2024年10月23日

ただの東映特撮では?(TV「ウイングマン」#1評)

そもそもウイングマンって何が面白かったんだっけ?
ヒーローってなんだっけ?


広野健太の内面を理解するには、
80年代のシラケを理解しなければならない。

70年代の熱血の残滓が、
80年代初期の特撮ヒーローだった。
デンジマン、ギャバンは82年くらいかな。
大体そんくらい。

一方高度成長期が終わり、
世間はバブル、つまり文化爛熟へと向かう。
完成された世界(日本限定)で、
ポップにおしゃれに楽しもうぜという流れ。

だから、
70年代のような熱血は、古いとされた。
シラケとは、冷めてるってことだ。
そんな昔の価値観よりも、
クールに今を楽しもうぜっていう、
当時の最新流行の感覚だ。


ドラマの広野健太の、
「時代がズレてる」という感覚は、
つまり現代と熱血ヒーローもの、
という差異に再解釈されたんだね。

まあそれはわかる。
だがしかし。


ウイングマンって何が面白かったんだっけ?
ヒーローものとして特に面白かった記憶がないんだよね。
ウイングマンからエロを取ったのが、
機動員ヴァンダーだが、
あれ、これっぽっちも面白くなかったもの。
つまり、桂正和は、ヒーローものを書く才能がない、
とずっと僕は思っている。

一方電影少女はよかったよ。
桂正和はエロの人なんだよ。

ウイングマンは、エロコメディとヒーローものの調和が、
シラケの80年代にちょうど良かったんだよ。


このドラマ版ウイングマンは、
だから原作の絶妙バランスを、
完全に東映特撮ヒーローものにシフトした。
エロ0ヒーロー100だ。
だからこれは、新しい仮面ライダーにすぎない。
敵がいて、怪人が出るパターンものだ。
その中でも葵と美紅の間での三角関係くらいはやるかな。

つまり、
単に新しいヒーローものがはじまったにすぎない。


「なぜヒーローがいないんだ、
俺が一人でもヒーローをやってやる」
というものの傑作に、
「キックアス」がある。

「ヒーローをやりたいズレた男と嘲笑する周囲」
というセットアップは同じで、
キックアスにあってこのドラマにはないものが、
「実際の強盗を退治してるのに、
皆は助けずにスマホのカメラを向ける」
という、大いなるズレのシーンだ。
そこで激怒した主人公は拡散されてバズり、
本物のヒーローとして知られるようになる。

人知れず戦う石ノ森以来のヒーローの型にウイングマンはハマるだろうが、
だとするとこのドラマ版のテーマはなんなのだろう?

第一の怪人を一話で倒さんのかよ、
と予算の少なさに少しガッカリ。
ほとんどが学校と部屋の中とその辺の道だったなあ。
まあテレ東にしてはがんばった。
U局の風魔より潤沢な予算が羨ましい…

本来ならば第一の怪人を倒した後で、
このシリーズのテーマが明らかになるはず。
葵を助けて健太は何を目指すのか。
そしてそれはどのようなテーマを語るのか。
正義の実現というには漫画すぎる。
ヒーローになりたいでは子供すぎる。

キックアスはそのへんをうまく着地させたが、
東映ヒーローはオモチャとともに生きるので、
その辺の大人展開を捨ててかかっている。

さて、
深夜の新たな東映ヒーローは、
何を目指すのか。
単なる特撮変身ヒーローでは、3話で息切れするだろう。

今回は何を目指すのか?
その設計が見えなかったのが残念。

まあ第一話のヒキとしては十分だけど、
それで?と意地悪に問いたくなる。


僕、OPよりもEDの曲の方が好きなんですよ。
I wanna take you to the sky highの駆け上がり、
時代が上向きだった80年代の象徴なんよね。
下り始めた日本と、どうシンクロする?
そこに何を刻む?
posted by おおおかとしひこ at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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