったと思う。
Macの親指シフトエミュレータだったか、
アイコンが「親」の字だったことがある。
これって親指シフトを知ってる人しかわからんな、
とデザインの悪さにカチンと来たことがある。
ふつうのひとは、
「親」と書いてあったら、親子とか親ディレクトリとか、
自分の父が母かくらいしか出てこない。
「親指」は1/10000くらいでしか出てこないと思うよ。
というわけで、
富士通は、親指シフトのアイコン化に失敗した。
だから、
我々の中に「親指シフトといえば」と問われて、
頭の中にもわーんと出てくる絵がないのだ。
(追記)ということでつくってみた。
これくらい思い切った簡略化が必要だったのでは?
「薙刀式といえば」で出てくるのは、
例の配列図か、
動画で僕がよく見せている、
左右分割36キーだろう。
このことで、少なくとも、
「薙刀式といえばキーが少ないカナ配列」
くらいのアイコンは出来ていると思う。
で、あの小さなキーボードでも使えるのだから、
大は小を兼ねるで、
普通のキーボードでも使えるやろ、
と連想してくれればいいなあと思う。
アイコンのいいところは、
連想してくれることだ。
その分説明しなくてもいいのよね。
説明が下手な人は、
言葉が不自由なのではないんだよ。
説明をしなくても済むような、
アイコンを出せないことにあるんだ。
そしてアイコンから連想すればすぐわかることを、
一々言葉で説明してるから、
「わからない」と言われるんだな。
(追記)次記事にいろん配列のアイコンをつくってみた。
2024年10月22日
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